
ベルギー王妃マリー・アンリエットの鶏卵古写真。
フランスの有名スタジオの写真
細部までよく写っており画質は良い。
マリア・ヘンリエッテ大公女は旧ハプスブルク領から独立したベルギーに、旧宗主国から嫁した人物で、ハプスブルク家のハンガリー副王家の出身。
長女ルイーズ王女はザクセン=コーブルク=ゴータ=コハーリ家という、ベルギー王家とは別のヴェッティン家の分家の当主と結婚した(ハンガリーのマグナート、コハーリ侯爵家の女子相続人とコーブルク家の公子が創始者の家系)。
次女シュテファニー王女はオーストリア皇太子妃、三女はナポレオン一族の当主夫人(その頃からナポレオンがタイトルとなっている)。
馬術の名手で活動的な人物だったらしいが、晩年は体調を崩し、後には公的な場面には三女が代わりに出ていた。
写真が撮影された頃のベルギーは苛烈な植民地支配で悪名高く、小国の新興国家であったものの王族は植民地からと思われるダイヤモンドを身に着けた写真も多く見られる。
元々レースの産地でもあり、美しいレース装飾のドレスや、カトリック国であるので、ダイヤモンドのクロス等の装飾品も多く見られ、またフランス語圏でもあり、そちらから来たものかデザイン性の高いドレスを身に纏っていることも多く、服飾品は見応えがあり興味深い。
レースと花飾りのボネを被っており、ヒダ飾りのフリルの付いたクリノリンドレスを着用しているものと見られる。
出品中の鶏卵写真だけを見ても、カルト・ド・ヴィジットの流行り出した1860年頃からの2〜30年の短い間に服装の様式が様変わりしていることが見て取れる。
アンティーク・ヴィンテージの紙物は傷や汚れ、微細な破れ、角折れ・折れも当たり前に存在します。
画像をよくご覧頂き、見えにくい箇所や気になる点があればご質問下さい。
お取引に当たっては必ず自己紹介をご覧頂き、何かありましたらご質問下さい。
★カルト・ド・ヴィジットとは
フランス語由来でカルト・ド・ヴィジットと呼ばれる、1800年代当時の王侯貴族が訪問時等に名刺代わりに使用した古写真。
手札判写真(手札版)、鶏卵写真とも呼ばれる。
1860年頃から芸能関係の有名人などを写した写真も含めてスタジオから既製品として売り出され、英国女王ヴィクトリアも含めて王侯貴族にも熱心な蒐集者がおり、イギリスのナショナル・ポートレート・ギャラリーには多くの王侯貴族のCDVやキャビネットカードと呼ばれるキャビネ判写真が収蔵されている。
こういった古写真は、男女共にヘアスタイル、被服、ジュエリー等のアクセサリー類の服装史の上でも興味深い。
フランス皇后ウジェニーは、ただの美人として歴史の上では特筆すべきものはないとされていることが多くあるが、ファッション界ではカルティエやオートクチュールの父と呼ばれるフレデリック・ワースを王侯貴族に紹介した人物として名高い当時のトレンドセッターである(但し一人息子の死後は全身黒付くめの喪服しか着用しなかった)。
王侯貴族は自国や嫁ぎ先、統治者として迎えられた国の髪型や服装にアクセサリーを纏って写真に収まることも多く、風俗史の上でも意義深い。
当時物でもスタジオの台紙に貼り付けられた正規品からややピントのボケた複製品の海賊版まで存在し、今日でも、当時(欧米では明治期からスクラップブッキングが盛ん)正規品の台紙から写真を剥がして個人のアルバムに貼り付けてあったものを剥がしたもの等がある。
鶏卵写真とは現像のプロセスに使用する原料から付けられた名称で、独特の質感を持つ。
銀塩写真はその後の製造になり、こちらは金属的な光沢を持ち、ポストカードに仕立てられたものが多い。