
Hallicrafters Continental 1955
赤いレザー貼りのコンパクトな電池管ラジオ。
通信機メーカーとして有名な ハリクラフターズ社によるものです。
とてもお洒落です。 小さな棚にも収まって、そこを特別な場所にしてくれそうです。
色んな場所に飾って眺めて、手に取ってたまに鳴らしてみる、
そんな風に付き合える小さなラジオです。
バッテリーで動作する電池管ラジオには、A電池(3~7.5V)、B電池(63~90V)が必要ですが、
現在このような用途のバッテリーは市販されていません。
しかし、ご安心ください。ポータビリティは損なわれますが、AC電源でも使用出来るようになっています。
AC専用の対策として、整流回路のフィルターコンデンサ交換、
フィラメント用のドロッパー抵抗周りのチェックも入念に行いました。
いつも通りペーパーチュブラーコンデンサは全数交換です。
オリジナルのセレン整流器は元気に直流100Vを生み出しております。
出力トランス断線のため、シャシー上に代替品を設置しました。
それ故、ただでさえ狭い電池スペースが無くなってしまいました。
という訳で、AC電源のみでご容赦ください。よくマッチするピンクのコードを付けました。
短波は受信しません。まあ、長いワイヤーアンテナを付けて聴くほどの機種ではないので、
この点も悪しからず、中波のみでお願いします。
さて、タイトルにあるHerbert Kamedaですが、
写真をご覧になった皆様は、スタンプされた米国のソーシャルセキュリティナンバーと、
氏名HERBERT KAMEDAに気付かれたことと思います。
実は1931年11月23日に生まれの氏が、2020年2月26日にカリフォルニア州 サニーベールで没した事が
インターネット上に訃報が上がっているのです。
1931年生まれなら、カリフォルニアに多く移民した日系人2世にあたる氏が、
人種差別のあげく、時の大戦により強制収容されて辛酸を舐めたであろうことを想像するのは容易です。
1955年、24歳でHallicraftersを買える程の良い地位にあって、
89歳、米国人憧れの地、シリコンバレーの高級住宅地であるサニーベールで没した一人の日系米人の
苦難と成功の歴史がこの機には刻み込まれているのです。
終戦記念日を控え、氏へのcommemorationとして、この機が多くのラジオ愛好家の目に留まることを
望んでおります。