川島未雷（1958年上海生まれ）は、14歳より肖峰教授に師事しデッサンの基礎を築き、1982年に上海大学美術学部を卒業後、1986年に来日し1995年に日本国籍を取得。全国職工美術展三等賞、全国体育美術展銅賞、第30回亜細亜現代美術展安田火災美術財団奨励賞などを受賞し、二科展にも入選。長谷川町子美術館や足利市に作品が収蔵されている。奥入瀬渓谷の渓流美に魅了され、“日本の四季-水-”をテーマに全国で90回以上の個展を開催し、日本の自然の美を再発見する旅を続けながら精力的に制作・発表を行う。繊細な筆致と豊かな色彩表現で、日本の水辺の風景を詩情豊かに描くのが特徴。

川島未雷「薫緑の流れ 奥入瀬」油彩 25号 大作
川島未雷による本作《薫緑の流れ 奥入瀬》は、奥入瀬渓谷の清冽な水と、初夏に薫り立つ新緑の生命感を主題とした油彩作品です。画面手前では岩を打ち砕くように流れる水が白い飛沫となって描かれ、その勢いと冷ややかな感触が生々しく伝わってきます。一方、流れの奥へと視線を進めるにつれ、水音が次第に遠のくかのような静けさが広がり、森全体を包む瑞々しい緑が深い奥行きを生み出しています。作者は奥入瀬渓谷の渓流美に魅了され、「日本の四季―水―」を生涯のテーマとして制作を続けてきました。本作においても、長年の取材と写生を通じて培われた観察眼と、繊細な筆致、豊かな色彩表現が存分に発揮されています。水の動きや光の反射、湿り気を帯びた空気感までもが丁寧に描き込まれ、単なる風景描写を超えて、日本の自然がもつ浄化の力や、季節の移ろいの一瞬の尊さを静かに語りかけてきます。

25号という見応えのある画面サイズは、観る者を渓流のほとりへと誘い、自然の中に身を置いているかのような没入感をもたらします。詩情と写実性を兼ね備え、日本の水辺風景の美しさをあらためて実感させてくれる、川島未雷の代表的な世界観が凝縮された一作です。