素材には国産ヨシキリザメ（ブルーシャーク）を使用しています。大きめの部位を用いることで模様に偏りがなく、全体に均整のとれた表情に仕上がっています。サメ革は養殖ができず、扱える職人も限られるため希少性がありますが、最大の魅力はその強さです。かつて武士の鎧兜にも使われたほど耐久性と耐水性に優れており、財布として手にしたときにも堅牢さがしっかりと伝わります。 色味は濃紺の原皮を黒に染め上げたもので、使いはじめは落ち着いたマットな印象です。年月とともに光沢と艶に深みが増し、約3年ほどで紺を帯びた独特の黒へと変化していきます。内装には無染色の生成りのヌメ革を使用しており、こちらは自然にアメ色へと変わり、繊維が締まることで柔軟性と強度が増していきます。黒光りするサメ革と、飴色に育った生成り革のコントラストは年月とともに魅力を増していきます。 収納は大きく開く構造で、お札やカードを一目で確認できます。小銭入れは片マチ仕様で指がしっかり入り、コインの取り出しもスムーズです。カードは一般的な財布より余裕を持って収められ、整理しながら多くを持ち歩けます。断面は職人が一つひとつ丁寧に磨き上げており、光沢が出るまで仕上げることで美しさと強度の両方を備えています。 ファスナーにはステンレス製のYKK5番を採用。耐久性と耐水性に優れ、開閉も滑らかです。引き手には厚みのあるサメ革を合わせ、全体の無骨な印象を引き締めています。 使うほどに深みを増すサメ革ならではの存在感を味わえる財布です。 田中革具