実はこのペンは12年ほど前に1度出品しました。確か開始価格を26万にしたように記憶しています。
その価格の理由は、一つにはあまり売りたくなかった事。そして当時メールのやり取りをしていたドイツのペン・ディーラーから「2000ユーロぐらいじゃないか」と言われた事に起因しています。

さて、まずペン自体の解説を致しましょう。
1960年代に作られた149で、レジン・ボディ149のファースト・エディションです。細くて表面にアールが付いた尾軸リングや、縦に溝が入ったニブ芯、70年代の149と較べてみれば確かに小さい天冠のモンブラン・スターなど、今やなかなか目にしなくなった1950年代のセルロイド149の面影が僅かながら残っています。
60年以上も前のペンですが、とても綺麗なコンディションです。

ここからが、タイトルに「The Rarest」と銘打った説明です。
そう、キャップ・リングが上下逆さまに付けられているのです。原因はヒューマン・エラーだと思いますが、20年以上前に私の手元に来るまで誰も気が付かなかったようで、かく言う私も数年間気が付きませんでした。
エラーでプレミアが付く、と聞いて頭に浮かぶのはコインですが、少なくとも写真で見たり本で読んだりしてその存在はみんな知っています。でもペンのキャップ・リングが逆さまに付いてしまっているペンなど、見たことも聞いたことも有りません。しかも言ってみれば、万年筆の王様149のキャップ・リングが、です。勿論、コインの発行枚数に対するエラーの発生率を考えれば、このペンの存在はエラー・コインの比では無いかもしれません。
でもペン愛好家にとってみれば、穴がちょっとズレた50円玉よりずっと有り難みのあるお宝と言えるのでは無いでしょうか。

ニブ：18KのEF
インク：ピストン・フィラー
全長：145.8mm
胴軸： 14.5mm

本体のみの出品
コンディションは8.5/10程度で、目視や触って判るような傷などは有りません。
おそらく日常的な使用はされなかったようで、それが逆さまのリングに誰も気がつかなかった理由でもあると思います。

比較のために写っている70年代の149はオークションに含まれません。

余談ですが、今年はマイスターシュトゥック100周年の年なんだそうです。銀座のITOYAに2メートルを超えそうな垂れ幕に、涎の出そうな1950年代の149の写真がドーンと載っているのですが......なんと尾軸のリングが平べったい現行型！

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