人生劇場(上)尾崎士郎☆平凡社世界名作全集69☆青春篇が全収録と愛欲編が前半収録☆ゆうパケットプラス送料無料
(1)青春篇
三州横須賀村で権勢を誇った青成瓢太郎が落ち目になった頃、中学を終えた息子の瓢吉は政治家になる夢を抱いて上京、早稲田大学に入学した。初めての酒と女、学園紛争の中で得る友情と堕落――。不朽の人生ドラマ!
人生劇場は、作者である尾崎士郎を色濃く投影した青年、青成瓢吉(あおなり・ひょうきち)の成長を描いたビルドゥングス・ロマンであり、彼を取り巻く個性豊かな人たちの群像劇でもある。昭和8年に都新聞に連載が始まるとたちまち評判を呼び、以降、愛憎篇、残侠篇、風雲篇、離愁篇、夢幻篇、望郷篇と書き続けられた。
開幕篇とも言うべき青春篇では、三州横須賀(愛知県東部)を舞台とした瓢吉の生い立ちから筆を起こし、瑞々しい思春期を経て無鉄砲な学生生活を送るなかお袖と運命的な出逢いを果たし、父の死や故郷との訣別といった試練を乗り越えて、友人の社会主義運動に巻き込まれそうになるまでを描く。
【目次】
・序章
・中学生くずれ
・花道
・銅像問題
・才子佳人を得たり
・嵐
・星霜
・一栄一落
・郷村を去る日
・ハルピンへ!
・青春の伝説
・明滅章
しみじみと感じられるのは、このころの日本人がいかに自分の欲望にストレートだったか、ということだ。ここには、周囲に配慮するといった現在の感覚は通用しない。登場する人物の誰もが、カネが欲しい、良い思いがしたいといった欲望を節操なく抱き、無鉄砲で自堕落で、そして身勝手である。
理性が勝った現代人に通じる登場人物は、不忍キネマである程度の地位まで上った「呑み込みの半助」くらいだが、卑小でつまらない人物として扱われている。
大人しくこじんまりとした現在の日本人は、文明が浸透して洗練されてきた姿なのか、それとも老いさらばえ果てた姿なのか、それはこの本の暑苦しい男どもを読んだ後の読者に判断をゆだねたい。
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(2)愛欲編
人生劇場の第2幕、愛欲篇では、主人公青成瓢吉と、お袖、小岸照代、おりん、3人の女たちの愛憎劇と、瓢吉を取り巻く人々の有為転変を描く。
青春篇の終幕、高見剛平や夏村大蔵が似非の社会主義活動に傾倒していったころから5年ほどが経過し、彼等の政治結社活動は既に行き詰まりを見せていた。
瓢吉と吹岡早雄は彼等と袂を分かち、文学の道を志して房州の山寺で創作活動に没頭する。瓢吉は懸賞小説に当選し文壇に片足を踏み入れるなか、九州から上京した女流作家の卵、小岸照代と出会い、ほどなく二人は郊外の一軒家で同棲生活を始める。
一流誌に掲載された長編が好評を博し、小岸照代の文名は高まっていく一方、瓢吉は作品がほとんど省みられることはなく、次第に焦りを
募らせていく。そして運命の日、大正12年9月1日の朝を迎えた――。
【目次】
・山カン横町
・昨日は少年今は白頭
・海村の一幕
・廃寺の夢
・夏村大蔵
・才子再び佳人を得たり
・三春の行楽
・陰陽河
―――――以下は本品では収録されていません。以下は人生劇場(下)ということになります。
・はみ出した人々
・一日の運命
・黒馬先生
・月影淡き吉良港
・あらしの前
昭和36年11月初版。表紙にスレがあります。経年劣化の日焼けがあります。本文は書込みがありません。