
新書です。 きれいなほうです。
メディアに溢れる発達障害に関する情報は"玉石混交"であり、
誤った情報が真実のように語られている場合も少なくない。
薬物療法を一方的に攻撃したり、特定のサプリを"特効薬"と推奨したりする記事。
「空気の読めない変わった人」に対しては、一般の人も、精神科医でさえも、
アスペルガー症候群と決めつける傾向――。
本書はこのような「誤解」の多い発達障害について、
その事実(ファクト)を明らかにすることを目的として専門医である岩波明氏が執筆した。
原因、症状、診断基準、治療法など発達障害の多岐にわたる疑問に
岩波氏が答える形式をとっているため、気になる項目から読むこともできる。
▼「はじめに」より一部抜粋
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最近になり発達障害がクローズアップされるようになったのはどうしてでしょうか。
「発達障害は増えているのですか」と、よく聞かれることがあります。この点について
明確なデータはありませんが、増えているのではなく、これまで周囲から認識されて
いなかった「発達障害」が次第に認識されるようになってきたというのが正しいように
思います。
このような変化は、日本の学校や企業社会の変質と密接に関連していると考えられます。
元来、日本社会は人と人との関係が稠密(ちゅうみつ)で、他人の「目」を気にする
程度が大きいことが指摘されていました。
この日本の社会環境は、一般の人からは幾分ずれた特性をもっている発達障害の人には、
そもそも必ずしも心地よいものとはいえませんでした。しかし、一方で日本社会は
建前と本音を使い分ける傾向が強く、定型的なことがうまくできない発達障害の人たちも、
集団の中では問題にされずスルーされることが多かったように思います。
ところが近年、社会のグローバル化に伴いコンプライアンスを重視し、何事にも透明性が
求められる堅苦しい「管理社会」が出現しつつあります。
こうした社会状況においては、物事に柔軟に対処できないASD(自閉症スペクトラム障害)
の人や、些細なミスを頻繁に起こしやすいADHD(注意欠如多動性障害)の人は、
どうしても不適応を起こしやすくなり、会社や学校で目立ってしまったり、困った存在
として認識されやすくなったりしているのです。