B6659 暁の露 美しいロウカン系翡翠3.05ct 天然上質D0.22ct S0.30ct 18KWG無垢セレブリティNC 45cm 9.1Gトップ幅28.1x1 8.6mm

B6659 暁の露 美しいロウカン系翡翠3.05ct 天然上質D0.22ct S0.30ct 18KWG無垢セレブリティNC 45cm 9.1Gトップ幅28.1x1 8.6mm 收藏

当前价格: 31 日元(合 1.55 人民币/含税价 1.71 人民币)

一口价: 2000000 (合 99800.00 人民币)

剩余时间:363739.6591928

商品原始页面

成为包月会员,竞拍更便捷

出价竞拍

一口价

预约出价

收藏商品

收藏卖家

费用估算
该卖家需加收[10%]消费税!

拍卖号:r1041285175

开始时间:10/06/2025 11:33:04

个 数:1

结束时间:10/12/2025 23:03:32

商品成色:二手

可否退货:不可

提前结束:可

日本邮费:买家承担

自动延长:可

最高出价:huongg

出价次数:4

卖家账号:有限会社 ブランド・クラブ 收藏卖家

店铺卖家:是(公司卖家)

发货地:大阪府

店家评价:好评:74169 差评:23 拉黑卖家

卖家其他商品: 查看

  • 1、【自动延长】:如果在结束前5分钟内有人出价,为了让其他竞拍者有时间思考,结束时间可延长5分钟。
  • 2、【提前结束】:卖家觉得达到了心理价位,即使未到结束时间,也可以提前结束。
  • 3、参考翻译由网络自动提供,仅供参考,不保证翻译内容的正确性。如有不明,请咨询客服。
  • 4、本站为日拍、代拍平台,商品的品质和卖家的信誉需要您自己判断。请谨慎出价,竞价成功后订单将不能取消。
  • 5、违反中国法律、无法邮寄的商品(注:象牙是违禁品,受《濒临绝种野生动植物国际贸易公约》保护),本站不予代购。
  • 6、邮政国际包裹禁运的危险品,邮政渠道不能发送到日本境外(详情请点击), 如需发送到日本境外请自行联系渠道。
--- ### **暁の露(あかつきのつゆ)** **序章:令和の静寂** 雨上がりのアスファルトが、都会のネオンを滲ませていた。宝石鑑定士である私、水野美月(みずの みづき)は、タクシーの窓から流れる景色をぼんやりと眺めていた。祖母、千代(ちよ)が亡くなってから、一月が経とうとしている。享年九十二。大往生だったと誰もが言ったが、美月にとって祖母は、いつも美しい着物をまとい、静かに微笑む、どこか近寄りがたい存在だった。血の繋がりとは裏腹に、心と心の間に、一枚薄いガラスがあるような、そんな距離感をずっと感じていた。 その祖母の遺品として、美月の手元に渡されたのが、一つのネックレスだった。 法律事務所の堅苦しい応接室で、弁護士が恭しく差し出した桐の箱。蓋を開けた瞬間、美月は息を呑んだ。 中央に鎮座するのは、吸い込まれそうなほどに深く、それでいて光を宿した翠色の石。オーバル・カボションカットが施されたその翡翠は、まさに「ロウカン」と呼ぶにふさわしい、とろりとした艶を放っていた。その周囲を、まるで太陽の光条のように、あるいは夜空に咲く花火のように、無数の突起が取り囲んでいる。その先端には、夜明けの明星のごときダイヤモンドと、夕暮れの空を溶かしたようなイエローサファイアが、交互に配されている。地金はプラチナと見紛うばかりの、気品ある18金ホワイトゴールド。 「B6659、翡翠3.05カラット、ダイヤモンド0.22カラット、サファイア0.30カラット。千代様が『暁の露』と名付け、大切にされていたお品です」 弁護士の事務的な説明が、耳を素通りしていく。美月は、その圧倒的な美しさと、同時に感じる奇妙な違和感に心を奪われていた。