
新潮新書「 武士の家計簿 -加賀藩御算用者の幕末維新- 」磯田 道史
国史研究史上、初めての発見!「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が完全な姿で遺されていた。タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、江戸時代史や日本近代史の見直しを余儀なくされる驚きの連続。気鋭の研究者による意欲作。
(目次)
はしがき 「金沢藩士猪山家文書」の発見
第一章 加賀百万石の算盤係
わかっていない武士の暮らし/「会計のプロ」猪山家/加賀藩御算用者の系譜/算術から
くずれた身分制度/御算用者としての猪山家/六代 猪山左内綏之/七代 猪山金蔵信之
/赤門を建てて領地を賜る/江戸時代の武士にとって領地とは/なぜ明治維新は武士の領
主権を廃止できたか/姫君様のソロバン役
第二章 猪山家の経済状態
江戸時代の武士の給禄制度/猪山家の年収/現在の価値になおすと/借金暮らし/借金整
理の開始/評価された「不退転の決意」/百姓の年貢はどこに消えたか/衣服に金がつか
えない/武士の身分費用/親戚づきあいに金がかかるわけ/寺へのお布施は一八万円?/
家来と下女の人件費/直之のお小遣いは?/給料日の女たち/家計の構造/収入・支出の
季節性/絵にかいた鯛
第三章 武士の子ども時代
猪山成之の誕生/武家の嫁は嫁ぎ先で子を産むのか?/武家の出産/成育儀礼の連続/百
姓は袴を着用できなかった/満七歳で手習い/満八歳で天然痘に感染/武士は何歳から刀
をさしたのか
第四章 葬儀、結婚、そして幕末の動乱へ
莫大な葬儀費用/いとこ結婚/出世する猪山家/姫君のソロバン役から兵站事務へ/徹夜
の炊き出し/大村益次郎と軍務官出仕
第五章 文明開化のなかの「士族」
「家族書簡」が語る維新の荒波/ドジョウを焼く士族/廻船問屋に嫁ぐ武家娘/士族のそ
の後/興隆する者、没落する者
第六章 猪山家の経済的選択
なぜ士族は地主化しなかったか/官僚軍人という選択/鉄道開業と家禄の廃止/孫の教育
に生きる武士/太陽暦の混乱/天皇・旧藩主への意識/家禄奉還の論理/子供を教育して
海軍へ/その後の猪山家
あとがき 参考文献リスト