田崎廣助（1898年9月1日福岡県生まれ、1984年1月28日没）は、坂本繁二郎に師事し、阿蘇山を生涯の主題として描き続けた洋画家で、日本芸術院会員・文化勲章受章者。福岡師範学校卒業後上京し、本郷駒本小学校で図画教師をしながら画業を志し、二科展・一水会・日展などに出品を重ねた。昭和8年サロン・ドートンヌ入選、昭和36年日本芸術院賞受賞、昭和42年日本芸術院会員、昭和50年文化勲章受章。日展常任理事や日伯美術連盟会長を歴任し、ブラジル政府からグラン・クルーズ章等も受章。「阿蘇の田崎」と呼ばれるほど阿蘇山を四季折々に描き、日本的情感を込めた重厚で確かな存在感のある油彩画が高く評価された。

田崎広助「阿蘇山」油彩 約6号 共シール
本作は、「阿蘇の田崎」と呼ばれた洋画家・田崎廣助が、生涯の主題とした阿蘇の大地を重厚な筆致で描いた油彩作品です。黄土色を主体とした山肌には絵具が厚く盛られ、乾いた草原や岩肌の荒々しい質感が力強く浮かび上がります。雄大な稜線が画面いっぱいに広がり、その足元には小さな家並みが寄り添うように描かれ、自然の偉大さと人々の営みが対比的に表現されています。また、独特の緑青色の空は、澄んだ空気と広がりのある阿蘇の風景を象徴的に映し出し、画面に爽やかな開放感を与えています。写実を超え、自然への畏敬と愛情を込めて風景そのものが持つ存在感を描き出す田崎廣助の特徴がよく現れた一枚であり、重厚なマチエールと明快な構図によって、阿蘇という大地の生命力が端的に伝わってくる作品です。