祖母は、こんなにも情熱的で、モダンなデザインのジュエリーを身につける人だっただろうか。彼女の記憶の中の祖母は、いつも真珠か、小ぶりなダイヤの指輪を控えめにつけているだけだった。 鑑定士としての目が、その作り込みの確かさを捉える。石留めの丁寧さ、地金の仕上げ、全体のバランス。これは、ただ高価なだけではない。作り手の、燃えるような情熱と、類稀なる才能が注ぎ込まれた芸術品だ。 自宅に戻り、改めてネックレスを手に取った。ひんやりとした金属の感触。翡翠は、まるで生きているかのように、手のひらの上で微かに温かい。なぜ祖母はこれを、他の誰でもなく私に遺したのだろう。 遺品を整理する中で見つけた、古い手帳。その最後のページに、一枚のデッサンが挟まっていた。古びたわら半紙に、鉛筆で描かれたその絵は、間違いなくこの『暁の露』のデザイン画だった。流麗な筆致で描かれたネックレスの横には、小さなサインがあった。 『K. S. to C. 永遠の光を込めて』 Cは千代だろう。では、K.Sとは誰だ? 祖父の名は、水野正一(しょういち)。イニシャルが合わない。美月は、初めて祖母の人生に、自分の知らない扉があることを予感した。 その夜、美月は引き寄せられるようにネックレスを首にかけた。鏡に映る自分の姿に、見慣れない華やかさが宿る。翡翠が、心臓の鼓動と共鳴するように、静かに、しかし確かに脈打っているように感じられた。 「おばあさま…」 ぽつりと呟き、そっと翡翠に指で触れた。その瞬間、世界がぐにゃりと歪んだ。目眩と共に、意識が遠のいていく。耳の奥で、聞いたことのない蒸気機関車の汽笛が、けたたましく鳴り響いていた。 **第一章:昭和二十七年、焦土に咲く花** 美月が意識を取り戻した時、そこに令和の静かな自室はなかった。 鼻を突くのは、土埃と、何かが燻る匂い。耳には、人々の喧騒と、復興の槌音、そして遠くを走る路面電車の軋む音が飛び込んでくる。目の前には、まだ真新しいバラックが立ち並び、その向こうには、焼け残った洋風建築と、建設中のビルが混在する、混沌とした街並みが広がっていた。 「……どこ、ここ」 呆然と呟く美月。自分の服装を見ると、上質なウールのワンピースに変わっていた。手には、小さな革のハンドバッグ。しかし、それ以上に驚いたのは、自分の身体が自分のものでないような、奇妙な感覚だった。まるで、誰かの身体を借りて、その人の視界を覗き込んでいるような、夢と現実の狭間にいるような浮遊感。 「千代さん、こちらです」 不意に声をかけられ、美月は反射的に振り返った。そこに立っていたのは、少し年上の、上品な婦人だった。そして、美月は悟った。今、自分は「千代」と呼ばれたのだ、と。 混乱する頭で、婦人に導かれるままに歩き出す。ここは、戦後間もない東京。昭和二十七年だと、すれ違った新聞売りの少年が叫んでいた。なぜ、自分は祖母の若い頃の時代にいるのか。そして、この身体は、若き日の祖母、千代そのものなのか。 たどり着いたのは、銀座の裏通りにある、小さな宝飾店だった。看板には『工房 SAKAKI』と、洒落た字体で書かれている。店の中は狭いが、工具類が整然と並べられ、作り手の実直な人柄が伝わってくるようだった。 「榊さん、お待ちかねですよ」 店の奥から現れたのは、二十代半ばほどの青年だった。白いシャツの袖をまくり、革のエプロンを身につけている。その瞳は、まるで少年のように真っ直ぐで、けれど、その指先は、幾多の金属と格闘してきた職人のそれだった。彼が、榊賢治(さかき けんじ)だった。 「千代さん。お待ちしておりました」 賢治が、千代――つまり、美月――を見て、はにかむように笑う。その笑顔に、美月の胸が、いや、この身体の持ち主である千代の胸が、きゅっと高鳴るのを感じた。 「これ、見ていただけますか」 千代の身体が、するりとハンドバッグから小さな布包みを取り出す。