1995年名古屋CBC画廊を始め、各地の画廊で個展、賞賛を浴びる、1997年国際美術交流展（日本、韓国、中国）グランプリ受賞、1997年国際文化交流　功労特別大賞受賞　アーチスト大賞受賞、1998年ニューヨーク展グランプリ受賞、1998年アートジャーナルフランス大賞受賞、1998年「モナコ政府主催」の民間文化大使として出席、皇太子に絵を贈呈、1999年国際芸術文化勲章受賞

人見友紀 油彩 20号 大作
この作品《宿場の朝霧》は、波瀾万丈の人生を歩んだ画家・人見友紀（1940-1999）が手がけた、情緒豊かな日本の宿場町風景です。画面いっぱいに広がる石畳の通りと、左右に立ち並ぶ木造建築の連なりが、静謐な朝の空気の中に凛とした時の流れを感じさせる。20号という大作サイズは、風景の奥行きと空気感を余すことなく描き出し、鑑賞者を絵の中へと引き込んでゆきます。通りの奥には、寄り添いながら歩く二人の小さな人影。背景には、うっすらと霧に包まれた山と針葉樹林がそびえ、場面全体に幻想的な静けさを添えている。建物の軒先に掲げられた看板や、丁寧に描き込まれた草花、暖簾の揺らぎまでもが、まるで旅の途中でふと立ち止まった一瞬を切り取ったかのような臨場感を醸し出しています。

人見友紀は、古美術窃盗への関与によって1970年代に国際手配され、13年間にわたり海外逃亡を続けた異色の経歴を持つ画家です。スペインやギリシャで絵画の世界に目覚め、逃亡中に磨かれた独自の感性が、帰国後の作品にも色濃く反映されています。本作からも、西洋絵画的な光と空間の捉え方と、日本的な情緒の融合が読み取れ、懐かしさと静かなドラマを同時に感じさせる独自の世界観が広がっています。人生の逃避行を経て、ようやくたどり着いた「帰るべき風景」。それは、単なる故郷の記憶ではなく、人見自身の魂が求め続けた「安息の場所」であったのかもしれません。絵の中の道を歩む二人の姿は、過去と現在、赦しと再生の象徴として、観る者の心にそっと語りかけてくきます。