
70年代初頭にアトランティックに残したジャズ・ファンク作品が近年再評価されているサックス奏者、ロビン・ケニヤッタの’76年作品。グローヴァー・ワシントンJr.路線のアーバン・メロウ好作品ながら、フュージョン・ファンにはこれまで馴染みが薄かった隠れた名品。パティ・オースティンが2曲で楽曲提供&ヴォーカルとしても参加しているのもファンには嬉しいポイント。
ドーンとラルフ一派は、強い信頼関係で結ばれていた。当時のラルフはパーカッション奏者として活躍しながら、音楽出版社アンティジア・ミュージックを運営し、ニューヨークの音楽シーンに確固たる地位を築きつつあった。共同経営者はベース奏者/作曲家ウィリアム・ソルター、作編曲家ウィリアム・イートン、鍵盤/打楽器奏者アーサー・ジェンキンス。
ラルフ=ソルターのコンビは、本作にもメロウなスロウ・チューン<Love Me>とグルーヴィーな<You>、メロディアスな<Of Life And Love>の3曲を提供した。とりわけ<You>は、イントロだけでイッてしまうようなキラー・チューンで、翌年ソルターのソロ作『IT IS SO BEAUTIFUL TO BE』で再演される。これは書いた本人もお気に入りだったに違いない。
更に<Give It Time>と<Oh Oh Oh>は、パティ・オースティンの作。ちょうどこの年、CTIからファースト・アルバム『END OF THE RAINBOW』を出す彼女だが、実はその前からアンティジアとソングライター契約を結んでいた。実際、前者はそのファーストで自演ヴァージョンが聴ける。
また別の意味で印象深いのが、レオン・ラッセルのカヴァー<Bluebird>だ。ソングライターとしてのレオンは、カーペンターズで有名になった。名プロデューサー:トミー・リピューマがジョージ・ベンソンに<This Masquarade>を歌わせ、グラミー賞を受けたことも知られている。でもリピューマと同時期に、このドーンもしっかりレオンの曲をチェックしていたわけだ。そして前年に出た『WILL O’ THE WIEO(鬼火)』から、この隠れ名曲をチョイスした。
だがこの好作が、マーケットではスルーされた。作品の内容は、当時のグローヴァーや他のCTI/Kudu作品と比べても聴き劣りしない。となれば、結局はプロモーションの問題だったのだろう。残念ながらディスコに強かったTKも、ジャズ・シーンに打って出るノウハウは持っていなかったようだ。
近年のクラブ・ジャズ・ブームで70年頃のスピリチュアルな楽曲やアトランティック初期のジャズ・ファンク作品が注目され、若いジャズ・ファンに認知度が高まったロビン・ケニヤッタ。しかし、ジャズがポップスやロック、ソウルなどを巻き込んで進化していくプロセスを楽しんだ世代には、やはりこの時期の方が面白い。今まで彼に馴染みのなかったフュージョン世代が、これからケニヤッタをどう評価していくのか、ちょっと楽しみな自分である。~解説より
Robin Kenyatta - Alto and Soprano Saxophone
Arthur Jenkins - Keyboards
Richard Tee - Keyboards
Andy Newmark or John Sussewell - Drums
William Salter - Electric Bass
Keith Loving - Electric Guitar
Hugh McCracken - Electric Guitar
Ralph MacDonald - Percussion