【基本情報|Release Information】
録音方式そのものが演奏の身体を変容させる──二つの記録法が交錯する音の実験体
レーベル:DAM
品番:DOR-0043
フォーマット:12" LP, 45RPM, Stereo
国:Japan
リリース年:1978年
タグ:Jazz-Funk, Post Bop, Japan, High Fidelity, Studio Work, Audio Experimentation
【構造と文脈|Structure & Context】
『PCM Vs Direct Summertime』は、第一家電の「マニアを追い越せ!大作戦」第10回記念として制作された録音物であり、録音方式の差異そのものを可聴化するという、極めて珍しい試みによって成立しています。A面はオーレックスPCMプロセッサー+U-maticによるデジタル録音(PCM)、B面はダイレクトカッティングという、異なるメディア哲学を一枚のLPに共存させた構成です。
演奏者は山本剛トリオ(川畑利文、岸田恵二)に加え、鈴木勲がピッコロベースで参加。スタジオは東芝EMI第1スタジオ。1978年9月11日に両方式の同時録音が行われ、16chアナログ76cm/secマスターも並行制作されています。録音技術はNEUMANN SAL-74, SX-74 cutting head, VMS-70 cutting latheを使用。これは録音という行為が「記録」以上の意味を持ち始めた瞬間を封じ込めた、制度設計としての録音物です。
PCM録音面では、ヒスノイズの消失と解像度の均質性がもたらす、冷ややかで制御された演奏空間が出現します。そこでは音の粒立ちが明晰すぎるほどに並び、山本のタッチは輪郭を剥かれたまま、メカニカルな均衡の上を滑ります。
一方、B面「Summertime」におけるダイレクトカッティングは、アドリブの緊張と失敗可能性の高まりが明確に表現されています。空気圧のような鈴木勲の低音、リバーブ未満の空間性、そして編集不可の即時性。それらはまるで、演奏が記録される以前にすでに「晒されている」という録音の透明な暴力性を顕在化させています。
この作品の本質は、片面では「何度でも録り直せる」安全圏、もう片面では「一発録りの断崖」にあり、演奏者の身体がどのように制度に反応し、記録されるかという知覚実験でもあります。演奏そのものよりも、演奏がどう録られたかが作品の主題となる。この構造においては、聴くことはすでに批評であり、制度の内部でしか成立しない感覚の一形態なのです。
【状態詳細|Condition Overview】
メディア:EX+/EX+(チリノイズほぼ無し、微細な擦れのみ)
ジャケット:VG+(縁擦れ、表面に若干の汚れあり)
付属品:インサート付属
【支払と配送|Payment & Shipping】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。