岩澤重夫（いわさわしげお／1927年11月25日～2009年11月7日）は大分県日田市出身の日本画家で、日本芸術院会員・日展常務理事・文化功労者。京都市立美術専門学校を卒業後、堂本印象に師事し東丘社に入塾、日展を中心に活動し、構築性の強い風景画を確立。第4回新日展特選「晨暉」、第11回新日展菊華賞「昇る太陽」、第17回日展文部大臣賞「氣」、山種美術館賞大賞、日本芸術院賞、MOA岡田茂吉賞大賞など数々の賞を受賞。京都祇園祭・菊水鉾の見送り画、歌舞伎座の緞帳、金閣寺客殿障壁画（遺作）など公共的な大作も多く手がけ、静謐かつ雄渾な風景画を手堅い技法で描き続けた。

岩澤重夫「緑潤瀧聲」日本画 10号 金落款 共シール
本作《緑潤瀧聲》は、日本画家・岩澤重夫によって描かれた、深山にひっそりと息づく滝と豊かな緑を主題とした日本画の秀作です。画面左に垂直に走る鬱蒼と茂る木々の間から顔を覗かせる滝の姿。繊細な筆づかいと幾重にも重ねられた緑の濃淡により、滝の流れはあたかも山の呼吸と一体になっているかのようです。作品タイトルにある「緑潤」は、しっとりと湿り気を帯びた新緑の瑞々しさを表し、「瀧聲」は、画面には描かれていないはずの“滝の音”を観る者の心に響かせる詩的な表現です。その音は静けさと共鳴し、視覚を超えて感覚に訴えかけてきます。

作者の岩澤重夫（1927-2009）は、大分県出身の日本画家で、堂本印象に師事し、東丘社に所属。日展を主な舞台に活躍し、日本芸術院賞、文部大臣賞、山種美術館賞大賞などを受賞。金閣寺客殿障壁画や歌舞伎座の緞帳制作も手がけた文化功労者です。その画業を通じて、自然の構築美と精神性の調和を追い求めてきました。《緑潤瀧聲》は、まさにその精神が結実した作品であり、自然が放つ静けさと力強さを繊細かつ雄渾に描き出しています。深い緑に包まれた山と、その奥に響く滝の声に耳を澄ませるようなひとときを与えてくれる名画です。