1968年 広島県に生まれる、武蔵野美術大学大学院油絵科修了、2020年 第96回白日会展文部科学大臣賞受賞、現場主義に強いこだわりをもって制作している、眼前に在る生身の女性やモチーフを、紡ぐように一片一片写し取る作業を丁寧に重ねてゆく、アトリエの温度や湿度、流れる時間、モデルの確かな呼吸や肌の調子、言葉、生地の擦れる音までもが、色となり形となってモデルと福井氏の境界線であるキャンバスにたち現れる、「実像」にこだわる制作スタイル故の複雑なマチエールも福井氏の作品の醍醐味と言える、現在：白日会会員　日展会員

福井欧夏「静かに積もりて」油彩 20号 大作
福井欧夏が描く《静かに積もりて》は、白の世界に柔らかく包まれた女性像を主題とする作品です。静かに横たわる姿は、眠りに身をゆだねる安らぎと、時の流れが音もなく積み重なっていくような静謐さを同時に感じさせます。タイトルにある「積もりて」という言葉は、光や空気、肌の温度、そして呼吸の律動が、画面上に幾層にも積み重なり、ひとつの詩的な情景を形づくっていることを暗示しています。福井氏の制作姿勢は「現場主義」に根ざし、眼前にある生身のモデルやモチーフを紡ぐように写し取ることにあります。アトリエに漂う湿度や温度、流れる時間、衣擦れの音や言葉までもが色となり形となって現れ、この作品においても複雑なマチエールとなって存在感を放ちます。白を基調にしながらも、わずかな血色や陰影の変化が、生命の確かさを画面に呼び込み、写実を超えた豊かな詩情を湛えています。

2020年、第96回白日会展において文部科学大臣賞を受賞した福井氏は、白日会会員・日展会員として高い評価を得てきました。その実像へのこだわりと緻密な表現力は、本作《静かに積もりて》にも余すところなく表れており、鑑賞者を静かな時間の深みに誘います。