1984年にアーティスト自身のレーベルからリリースされた、完全無欠の自主制作AORアルバム!ルイジアナ州出身のギターリスト兼ボーカリスト、ランディ・ヘバートのセカンド・アルバムがこれです。全8曲、全てがAORファンにはどストライクのシティ・ポップ・チューン。いわゆるメロウ・フォーク系と違って、カチッとした演奏力が必要なAORはメジャー制作のイメージが強く、プライベート・プレスにはなじまない気がしていましたが、本作はそんな予想を見事に打ち破ってくれます。フォーク調でも打ち込み調でもない、本格的なAORサウンドが、たった一人の音楽家の手によって作られてしまったのです。実際のクレジットは、”All Instruments By”と表記されているだけなので、彼が何を演奏しているかは耳で判断するしかありません。ギター、ベース、キーボード、それにドラム・プログラミングと言ったところでしょうか。しかし、1曲目のタイトル・トラックを聴いていただければお判りの通り、とても一人で歌って演奏しているとは思えないクオリティです。元々ジャズ~フュージョン畑の音楽家で、デビュー作はフュージョン色が強いアルバムだったことを考えると納得の演奏力かもしれません。しかもダンス・チューン中心の編成で、バラードと呼べるのは、7曲目のミディアム・バラード「Friends Or Lovers」だけでしょう。また本職ではない歌声のほうも、都会的なサウンドにぴったりとフィットしたマイルドな味わいで◎。ありそうでなかなか無かった、AORファンの痒い所に手が届く一枚といえそうです。