美月は、自分の意思とは関係なく動く身体の、その記憶を追体験しているのだと理解した。布を解くと、中から現れたのは、あの深い翠色の翡翠だった。まだ、何にも留められていない、裸石の状態で。 「素晴らしい…何度見ても、魂が宿っているようだ」 賢治は、ピンセットで翡翠をそっとつまみ上げ、ルーペを覗き込んだ。彼の横顔は真剣そのものだ。 「この石に、生命を吹き込みたいんです。私だけの、特別な光を」 若き日の千代の声は、凛としていて、それでいて、どこか甘やかさを含んでいた。美月が知る、静かで穏やかな祖母とは、まるで別人だった。 「……お父上は、ご納得されたのですか? この石を、私が加工することに」 「父には、古い馴染みの店に頼むと伝えてあります。これは、私と榊さんだけの秘密」 千代は悪戯っぽく笑った。二人の間には、誰にも邪魔されたくない、特別な空気が流れている。 美月は、この時初めて、祖母の人生の断片を垣間見た。良家の令嬢である千代と、名もない一職人の賢治。決して結ばれることが許されない、身分違いの恋。この翡翠は、その禁じられた恋の、唯一の証なのだ。 その後、千代は何度もこの工房を訪れた。美月もまた、その度に時を超え、二人の時間を共有した。 二人は、デザインについて熱心に語り合った。 「この石は、夜明けの森の、一番静かな場所に溜まった雫のよう。だから、周りには光が必要だわ」 「光、ですか」 「ええ。闇を裂いて訪れる、朝の光。そして、闇の中でも道を照らす、星の光。両方が欲しいの」 千代の言葉を受け、賢治は幾枚もデザイン画を描いた。そして、ある日、彼が持ってきた一枚の絵に、千代は息を呑んだ。それは、美月が令和の時代で見た、あのデッサンそのものだった。 「中央の翡翠は、千代さん、あなた自身です。そして、周囲に伸びる光条…白い光は、あなたを照らす未来の光。ダイヤモンドで、その永遠の輝きを表現しました」 「……では、この黄色い光は?」 「それは…」賢治は少し言い淀み、しかし、真っ直ぐに千代の目を見て言った。「それは、私です。あなたを、いつでも、どこにいても見守っている、太陽の光。月や星のように、姿を隠すことがあっても、必ず空のどこかにある、変わらない光です。だから、太陽の色…イエローサファイアを使いたい」 その言葉は、ほとんど愛の告白だった。千代の頬が、朱に染まる。美月もまた、自分の頬が熱くなるのを感じた。祖母が、こんなにも情熱的な恋をしていたなんて。そして、このネックレスに込められた意味が、これほどまでに切ないものだったとは。 制作は、困難を極めた。戦後の物資不足の中、質の良いダイヤモンドとイエローサファイア、そして十分な量のホワイトゴールドを揃えるのは、賢治の細い人脈では不可能に近かった。しかし、彼は諦めなかった。持てるだけの私財を投げ打ち、ツテを頼り、時には頭を下げて、最高の素材を集めてきた。 その全ては、千代のため。彼女の笑顔を見るためだけに。 そして、ついにネックレスが完成する日。工房を訪れた千代を待っていたのは、しかし、完成した輝きではなかった。憔悴しきった賢治の顔と、重い沈黙だった。 「千代さん…お話が、あります」 賢治が語ったのは、残酷な現実だった。千代の縁談が、正式に決まったというのだ。相手は、新進気鋭の若き実業家、水野正一。美月の祖父となる男だった。千代の父親が、娘の密かな逢瀬に気づき、事を急いだのだ。 「そんな…嘘よ…」 千代の身体から、力が抜けていく。美月もまた、胸を締め付けられるような痛みに襲われた。 「これが、私にできる、最後の仕事です」 賢治は、震える手で、ベルベットの小箱を開けた。そこに、完成した『暁の露』が横たわっていた。それは、美月が知るものと寸分違わず、しかし、生まれたての光を放っていた。翡翠は命を得て、ダイヤモンドは鋭く、イエローサファイアは優しく輝いていた。 