【作品概要|Overview】
アーティスト名:中山ラビ
タイトル:私ってこんな
レーベル/型番:Polydor MR5022
フォーマット:LP / 帯・インサート付属
リリース年:1972年
ジャンル/スタイル:Folk, Acid Folk, Singer-Songwriter
1972年にPolydorからリリースされた本作『私ってこんな』は、中山ラビの初期アルバムの中でも特に詩的・内省的な感触の強い作品として知られています。中山ラビが詩人・訳詞家「中山容」としても活動していたことを踏まえると、本作は音楽と詩、発話と印刷、身体と声が重層的に交錯する“語りの装置”としての意味を持ちます。岡林信康、細野晴臣、洪栄龍、渡辺香津美らによるセッションが、70年代日本のフォーク/アシッド・シーンにおける稀有な交点を形成しています。
【構造|Auditory Architecture & Temporal Drift】
このアルバムの構造には、1970年代初頭の日本音楽が孕んでいた“変革と内省の揺らぎ”がそのまま刻印されています。中山ラビの歌唱は、身体的であると同時に意識の奥底へと降りていく行為そのものであり、ギターのカッティング、リズムの呼吸、音場の空白にまで、歌が浸潤するように絡みつきます。
「まっとうするわ」や「エントツの向こう」などの楽曲では、洪栄龍のエレクトリック・ピアノが情緒を強調しつつも過剰にはならず、ジャジーなコード進行がラビの語りのようなメロディと相互補完的に機能します。
岡林信康のハーモニカは「昔の男に会う」にてスモーキーな質感を与え、細野晴臣によるベース(担当トラックは一部に限られる可能性があります)は低域のうねりとして、曲全体の「潜行する身体性」に貢献しています。
スライド・ギターは渡辺香津美によって演奏されており、その音の傾斜は語り口に微かな傾倒と歪みを加えています。12弦ギターやマンドリンの響きは、時間が剥がれ落ちていくような感覚を伴い、聴取者に「音が記憶を生成する」現場を追体験させる構造的仕掛けとなっています。
【文脈|Contextual Field Notes & Memory Fossilization】
1972年12月、このアルバムはPolydorからリリースされました。日本の音楽シーンが大衆化と実験性の狭間で揺れ動いていたこの時期において、中山ラビという存在は、都市とフォークの二項対立を一度引き裂き、そこに“女としての声”を滑り込ませることで、新たな回路を開いた存在といえます。
この『私ってこんな』というタイトルの自己言及的言葉が示すように、本作は自己内省というよりも、“他者の視線によって構成された自己”を暴くような異物的作品でもあります。その意味では、岡林信康、細野晴臣、渡辺香津美、洪栄龍といった男性演奏者たちによるバックアップは、単なるサポートではなく、“音としての他者性”としてアルバム全体に介入しているのです。
また、この作品が刻印された1972年とは、加藤和彦、吉田拓郎、五つの赤い風船、そして浅川マキといった、日本フォークの周縁が多様に開いていった年でもあります。中山ラビの作品群は、これらの潮流と接点を持ちながらも、より内在化された声の運動として、孤立した強度を保っています。本作における「女性の声」とは、単なる自己表現の手段ではなく、“社会制度が定義しえない声のかたち”そのものとして記録されたのです。
【状態|Material Condition】
メディア:NM(再生良好、目立ったノイズなし)
スリーブ:EX-(軽度の経年感および染みあり)
帯:付属
インサート:付属
【取引詳細|Terms & Logistics】
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