ジャッキー・マクリーンやジョン・ヒックス等、最近亡くなったジャズ・ミュージシャン達(17人クレジットされている)に捧げたブランフォード・マルサリスの新作である。ブランフォードは一番好きなテナー奏者なのだが、リーダー作は意外と決定打がなくて、いいとこコルトレーンに
捧げた「Footsteps Of Our Fathers (02年)」ぐらいかなぁ。あとは初期の作品「Royal Garden Blues(86年)」や「Trio Jeepy(89
自己のMarsalis Musicを立ち上げてからはごく真面目にジャズの真髄を追求するようになったような感がある。
本作はジョーイ・カルデラッツォ、エリック・レヴィス、ジェフ・ワッツという、ここ数年の不動のカルテットによるスタジオ録音盤。
もうメンバーが超強力なので演奏の方は凄いに決まっている。と言いたいところだが、すでに本作をお聴きになった方の
評価はどうも芳しくないものが多いのですな。なので私もあまり期待しないで聴くことにしよう(苦笑)
全8曲(日本盤、ボーナス・トラック1曲を含む)がメンバーのオリジナルで、トータル82分とかなり演奏時間が長い。
まずはコルトレーン・ライクな曲でガツンと一発ぶちかまし。3小節でひと区切りと一風変わった曲だけど、早くもジェフ・ワッツ
が野獣のごとく暴れまくっていて、それに煽られてブランフォードもカルデラッツォもぶち切れている。いつもの「お約束」
的なパターンではあるもうこの1曲だけで聴いてて狂乱状態っす。ところが続くバラードとスローボッサ風な曲がいただけない。、
とにかく演奏が長すぎなんだよなぁ。退屈だったらありゃしない。でも思い出したけど、やっぱり本作は亡くなった人たちに
たけど、やっぱり本作は亡くなった人たちに捧げられたレクイエムなんだよね。まあこれは我慢して聴くしかないでしょうな。
4曲目は流石にワッツの曲だけあって、13/8拍子の16ビート基調というかなり難易度の高い楽曲。アドリブ部分から
倍テンの4ビートにチェンジするのだが、ここからのブランフォードはまるで何かに取り付かれたかのように8分音符
(16分音符か)の速いパッセージの連発で、隙間なく吹き続けている。逆にカルデラッツォは珍しくもブロックコードを
多用しながら空間を意識したような弾き方をしているね。この対比がなかなか面白い。
5曲目はかなり問題あり。これは完全にクラシック曲ですわ。と、よく見たらこの曲だけはオリジナルではなく、
Henry Purcellという本物のクラシックの作曲家の曲じゃないの。まるでミサのような曲調と、クラシック調のワザ
とらしいビブラートがとにかくいやらしくて嫌い。こんなビブラートをかけているブランフォードなんて、今まで聴い
たことがないぞ。6曲目のフリーなバラードはまあまあ。
7曲目はフリーな部分と4ビートが交錯し、アドリブ部分が超アップテンポな曲。これはもう手が付けられない
ほどカッコいいっす。ブランフォードはまるで後期コルトレーンのように怒涛のごとく吼えているね。
ボーナス・トラックの8曲目はトリッキーなテーマと気合のこもった演奏で、オマケというにはもったいないほど
。これはかなりの儲けものだな。
1.Jack Baker
2.Hope
3.Fate
4.Blakzilla
5.O Solitude
6.Sir Roderick.The Aloof
7.Black Elk Speaks