「……綺麗…」 涙を流しながら、千代は呟いた。 「これを持っていてください。水野さんは、甲斐性のある方だと聞きます。きっと、あなたを幸せにしてくれる。私は…私は、この光のように、いつでもあなたを見守っています。たとえ、あなたの隣にいられなくても」 「賢治さん…」 「行ってください。あなたの幸せが、私の願いです」 賢治は、決して千代の顔を見ようとしなかった。ただ、硬くこぶしを握りしめ、背を向けていた。その背中が、どれほど泣いていたか。美月には、痛いほどわかった。 千代は、ネックレスを手に、工房を飛び出した。頬を伝う涙は、止まらなかった。これが、二人が交わした最後の会話だった。 そして、美月の意識は、再び現代へと引き戻された。 **第二章:令和の追憶** 目を開けると、見慣れた自室の天井があった。頬に、冷たい涙の感触。首には、あのネックレスがかかっている。ひんやりとしているはずの翡翠が、まるで誰かの涙のように、生暖かく感じられた。 「……そうだったんだ…おばあさま…」 美月は、初めて祖母の人生に触れた気がした。いつも静かで、感情を表に出さなかった祖母。その胸の奥には、こんなにも激しく、切ない恋の記憶が、生涯にわたって封じ込められていたのだ。 祖父・正一との結婚生活は、穏やかだったと聞いている。正一は実直な男で、千代を深く愛し、大切にした。二人の間には、美月の父が生まれた。何不自由ない、幸せな家庭。しかし、千代の心の中には、常に太陽のように輝く、別の光があったのだ。 美月は、改めてネックレスを見つめた。 翡翠は、若き日の千代。 ダイヤモンドは、彼女が歩むべきだった、輝かしい未来。 そして、イエローサファイアは、彼女を生涯見守り続けた男、榊賢治。 このネックレスは、賢治から千代への、決して言葉にできなかった恋文であり、呪いであり、そして、祝福だったのだ。 千代は、このネックレスをほとんど身につけることはなかった。それはそうだろう。夫からもらったものではない、愛した男の魂が込められたものを、どうして日常的につけられようか。きっと、誰にも見られぬよう、桐の箱にしまい、時折そっと取り出しては、遠い日の記憶に涙していたに違いない。 そして、なぜこれを自分に遺したのか。その意味も、少しだけわかった気がした。 鑑定士である孫娘なら、この品物の金銭的価値だけでなく、その中に込められた職人の魂、芸術的価値を理解してくれると信じたのではないか。そして、もしかしたら――その奥にある物語まで、いつか読み解いてくれると、淡い期待を抱いていたのではないか。 『K. S. to C. 永遠の光を込めて』 デッサンに書かれた言葉が、胸に突き刺さる。榊賢治から、千代へ。 美月は、いてもたってもいられなくなった。榊賢治という人物について、もっと知りたい。彼がその後、どうなったのか。千代を失った後、どんな人生を歩んだのか。 彼女は、自分の職業的スキルを総動員して、調査を開始した。古い宝飾業界の名簿、銀座の地籍図、昔の電話帳。インターネットの検索窓に「榊賢治」「宝飾職人」「銀座」と打ち込む。しかし、昭和二十年代の情報は、デジタルの海にはほとんど残されていなかった。 諦めかけたその時、ある古美術商のブログに、小さな記述を見つけた。 「……戦後の銀座で、夭折した天才職人として知られる榊賢治。彼の作品はほとんど現存しないが、そのデザインは独創的で、特に色石の使い方は、当時の日本の宝飾界において突出していた……」 夭折。その二文字に、美月の心臓が凍りついた。 さらに調査を進めると、断片的な情報が繋がってきた。賢治は、千代と別れた後も、工房で黙々と作品を作り続けた。しかし、彼の作品は、あまりにも斬新すぎたのか、当時の保守的な市場では評価されなかった。加えて、千代のネックレスを作るために私財を使い果たし、経営は常に火の車だったという。 