今中洋二（いまなか ようじ）は1949年京都市に生まれ、1968年から1973年まで関西美術院で学んだ後、1975年から1978年にかけてスペイン・セビリアのEscuela del Artesで研鑽を積んだ。1986年より京都市美術選抜展に推薦出品され（以後89・91・93年）、1990年代を通じて大阪梅田阪急（91・93年）、東京銀座小財堂画廊（94年）、大阪三越（95・97年）、京都近鉄、大阪ぶうんしぇ画廊（95年）、新宿伊勢丹・京都高島屋・京都ギャラリー中井（96年）、八王子そごう（98年）などで個展を開催。また、97年にはスペイン・サンティアゴ市およびリベイラ市主催による3人展、98年には新宿小田急・千葉そごうでの3人展にも出品している。

今中洋二「ゆったりと時が」油彩 約40号 大作
今中洋二（1949年京都市生まれ）が手がけた大作《ゆったりと時が》（48×99cm 約40号）は、静かな時間の流れをテーマにした風景画です。横長の画面いっぱいに広がるのは、赤茶色の屋根を連ねた家並みと、中央にそびえる鐘楼を中心に構成されたヨーロッパの村の風景。周囲を豊かな緑が囲み、柔らかな陽光に照らされて、まるで絵の中に「ゆったりとした時」が流れているかのように感じられます。手前から奥へと続く石畳の道は鑑賞者を自然に村の中へ誘い込み、花や木々の瑞々しい色彩が画面に奥行きと生命感を与えています。緻密に描かれた屋根瓦や壁の質感、木立の一葉一葉までの丁寧な描写は、今中が長年培ってきた確かな技量を物語っています。一方で全体には柔らかな空気感が漂い、光と影の調和が心地よい安らぎを醸し出しています。

今中は京都で学んだ後、スペイン・セビリアで研鑽を積み、異国の風景を題材とした作品で高い評価を得てきました。本作もその系譜にあり、単なる写実を超えて、村に流れる時間の温もりや人々の営みの気配までを描き留めています。《ゆったりと時が》は、日常の喧騒を離れ、心静かに風景と向き合う喜びを鑑賞者に与える一枚であり、今中洋二が大切にしてきた「光と自然の調和」を象徴する作品といえるでしょう。