小鳥堂の全出品  :    小鳥堂の全出品              開巻のテンポはどこかハリウッド・コメディ風である。結婚式の順番も立て込んで慌ただしく教会を後にする花嫁はタクシーの中でドレスを脱ぎ、花婿はそれを貸衣裳に返す時間の念を押し両親に託し、バス停へ。漁村の花嫁の実家に挨拶に向かうのだが、彼女の父の反応はよろしくない。婿殿が新居をかまえる甲斐性なく、愛娘は義姉夫婦と舅姑との同居を余儀なくされるからだ。だが、戦後、住宅不足の続くローマでは、彼らのような若夫婦の稼ぎでまともな部屋に住むのは困難。しかも、夫ナターレはまだ義兄について壁職人の見習中で、三世帯同居は妻ルイザも覚悟の上だ。だが、家長である義兄の嫌味な言動と、実際、プライバシーの持ちようのない９人で２部屋の所帯に耐えかね、二人は家を飛び出した。大荷物を引いてあちこちさまようナターレ。妻は友人が住み込み家政婦をある屋敷になんとかして潜り込ませたが、自分は現場監督で夜露をしのぎ、通りがかりに見た、建てかけの仮設住宅に希望を見いだす。そこの主は屋根のないのを理由に、住居権を主張できず追い立てを喰っていたが、自分なら、朝、警官が巡回に来る前に一晩で家を建てることができる。仲間の力を借りれば簡単だ。早速、借財をしても材料をかき集め、夜半、作業に取りかかるが、手伝いは自分同様未熟工で案外はかどらない。刻々と夜明けは近づき、ルイザは黙って義兄に頭を下げに行き、助けを乞う。そして召集された熟練の職人たちの手で家は完成に向かうが、結局、巡回までに屋根はふき終わらなかった。しかし警官は、同情を買うために仲間がルイザに抱かせた赤ん坊にほだされて、これを見逃すのだった。若夫婦のリストゥッツィとパロッタは素人だというが、とてもそうは信じられないほどの好演。テーマは切実で共感しつつ観ることができる佳作である。     監督 #ヴィットリオ・デ・シーカ 原案 チェザーレ・ザヴァッティーニ 脚本 チェザーレ・ザヴァッティーニ 撮影 カルロ・モンテュオリ 音楽 アレッサンドロ・チコニーニ 出演 #ガブリエラ・パロッティ #ジョルジオ・リストゥッツィ ガストーネ・レンツェリ マリオ・ディ・ローロ ジュゼッペ・マルティーネ マリア・ピア・カジリオ      ☆HXW-S79-ISV        ※10000254