そして、千代が嫁いでから五年後。昭和三十二年の冬、賢治は工房で倒れているのが見つかった。過労と栄養失調。三十一歳の若さだった。 「……そんな…」 美月は、パソコンの前で声を失った。千代は、この事実を知っていたのだろうか。自分のために全てを捧げた男が、孤独のうちに短い生涯を終えたことを。もし知っていたのなら、その胸中は、どれほど張り裂けるような思いだったろう。 祖母の、あの静かな微笑みの裏にあった、計り知れない哀しみと悔恨。美月は、今度こそ、自分の意思で涙を流した。それは、祖母のためであり、会ったこともない榊賢治という男のためだった。 そして、美月は、ふと、もう一つの疑問に行き当たった。 千代と賢治の物語はわかった。では、この物語の始まりである、翡翠そのものは、どこから来たのだろうか。千代は、なぜこれほどまでに素晴らしい翡翠を持っていたのだろう。 その答えが、過去にあるのなら。 美月は、もう一度、ネックレスを手に取った。覚悟を決めて、そっと翡翠に触れる。 今度は、どこへ連れていかれるのだろう。 目を閉じると、再び世界が歪み、今度は潮の香りと、文明開化の音が、彼女を包み込んだ。 **第三章:明治三十五年、海の向こうの想い** 意識がはっきりすると、美月は洋風の意匠が凝らされた、明るい応接室にいた。窓の外には、手入れの行き届いた庭園が広がり、松の緑と、色づき始めた紅葉が美しい。 身体の感覚が、また違っている。今度の身体は、千代よりもさらに小柄で、けれど、芯の通った気品を漂わせていた。身にまとっているのは、紫紺の地に、菊の花が友禅で描かれた、上等な絹の着物だった。 「お母様、お荷物が届きました」 若い女中の声に、美月は自分が「お母様」と呼ばれたことを理解する。目の前の鏡台に映ったのは、まだ二十歳を過ぎたばかりの、可憐な顔立ちの女性だった。結い上げた髪には、珊瑚のかんざしが挿してある。 千代の母、つまり美月の曽祖母にあたる女性だろうか。いや、時代がもっと古い。明治時代のガス灯が、夕暮れの庭を照らし始めている。 「ありがとう。こちらへ」 凛とした声が、自分の口から発せられる。女中が運んできたのは、大陸からのものと思われる、螺鈿細工の美しい小箱だった。 「旦那様からです。清国から、ようやく船が戻られたと」 「まあ…! 旦那様が」 その声は、喜びに弾んでいた。この身体の主は、夫の帰りを心から待ちわびていたのだ。 彼女――名を、さつき、というらしい――は、逸る心を抑えながら、小箱を開けた。中には、異国の香を焚きしめた綿が敷き詰められ、その中央に、一つの石が鎮座していた。 あの翡翠だ。 まだ磨き上げられる前の、少し丸みを帯びた原石に近い形。しかし、その奥に宿る、深く、静かな翠色の輝きは、紛れもなく『暁の露』の中心となる石だった。 添えられていた手紙を、さつきはゆっくりと開いた。それは、外交官である夫、麟太郎(りんたろう)からのものだった。達筆な文字で、彼の無事と、妻への愛情が綴られている。 『――かの地にて、偶然、稀代の宝玉を手に入れた。かの国では、翡翠は五徳(仁・義・礼・智・信)を備える君子の石とされ、持ち主を守り、幸運をもたらすと云う。我が愛する妻、さつき。お前が、この家に嫁ぎ、水野の家を守ってくれていることへの、感謝のしるしだ。いつか、この石にふさわしい細工を施し、お前を飾る日を夢見ている。次に会う時まで、健やかであれ。 麟太郎』 さつきの目に、じわりと涙が浮かんだ。それは、悲しみの涙ではない。夫の深い愛情に触れた、喜びと安堵の涙だった。美月もまた、その温かい感情に、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。 これが、この翡翠の始まり。 千代と賢治の、切ない恋の物語が始まる、ずっと前。ここには、夫婦の、穏やかで、確かな愛情の物語があったのだ。 