基本情報|Release Information
レーベル:Victor Musical Industries
品番:VIC-28166
フォーマット:LP, Stereo
国:Japan
リリース年:1984年
タグ:Modern, Choral, Japan, Toru Takemitsu, 1980s, Contemporary Classical
作品の解読|Decoding the Work
『混声合唱のためのうた』は、作曲家・武満徹による“歌”のアーカイヴであり、思想・社会・記憶をともなって発話される音のかたちを、合唱という媒体を通じて結晶化させた作品群である。演奏は東京混声合唱団、指揮は岩城宏之。1984年、石橋メモリアルホールにおけるデジタル録音。
A面冒頭の「小さな空」は、武満の音楽にしばしば流れる“記憶の空白”を象徴するような作品であり、簡素な和声と語りかけるような旋律が、沈黙を挟みながら響く。「小さな部屋で」や「〇と△の歌」は、1960年代という政治的熱量の只中で生まれた楽曲であり、反安保運動や映画『不良少年』といった同時代的コンテクストが音楽の構造に滲み出ている。これらは単なる“唱歌”ではなく、制度と対峙した音のかたちである。
詩人・谷川俊太郎によるテキスト(A4, A5, B5)も重要な位置を占めており、武満の音楽と言語への複雑な距離感を可視化する。とりわけ「死んだ男の残したものは」は、戦後詩としての重さと、武満の非劇的な音設計が交錯する場であり、演奏者の呼吸と沈黙の間に、聴く者自身の倫理が立ち上がってくる。
最後の「さくら」は、日本古謡をベースにした編曲だが、その静謐さは郷愁ではなく、“失われてしまった音風景”の再構築として響く。武満が生涯を通じて追い求めた“耳の奥の風景”が、ここではひとつの終止形として現れている。
帯とインサートを含む完品仕様、ミツマサ・アンノによるジャケット・アートも含めて、本作は合唱という形式における武満徹の実験と祈りを体感できる稀有な一枚。
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