
自宅保管の品です。大変美品ですが、古いもので表紙など経年変化はございます。ご理解頂ける方にご検討をお願い申し上げます。
浅羽 通明
右翼と左翼
「もはや右翼も左翼もない時代」といわれる。が、依然「右‐左」のレッテルはさまざまなものに貼られている。しかし「では右って何?左って?」と訊かれると答えに窮する。「右‐左」の対立軸は何か?なぜ「上‐下」「前‐後」ではないのか?定義はもとより世界史的誕生の瞬間から派生まで、影響された日本の「右‐左」の特殊性から戦後の歪み、現代の問題点までを解き明かし、ここ百数十年の世界史とそれに巻き込まれた日本の歴史がわかる画期的な一冊。
第1章 「右」と「左」とは何か―辞書を引いてみる
第2章 フランス革命に始まる―「右」と「左」の発生
第3章 「自由」か?「平等」か?―一九世紀西洋史の「右」と「左」
第4章 「ナショナル」か?「インターナショナル」か?―一九~二〇世紀世界史の「右」と「左」
第5章 戦前日本の「右」と「左」―「国権と民権」・「顕教と密教」
第6章 戦後日本の「右」と「左」―憲法第九条と安保体制
第7章 現代日本の「右」と「左」―理念の大空位時代
エピローグ 「右‐左」終焉の後に来るもの
レビューより
「右」と「左」の定義、歴史、現在をわかりやすく示してくれる本。
「自由」「平等」に重点を置いて「進歩」してきた世界。その「先」はまだ、残されているのか---とにかく必見の書。
はたして、右翼となんぞや、左翼とはなんぞや、と頭を巡ると、明解な回答を持ち得ていない事に気づく。右翼の源流には玄洋社の頭山満、左翼の源流には中江兆民がいるが、水と油の関係と思える両者は実のところ大の仲良しで、共に青山霊園に眠っている。酒を好まない頭山満だが、飲んだくれの中江兆民の酔言には拒むことなく付き合う仲だった。どころか、臨終の床を見舞った頭山満に対して中江兆民は「伊藤、山縣ダメ。後は頼む」と枕元の黒板に記して遺言にしている。
無政府主義者の大杉栄にカネを渡したのは当時内相であった後藤新平だが、その後藤新平に大杉栄を繋いだのは杉山茂丸、頭山満だった。大杉栄の内縁の妻であった伊藤野枝と頭山満は遠い親戚関係であったといわれている。
後藤新平と親しい杉山茂丸の息子は作家の夢野久作だが、その夢野久作の秘書を長年務めたのは共産党員で逮捕歴もある紫村一重だった。「極めれば、右も左も紙一重」、対極にあるもの同士が意外に近しい関係にあることは昔からいわれてきたことである。