宮廷女房消息~散らし書き~[仮称]

宮廷女房消息~散らし書き~[仮称] 收藏

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31.4×21㎝
全22丁  ただし21丁目は白紙で、裏表紙にあたる22丁表には歌らしきもの【画像9参照】が記してある。続きは 22丁表【あとがき】参照。

【題箋】なし

【書名について】

2丁裏 に
「俄に参宮いたしよふよふきのふ歸りまいらせ候」→「急に参宮して、ようやく昨日かえってまいりました」とあったので、「参宮」を調べてみると、

[コトバンク]に
 参宮は宮に参ることであるが,ことに参宮の語は中世以降伊勢の神宮に参る場合に限って用いられている。

とあったので、「急に伊勢神宮にお参りする(行く)必要が出てきた」つまり、公務で出かけたと解釈した。ということは宮廷に関わりのある人、つまり「女房」と判断した。

 他にも、2丁表に
 「はじめての御雛にてさぞ云々~以下略~」と、おそらく仕える主人の(家の)娘の「初節句」を迎える喜びのようすからも、それが窺われる。
 また、この中には、赤人、紀友則、素性法師、遍昭僧正、志貴皇子など、万葉、古今、拾遺からの歌が記されていて、そこそこの身分で教養のある人であろうことは間違いない

【内容】
 ほとんどが、右上から左下に流れる、二行乃至三行書きの体裁である。多くの場合下段の一文字目が太く大きく書かれていて、そこが書き出しになっている。少ないが、上段の最初が太く大きくて、それが書き出しになっている場合もある。

 いま、読みやすいように、普通の順番にしてある。

【注】上・下  書き出しがどこにあるかの目安である。多くが「下・上」となっているのは前に説明した。

   読めなかった文字について、下のように区別した。 
    ○→ひらがな
    □→漢字
*************************************************
01丁表  下→よろつ代も 限りなき 此春の御ことふき
    上→明方も おなし 御こゝちにて 御成敷(?)候 かしく
          
01丁裏  下→いつもの 嘉例のことく けふし節 いたしま いらせ候
    上→御出 候下給り度候 ○○○度候 かしく
        
02丁表 下→はしめての 御雛にて さそ御賑候しく 物はしまし候半(はん)と
    上→推斗り推斗り 御ぬ候度 存参らせ候 かしく
    
02丁裏 下→俄に 参宮 いたしまいらせ よふよふきのふ 歸りまいらせ候
          上→去 土産まてに このしな 返し候 かしく 

03丁表  下→殿子たちの 御節句とて 御賑々しく のほりかふとの
        上→御かさりは また類ひなき 御事に候 かしく

03丁裏  下→近々近々 のうち 何かたく成とも 夕涼に
        上→御とも 申あけ たて候 かしく

04丁表  中→□もしまいらせ候 するすると 御□生 ゆし一入一入
    上→御めてたく 存まいらせ候 御□との ほど
        下→□ふしまいらせ候めで度候 かしく

04丁裏  下→兼々申 あけまいらせ候 七夕へ御手 向の 御和哥
    上→□ し まいらせ たく候 かしく

05丁表 下→餘所より もらひ まいらせ候 まゝこの 一篭 のうち
          上→少し なから 御めにかけ まいらせ候 かしく

05丁裏  下→便に まかせ 此一折 ●のし なから 童の御祝義まてに
    上→御めに □まいらせ候 いつれもまいらせ候  方に よろしく御申傳 られ候 かしく

06丁表 下→吉々 とても めし つかふしたに至るまて
        上→禮義の みちを 御申□ か成候 かしく 

06丁裏  下→粗末 なから この 一しゆ
        中→頼母の御祝詠迄に
        上→返し まいらせ候 めて度候 かしく

07丁表  わかせこにみせむと 
    おもひしむめの花
    それともみえす
    ゆきのふれゝは   
          山部赤人 万葉 八 1426

07丁裏  君ならて誰にか 
    みせんむめの 
    はな 色をも かを
    もしる人そしる    
     紀友則 古今 一 38

08丁表  下→ぬれて
      ほす山ちの
      きくの
      つゆの
      まに
    上→いかてか
      われは
      千代を
      へぬらむ  
       素性法師 古今 五  273

08丁裏  下→わかやとは
      みちも
      なきまて
      あれにけり
    上→つれなき
      かへ(ひ)とを
      まつとせしまに  
       遍昭僧正 古今 十五 恋五  770

09丁表 岩はしるたるみの
    うへのさわらひの
          もゑいつるはるに
          なりにけるかな  
           志貴皇子 万葉 八  1418

09丁裏  もゝしきの大宮人はい
    とまありや
    さくらかさして
    けふもくらしつ   
     山部赤人 万葉 十  1883
          
10丁表 はちす葉のにこりに しまぬ こゝろもて
          なにかは つゆを
          玉とあさむく 
           遍昭僧正 古今 三  165

10丁裏  下→あら玉の としたちかひる あしたより またるゝものは
    上→うくひ すの こゑ 
       素性法師 拾遺 一  5

11丁表  下→留守中 御候はむとて かすかす□給候よし
    上→み心つかひ のほと 忘そんし まいらせ候 かしく                     

11丁裏  下→音 つれ とふ にへと もなく
          中→つれ つれの 折から こたく との
          下→御出 つさ○○下  くり返し くり返し なかめ入て候 かしく

