1995年に発表したデビューアルバム『心のかけら(原題『Pieces of You』)』で音楽界に火をつけたジュエル。そろそろ当時の無邪気な少女のイメージを塗り替えるときがきたようだ。ジュエルの初期の歌は、デビューの数年前に書かれたものや、中には彼女がサンディエゴのビーチに止めたバンの中で暮らしていた自由な放浪時代のものまである。25歳の現在、音楽賞の番組でスケスケのドレスを着たりたり、酷評された(がベストセラーになった)詩集を通してあけっぴろげになりすぎた彼女は、いまや自己表現と自己露出の教祖的存在になってしまった。『Spirit』は、詩集ではまったくさえないジュエルの善意的で時には流れるような歌詞が、何故彼女のファンに共感を与えるのかを明示している。「Deep Water」「Hands」「Down So Long」のような歌では、きらめくメロディーと空を翔るような彼女の歌声が、歌詞を持ち上げている。これには超ひねくれた批評家でさえ、女学生がノートに書き付けたような「あなたの心は地面にはりついたグレープ味のガム」という歌詞や「もしも世界にたったひとつだけ言いたいことがあるとしたら、わたしたちはみんな大丈夫よって言いたいの」なんていう心もとない決まり文句を受け入れてしまうのだろう。『心のかけら』で「あなたの魂は誰が救ってくれるの?」と疑問を投げかけたジュエル。どうやらこの『Spirit』では、その役を自ら買って出たがっているようだ。深く考え込まなければ、このアルバムは傷ついた心の慰め、私たちの内なる幼な子を育てる手引書になるのかもしれない。「大丈夫よ」っていう彼女の言葉は本当かも。それは誰にもわからない。