Deulsche
Grammuphon
RESONANCE
ヴォルフガングアマデウスモーツァルト
(1756-179)
Side 1:
フルート四重奏曲 第1番 二長調K.285
1. Mvt.:Allegro
2. Mvt.: Adagio - attacca
3. Mvt.: Rondeau
フルート四重奏曲 第2番 ト長調 K.285a
I. Mvt.: Andante
2. Mvt.: Tempo di Menuetto
Side 2:
フルート四重奏曲 第3番 ハ長調 K.Anh.171 (K.285b)
I. Mvt.:Allegro
2. Mvt.: Thema. Andantino- Variazioni I.VI
フルート四重奏曲 第4番 イ長調 K.298
1. Mvt.: Thema. Andante - Variazioni I V
2. Mvt.: Menuetto
3. Mvt.: Rondeau. Allegretto grazioso
アンドレアスブラウ(フルート)
アマデウス弦楽四重奏団員
ノーバートブレイニン(ヴァイオリン)
ピーターシドロフ(ヴィオラ)
マーティンロヴェット(チェロ)
プロデューサー:ギュンターブレースト
ディレクター、レコーディングエンジニア:ヴォルフガングミットレーナー
データ:1977年7月22-25日 フィンランド
ジャケット表:春または鳥猟者(ランクレ)[サンセット]
ヴォルフガングアマデウスモーツァルト(1756-1791)
とフルートの関係は、一般にはあまり深く強いものではないと
されている。たしかにモーツァルト自身も、この楽器に対して
はかなりネガティヴな発言を残しているのだ。1778年2月14日
付の父親レーオポルト宛ての手紙の一節である。「ドゥジャン
氏は、明日パリへ発ちますが、ぽくが協奏曲を2曲と四重奏曲
を3曲しか作らなかったので、96フロリーンしかくれませんで
した。これは半額としても4フロリーン足りません。彼は、で
も全部払ってくれるでしょう。ヴェンドリングとは話をつけま
したから。残りのものはあとで送るつもりです。全部仕上げら
れないのは当然なのです。ここではちっとも落ち着いていられ
ません。夜しか何にも書けないのです。(中略)ご存知のように、
我慢のならない楽器のために書かなければならない時、ぽくは
まるでぼんやりしてしまうからです」。
その上、彼がフルートのために書いた作品を探してみても、
それほど沢山の数があるわけでもない。前出の手紙には2曲の
協奏曲と3曲の四重奏曲のことが記されているが、もう1曲四
重奏曲が残されている他、〈フルートとハープのための協奏曲〉
(ハ長調 K.299=K°297c) やハ長調のアンダンテ楽章(K.315-
K285e)ぐらいがせいぜいであろう。
このレコードには、そうしたモーツァルトのフルート作品の
中心を占める4曲の四重奏曲が収められている。彼のフルート
用の作品は青春の旅、あのマンハイムパリ旅行の折りにほと
んど集中して書かれているのも大きな特徴であろう。引用した
手紙には二人のフルート音楽家の名前が記されている。1777年
から翌年にかけてのマンハイム滞在中に彼にフルート用の協奏
曲や室内楽を注文したのは、オランダの素人音楽家ドゥジャ
ンであった。このアマチュアは、おそらくはヴィレムヴァン
ブリテンデジョンと考えられる。この人物だとすれば、1767
年にウィーンの音楽家カールディッタースフォン ディッ
タースドルフがシンフォニーアを1曲献呈している相手である。
彼の注文でフルートの作品が書かれたものであり、その点で彼
はモーツァルトのこのジャンルの充実に貢献しているといって
よいだろう。もう一人は当時ヨーロッパでも特に評判だった名
フルーティスト、ヨハンバプティストヴェンドリング(1720-
97)である。モーツァルトがこの人物との交際を通じて、フルー
トの音楽の世界に深く関わりを持つことになったのは事実であ
る。
当時のフルートについて一言しておこう。モーツァルトの幼
ない時代から、マンハイム パリ時代、そしてウィーン時代初
期と1760年代から1780年代の初めにかけては、1鍵6穴および円
錘状の穴を具えているのが普通のものであったが、このフルー
トは他の楽器と同様に不完全なものであり、指の自然の開きに
応じて穴があけられるものであった。この種のフルートでは、若
干の音は、かなり注意して吹次奏する必要があった。よく知られ
た楽器ながら、技巧が要求されるものであり、モーツァルトも
そうした点を十分に活かした作り方を試みている。当時の習慣
として、フルートのパートは第1ヴァイオリンのオクターヴ上
で奏されることが多いが、これはそうすることでフルートの音
色を浮き彫りにするためである。それと裏腹に、モーツァルト
はあまり低い音域をフルートに与えてはいない。
このような特徴が、モーツァルトの4曲のフルート四重奏曲
にみられる。特に目立っている点は、フルートの高く、また晴
れやかな音色が、明るくなこごやかともいうべき曲調をきわだた
せている点であろう。三本の弦楽器の音とのかけ合いも、フルー
トを主役としながら、よどみのない流れを形作るのだ。嬉々と
していながら、いくばくかの騎りも加えた陰影のある音調は、
このジャンルを、モーツァルトの創作活動の中心に据えること
はなくとも、この青春の音楽家の忘じがたい芸術に不可欠の一
分野として位置づけているものといえよう。
フルート四重奏曲 第1番 二長調 K.285
すでに述べたように、モーツァルトが就職口探しのために行っ
たいわゆるマンハイムパリ旅行の作品である。マンハイムで
彼はオランダ人“ドゥジャン”と知り合った。 この人物をモー
ツァルトは““インド人”と呼び、かつ「悠々自適の生活をし、
あらゆる学芸を愛好し、ぼくにたいへん好意を寄せ、尊敬して
くれている人」と説明を加えている (1777年12月10日付の手紙)。
この人物から、モーツァルトは12月初めに3曲の協奏曲と2曲
の四重奏曲を200フロリーンの報酬で作曲するよう頼まれたのだ。
その1曲目のこの曲は、1777年12月25日、すなわちクリスマス
の日に完成している。
全体は3楽章からなり、フルートがソリスト的に活躍する軽
やかな作品であるが、ロ短調のアダージョ楽章が中間にさしは
さまれて、両端楽章と鮮やかな対照を示している。
第1楽章はアレグロ、 二長調、4分の4拍子のソナタ楽章。
第2楽章はアダージョ、ロ短調、4分の3拍子の三部形式の
楽章で、アタッカで切れ目なく終楽章に続く。
第3楽章はロンドー、二長調、4分の2拍子、二つの副主題
が軽やかな主要主題をいろどっている。
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