12丁表  下→月景の うつし こゝろ とや 申候へは
          上→こゝろ かろかろ しきは いかゝに候 かしく

12丁裏 下→口外 ねかひ 上候 かすかす 御取 なしゆへ 早速
    上→相叶 まいらせ 明ほと候 有かたく そんし上まいらせ候 かしく

13丁表  下→綸子(りんず) 染もやう しなく 前たつ□ をしまいらせ候
    上→御こゝろに かなひ 候へかしと そんし候 かしく

13丁裏  下→縫 下繪の ことく □別□別 萬を いれ
    上→御申 さま 御下り度 たのみ まいらせ候 かしく

14丁表  下→何事給ふ いらせ□ れ候や 御傳申度 あらあら
        上→文し候て 申まいらせ候 かしく

14丁裏 上→めつらかなる 美しき □更 はな 一瓶
        下→送給り にほく 殊さら にて えな○○て なかめ入候 かくし

15丁表  下→ほと□に なり まいらせ候は 何となふ おもひなからも
        上→御うとうと○らふ 過ぎしまいらせそ候 かしく

15丁裏  下→□たてたる ところ なから したふ こゝろの
    上→ゆき かふ みちは  近そ おほへ候 かしく

16丁表 上→昔 より 例かはらぬ   八重 九重の 菊の
    下→御ことふき 候ぬと□ かしく

16丁裏  下→うつしくき 御小袖 拜領 いたし                   
    上→色 かたく いたゝき まいらせ候 ぬと申度 かしく

17丁表 下→昨日 こそ としは くれしか 春かすみ
    上→かすかの山に はやたちにけり
     詠み人知らず 万葉集 十 1843

17丁裏 下→さくら かり あめは ふりきぬ おなしくは
    上→ぬる とも  はな の かけに かくれむ
     詠み人知らず 拾遺集 50

【参考】この歌は、「詠み人知らず」になっていますが、平安後期に書かれた『撰集抄』の中では、藤原実方の歌」ということになっています。

18丁表  三段目→むめのはな色こそみえね
        二段目→春のよのやえはあやなし
        四段目→かやは
        一段目→かくるゝ 
            凡河内躬恒 古今集 四 春上 41

18丁裏   下→千とせ まて かきれる まつも けふよりは
     上→きみに かつかれて  よろつ代やまむ
            大中臣能宣 拾遺和歌集 一  24

19丁表  上→あすからはわかなつまんと方岡の
        下→あしたのはらにけふはやくめる
         柿本人麻呂 拾遺一 18

19丁裏→みちとせになる 
    てふもゝのことしより
    はなさくはるに
    あひにけるかな
     凡河内躬恒 拾遺五 賀 288

20丁表 さくらはな春くはゝれる
    としたにも
        ひとのこゝろに
        あかれやは
         伊勢 古今 一 春歌上 61

20丁裏  あさみとり春たつ
        そらにうくひすの
        はつこゑまたぬ
        人はあらしな
          (紀貫之?) 続後撰 春上 15

【参考】
後撰集には「麗景殿の女御の屏風に 紀貫之」と出る。
 麗景殿女御は代明親王の女荘子女王で、天暦四年村上天皇の女御となり、寛弘五年に没す。ただし、貫之は天暦四年より前に亡くなっているので、作者を貫之とするのは誤りか。

21丁表  ~白紙~

21丁裏  ~白紙~

22丁表 【あとがき】
 世を白き けしやうもなしけり 六ツ花 五・七・五
  にくまるゝ きぬきぬもなし            五・七
 は拜(?)からす                            五

【因みに】この歌の 文字数は
 上の句五・七・五だが、
 下の句が五・七と変則的。
最後の五文字を下の句に無理矢理入れると
「にくまるゝきぬ・きぬもなしはばからす」なんてことになってしまう。
「にくまるゝ○○」の二文字が抜けてしまったと考える方が自然。
 「六ツ花」→六角形をした花。つまり、雪(六角形の結晶の花)を指している。そういえば、肉眼でも「六角形」をしているのは見ることができる。

 21丁目(白紙)の次に記してあるので「跋」のような気がする。
 これを書き上げたのがちょうど雪が降っている時で、辺り一面真っ白な化粧を施す、花のような雪。それは、他者から憎まれる(妬まれる)ような、絢爛豪華な着物をまとっているわけでもない。

 最後の「は拜からす」は解読できないが、「はばからず」と読めば「お構いなく」程度の、文章末によく使われる言葉「頓首」「かしく」の類いなのだろう。

22丁裏 裏表紙の表になっている。

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【告白・独り言・妄想などなど】
 この本を手にしたとき、てっきり「遊女の手紙の手本」かと思った。以前その現物を手に入れ、「男の客」にたいする勧誘の手紙であることが歴然としていたからだ。
 しかし、これを読み解いていくうちに、(「女ふでの消息文」特有の略字には閉口したが)、万葉・古今・拾遺等の歌集からの歌が出てき、おまけに「雛の節句」「殿子(とのご)の節句」や「綸子」という高級な絹糸で織られた着物が登場するに及んで、只人でないことがわかった。03丁裏に「何かたく成とも夕涼に御とも申あけたて候」と、「何が何でも主の夕涼みのお供に参ります」と断言してもいる。だから、彼女の素性は「御所の女房」か「貴族付きの女房」ぐらいだろうと推測した。ただ彼女御相当教養のある人物であることは間違いない。
 そこで疑問に思ったことがある。彼女が抜き出している「和歌」はどこから探し出したかと言うこと。記憶があやふやだが、一条天皇が自分の妻?に、「古今集の巻物からランダムに上の句」を言うと即座に下の句を答えたとか言うことが記憶にあるが、彼女は古今集だけでなく、すべての歌を記憶していたことになる。それほどの教養で無くとも、しかるべき歌集は手元にあったはず。まさか三代集や八代集が手元にあったはずは無く、何冊かの「家集」、『三十六人集』ぐらいはあったに違いない。

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【刊期等】不明

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※経年による紙の劣化、変色、斑点状の染み、多数あり。
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