児玉幸雄（1916年8月9日－1992年2月20日）は大阪市生まれの洋画家。関西学院大学在学中に田村孝之介に師事し、1936年に全関西洋画展、1937年に二科展に初入選。戦後は二紀会創立に参加し、同展で同人賞・同人優賞を受賞し委員となる。1956年に東京へ転居し、1957年に渡欧。以降、欧州各地を訪れ、特にフランスの広場や市場を主題とした作品を多く制作。1976年に病により二紀会を退会後は個展を中心に活動。初期は人形や婦人像を多く描いたが、渡欧後は異国の生活感と活力を表現した広場の情景を主なモチーフとし、堅牢なマチエールとさざめく色面による画面構成で具象画界の実力派と認められた。著書に石版画集『フランスの四季』『パリーの街角』『素顔のパリー』などがある。

児玉幸雄「ブルターニュの漁港」油彩 約6号 東美鑑定評価機構鑑定書付
「ブルターニュの漁港」は、大阪市出身の洋画家・児玉幸雄（1916ー1992）が、フランス・ブルターニュ地方の港町を題材に描いた油彩画です。画面中央に停泊する鮮やかな緑の漁船と、その背後に並ぶ石造りや木骨造の家々が、重厚なマチエールと華やかな色彩の対比によって生き生きと表現されています。曇天の空の下、家並みの温かな色調と水面に映る光のきらめきが調和し、異国の生活感と旅情を鮮やかに伝えています。

児玉は戦後、二紀会の創立に参加して受賞を重ね、渡欧後はフランス各地の広場や市場、港町を主題とした作品を数多く手がけました。本作にも、彼が欧州で見出した日常の活力と詩情が色濃く映し出されており、旅先の一瞬を独自の感性で切り取った佳品といえます。