この翡翠は、もともとは、麟太郎からさつきへの、愛と感謝の証だった。それは、やがて娘に受け継がれ、そして、孫である千代の手に渡った。 美月は、時を超えた壮大な物語の連鎖に、身震いするような感動を覚えていた。一つの宝石が、これほどまでに多くの人間の、異なる形の愛を、その内に宿している。 明治の愛情、昭和の恋情、そして、令和の私がいる。 美月は、さつきの身体を通して、翡翠をそっと胸に抱いた。 「ありがとうございます、旦那様。大切にいたします。この石が、水野の家を、未来永劫、見守ってくれますように」 さつきの祈りが、美月の魂に直接響くようだった。そして、その祈りは、確かに未来へと繋がっていた。 遠くで、港から船の汽笛が聞こえた。麟太郎が、もうすぐ帰ってくる。さつきの心臓が、幸福に高鳴った。その鼓動を感じながら、美月の意識は、再び光の中に溶けていった。 **第四章:繋がる糸、令和の奇跡** 令和の静寂に戻った美月は、しばらく呆然としていた。 しかし、今度の目覚めは、以前とは全く違っていた。悲しみや切なさだけではない。胸の奥に、温かく、力強い何かが灯っているのを感じた。 明治の麟太郎とさつき。 昭和の千代と賢治。 二つの時代の、全く異なる愛の形。その両方を受け止め、このネックレスは今、ここにある。 夭折した賢治の無念。生涯、想いを秘め続けた千代の哀しみ。それでも、この物語の始まりは、幸福な愛だったのだ。その事実が、美月にとって大きな救いとなった。 「……私に、できることはないだろうか」 この物語を知ってしまった以上、ただの傍観者ではいられない。榊賢治という、類稀なる才能を持ちながら、報われることなく世を去った職人。彼の名誉を、その才能の証を、どうにかして世に伝えられないだろうか。 美月は、再び賢治について調べ始めた。今度は、「夭折した天才」というキーワードから、宝飾史を専門とする大学教授や、古い業界紙のバックナンバーを当たった。 そして、ついに一筋の光を見つける。 賢治には、年の離れた弟がいた。その弟は、兄の死後、工房をたたみ、別の土地へ移り住んだという。そして、その弟には、息子がいた。つまり、賢治の甥にあたる人物が、今もどこかで生きているかもしれない。 美月は、古い戸籍をたどり、興信所にも依頼した。費用はかさんだが、もう、どうでもよかった。これは、自分がやらなければならないことだと、強い使命感に駆られていた。 数週間後、一本の電話が鳴った。 「水野様。お探しの人物ですが…榊賢治氏の甥にあたる、榊一馬(さかき かずま)氏のご子息が、見つかりました」 心臓が、大きく跳ねた。 「その方は…ご健在で?」 「はい。お名前を、榊海斗(さかき かいと)さん。都内で、ジュエリー工房を経営なさっています」 ジュエリー工房。その言葉に、美月は運命の糸を感じずにはいられなかった。 数日後、美月は、都心から少し離れた、静かな住宅街にある工房の前に立っていた。ドアには、『Atelier KAI』という、小さな真鍮のプレートがかかっている。賢治の工房と同じ、ささやかな構えだった。 深呼吸をして、ドアをノックする。 「どうぞ」 中から、若い男の声がした。 ドアを開けると、そこには、賢治が生きていた昭和の工房とは全く違う、モダンで洗練された空間が広がっていた。しかし、壁にかけられた使い込まれた工具のいくつかには、見覚えがあるような気がした。 「……あの、榊海斗さんでしょうか」 「はい、そうですが」 作業台から顔を上げた青年は、賢治と同じくらいの歳に見えた。面影があるわけではない。しかし、何かを作ることに真摯に向き合う、真っ直ぐな瞳は、確かに賢治と通じるものがあった。彼が、榊海斗だった。 美月は、自分の身分を明かし、祖母の遺品について調べているうちに、彼の大叔父にあたる榊賢治という職人にたどり着いたことを、できるだけ簡潔に説明した。 