
一般に出回ることのない希少な染織ですので、初めて目にされる方も多いかと思います。風格のある布です。
この布は、インドネシア ジャワ島中部 ソロの王宮女性の衣装で、1940〜50年代にかけての古布です。2枚を離れ離れにしたくないので、1枚目画像の2枚ペアで出品します。
左側の大きい方は腰布で、約243×102㎝、右側の細い方は胸布で、約267×29㎝です。木綿地に、印金(截金)技法で様々な動物や森の木々が布一面にびっしりと描き込まれています。全くの無地の布に直接印金するのではなく、被覆防染で描かれた文様の上をなぞるように印金がなされているために、この布はジャワ更紗(バティック)に分類され、とても手間のかかるものです。このような文様は、「アラス・アラサン」と呼ばれ、王侯の人々の衣装だけに見られます。高価な素材を贅沢に使い、生き生きとした描線で各動物の特徴を捉らえた文様は、大変上手です。王宮お抱えの腕の立つ職人によるものでしょう。普通の職人では、このように描けません。
更に、左側の腰布の赤と藍で染め分けられた境目(5枚目画像緑の矢印)や周辺部分(裏側から見た6枚目画像白い矢印)には、縫い締め絞りが入っており、一見、無地の2色に見えて、さすが王宮の染織で、見えない部分に手をかけています。以前にロクチャンという同じ地域の布が出てきたことがありますが、絞りと印金が併用された布には、特別なものが多いようです。こちらは、生地が縫い合されておらず、一枚布です。
一方、右側の赤い胸布には、絞りは入っておらず、截金だけです。中央部(8枚目画像青い矢印部分)で、2枚が縫合されています。
左と右の布では、同じ赤でも色味が微妙に違いますので、左側の腰布のついでに制作されたのではなく、これだけを単独で染めて作られたようです。印金の映える美しい赤色だと思います。また、どちらの布もほつれてこないように、周辺部がミシンで縫われています。19世紀末には、既にジャワ島にミシンが入っており、裕福な王宮では、当然ミシンが使われていたことでしょう。
アラス・アラサン文様の衣装が、36年前の図録「インドネシアの更紗展」(10枚目参考画像)に載っていましたので、その解説と併せてご覧ください。右側の王妃が身に付けているのが、まさにこの文様の衣装です。昔、この2枚と一緒に王様用(10枚目画像の左から2枚目のような男性用の大きなドドット)も入手したのですが、既に手放してしまいました。
新しい布ではありませんので、2ヶ所に傷みがあり、補修がなされています。一見したところでは分かりづらい上手な補修です。3枚目画像の手前左側の黄色囲み部分(次の4枚目画像がその部分のアップ)ですので、ご確認願います。この他に、印金の摩耗や汚れがありますので、古布にご理解のある方のみ、ご入札をお願いいたします。
このような王宮の衣装が一般市場に出ることは、まずありませんので、本来ならもっと評価されるべき布だと思います。良い時代に入手したため、出品できる布です。整理のためリーズナブルに出品しますので、この染織の希少さがお分かりになり、大切にしてくださる方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。
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