海斗は、訝しげな顔で美月の話を聞いていた。 「榊賢治…大叔父の名ですね。祖父から、若くして亡くなった、腕のいい職人だったと聞いたことはありますが…詳しいことは何も」 無理もない。七十年近くも前の話なのだ。 美月は、意を決して、持参した桐の箱を開けた。 「これが、私の祖母が、賢治さんに作っていただいたネックレスです」 『暁の露』が、令和の光を浴びて、その姿を現す。 海斗は、それを見た瞬間、息を呑んだ。プロの目が見開かれる。 「……すごい…」 彼は、そっとネックレスを手に取ると、ルーペで食い入るように見始めた。 「この石留め…この爪の立て方…翡翠を傷つけないギリギリを攻めている。それに、この光条のデザイン。大胆で、繊細だ…こんな仕事ができる職人が、七十年も前にいたなんて…」 海斗の声は、純粋な驚きと、同じ職人としての畏敬の念に満ちていた。 「もし、よろしければ、これを見ていただけますか」 美月は、あの古びたデッサンを差し出した。 海斗は、デッサンと、目の前のネックレスを、何度も見比べた。そして、デッサンの隅にあるサインに目を留め、指でそっとなぞった。 『K. S. to C.』 「……K. S. …榊賢治…」 海斗は、何かを思い出したように、工房の奥にある古い棚をごそごそと漁り始めた。そして、一冊の、革の表紙が擦り切れたスケッチブックを持ってきた。 「これは、祖父が、賢治の遺品だからと大切にしていたものです。中身は、ほとんどがデザインの習作で…」 ページをめくっていくと、そこには、様々なジュエリーのデザインが、あの流麗なタッチで描かれていた。そして、最後のページ。そこに描かれていたのは、間違いなく、『暁の露』と酷似したデザインだった。しかし、それは完成形ではなく、いくつものパターンが試行錯誤されている。そして、そのページの隅には、こう書かれていた。 『我が魂の女神へ。暁の露に、永遠の光を宿らせん』 「魂の女神…」 海斗が、呆然と呟いた。 美月は、彼に全てを話した。時を超えて見た、祖母・千代と、大叔父・賢治の、切ない恋の物語を。にわかには信じがたい話であることはわかっていた。けれど、海斗は、黙って、真剣に耳を傾けてくれた。 全てを話し終えた時、工房には静寂が満ちていた。 やがて、海斗がぽつりと言った。 「そうだったのか…大叔父は、そんなにも、一人の女性を愛していたのか…」 彼の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。 「このネックレスは、賢治さんの、才能と、愛の、唯一の証なんです。でも、それは誰にも知られることなく、私の祖母の箪笥の奥で、七十年も眠っていました。私は…それが、あまりにも哀しいと思うんです」 美月の声は、震えていた。 「だから、あなたに、この物語を知っていてほしかった。榊賢治という素晴らしい職人がいたこと。そして、彼の魂は、このネックレスの中に、今も生きているということを」 海斗は、しばらく黙ってネックレスを見つめていた。そして、意を決したように顔を上げた。 「水野さん。いや、美月さん。提案があります」 「提案?」 「来月、若手のジュエリーデザイナーの作品展があるんです。そこに、僕も出品する予定で…もし、よろしければ、この『暁の露』を、特別展示品として出品させていただけないでしょうか」 「え…?」 「もちろん、これはあなたの、大切なおばあ様の形見です。無理強いはできません。でも…この作品は、世に出るべきだ。榊賢治という職人の仕事は、現代の僕たちが見ても、全く色褪せていない。むしろ、新しい。彼の物語と共に、このネックレスを多くの人に見てもらいたい。それが、僕にできる、大叔父への、唯一の供養だと思うんです」 海斗の瞳は、どこまでも真摯だった。 美月は、彼の申し出に、胸が熱くなるのを感じた。 「……はい。ぜひ、お願いします」 **終章:令和に射す光** 作品展の初日。会場の一番奥、スポットライトを浴びたガラスケースの中に、『暁の露』は静かに鎮座していた。 その隣には、榊賢治のデッサンと、彼の短い生涯、そしてこのネックレスに込められた物語を綴ったキャプションが添えられている。 『暁の露 ~昭和二十七年・作 榊賢治~』 多くの来場者が、そのネックレスの前で足を止め、その美しさと、背景にある切ない物語に、感嘆のため息を漏らしていた。 「素晴らしいわね…」 「こんな職人さんがいたなんて、知らなかった」 「物語を知ると、このイエローサファイアが、なんだか泣いているように見えるわ…」 その輪の中心で、美月と海斗は、並んで立っていた。 「ありがとう、海斗さん。賢治さんも、きっと喜んでいるわ」 「ううん。僕の方こそ、ありがとう。大叔父の作品に、そして、美月さんに出会えて、僕は、自分が作るべきものの道筋が、少し見えた気がする」 海斗は、真っ直ぐに美月を見つめた。 「僕も、誰かの人生に、こんな風に光を灯せるようなジュエリーを作りたい。時代を超えて、想いを繋いでいけるような」 その言葉に、美月は、胸の奥が温かくなるのを感じた。 祖父・正一も、きっと、千代の心の奥にある光に気づいていたのではないか。それでも、彼は彼女を丸ごと受け入れ、生涯をかけて愛し抜いた。それもまた、一つの深い愛の形だ。 誰もが、誰かを想い、愛し、そして、その想いは、形を変えながら未来へと繋がっていく。 作品展が終わった夜。二人は、静かなバーで祝杯をあげた。 「これから、どうするの?」と海斗が尋ねた。 「このネックレス? もちろん、私が大切に受け継いでいくわ。でも、もう箪笥の奥にしまい込んだりはしない。特別な日には、ちゃんと身につけようと思うの」 美月は微笑んだ。 「この翡翠には、明治の、穏やかで幸福な愛が宿ってる。そして、このデザインには、昭和の、切なくて情熱的な愛が込められてる。その全てを、令和の私が受け止めて、未来に繋いでいく。それが、私の役目なんだと思うから」 その言葉を聞いて、海斗は優しく微笑んだ。 「じゃあ…その未来に、僕も一緒にいてもいいかな」 「え…?」 「美月さんといると、不思議と、時が繋がるような気がするんだ。僕たちの、おばあさんと大叔父さんが、果たせなかった想いを…僕たちで、新しい物語にできたら、なんて…」 海斗の言葉は、少し照れくさそうで、でも、とても誠実だった。 美月の胸に、新しい光が灯る。それは、過去から受け継いだ光とは違う、今、目の前の男性から発せられる、温かくて、優しい光だった。 数年後。 美月の薬指には、海斗がデザインした指輪が輝いていた。中央には小さなダイヤモンド。そして、その横には、まるで寄り添うように、小さなイエローサファイアと、翠色のガーネットが留められていた。 そして、彼女の胸には、いつものように『暁の露』が輝いている。 それはもう、ただの形見ではない。 明治、昭和、そして令和。三つの時代を生きた人々の、愛と哀しみの記憶。その全てを祝福するように、翡翠は深く、優しく、輝きを放っていた。 過去から未来へ。 一つの宝石が繋いだ、愛の物語。 美月は、窓の外に広がる令和の空を見上げながら、そっとネックレスに触れた。そこにはもう、何の哀しみもなかった。ただ、温かい感謝と、未来への希望だけが、満ちていた。 暁の露は、新しい朝の光を浴びて、永遠に輝き続ける。
出价者 信用 价格 时间
huongg 22 31最高 10/08/2025 11:14:38
NGUYEN CONG HAU 1231 21 10/07/2025 18:05:43
フック 89 21 10/08/2025 01:05:53
his******** 182 1 10/06/2025 23:05:10

推荐