「浦子時乗亀背去
仙踏誰是咎其非
今朝来訪臨川寺
竿影依然坐釣磯」
題臨川寺壁 鐵舟居士
読み下しますと、
浦子(うらこ)は、かつて亀の背に乗りた時
仙境に去(いざ)れり、誰か是を咎(とが)めて其の非とするは
今朝臨川寺を訪ね来れば
竿影(かんえい)は依然として釣磯(ちょうき)に坐す
意味は、
浦島太郎は、昔、亀の背に乗って竜宮(仙境)へ行った。
それを非難する者がいたとしても、それが本当に悪いことだろうか。
今朝、臨川寺(りんせんじ)を訪ねてみると、
釣竿の影は今もなお、あの釣りをしていた磯に変わらず寄り添っていた。
となります。
私は今までおそらく1万幅を超える鉄舟の作品を見てきましたが浦島の作品は唯一、この一点のみです。つまり、極めて希少な作品といえます。
この作品の落款の上部に書かれた「題臨川寺壁」という言葉は、実際に鉄舟さんが臨川寺を訪ねて壁面に書いてあった上記の詩を帳面に書き写してきたのではないでしょうか。
また、臨川寺は臨済宗妙心寺派の寺院ですので、そこで鉄舟さんが坐禅を組まれた可能性は極めて高いと思われます。
そして、当時のご住職と浦島伝説のお話しなどされたのではないかと想像すると何だかワクワクしてしまいますね。
それでは、この臨川寺とはどんなお寺なのでしょうか。
そこは長野県の木曽川源流の峡谷に側したお寺で、木曽川の両端は奇岩が連なっており、お寺からは寝覚の床(ねざめのとこ)という岩を見る事ができ絶景の眺めです。その岩こそが浦島太郎が玉手箱を開けた場所だという言い伝えになっているのです。
また、浦島は竜宮城から帰った後、諸国漫遊の旅に出て、ここに辿り着き、しばらく落ち着いて過ごしていたようで、今では「腰掛け岩」という名前の付いた岩があり、その岩でよく釣りをしていたという言い伝えになっています。
江戸初期に沢庵和尚が旅した時の日記の中に浦島太郎が釣りをするのに腰かけた岩がここであるという文献が、なんと残っております。
さて、今でもこの臨川寺の壁に鉄舟さんが写したこの詩が存在するのかという興味が湧いてきますが、残念ながらその答えはNO,です。
実は私はこの臨川寺のご住職の見浦洞宗さんに直接のお尋ねした事がございます。
洞宗さんは、現在の寺院は昭和45年に建て替えた為、壁には何も書かれいないという事と、その前、もしくはその前の前に建っていたお寺にその様な文言が書かれていた事は聞いた事が無く、私がお尋ねした時に初めて知ったと仰られていました。当のご住職がご存じ無いという事は、歴史的にもこの書は大変な価値があるのかもしれませんね。
私は浦島太郎はただのおとぎ話だとたかをくくっておりましたが、ご住職は浦島太郎の物語りをお信じになられていると仰っていました。
その理由はご住職のお名前は「見浦」という苗字で三浦ではなく見浦さんなのです。まさに浦島を見たという、そのままのご先祖の苗字があるというのが、何らかの根拠がある証拠ではないかと仰っていました。
この鉄舟さんの書の始めの字の「浦子」ですが、江戸時代は現代のように「浦島太郎」とは呼ばず「浦子」(うらこ)、もしくは「浦島子」(うらしまこ)と呼ぶのが一般的だったようです。
こちらの作品の状態ですが、表具は時代なり、最上部に裏側からの簡易補習跡がございます。本紙は全体にヤケ、折れがございます。
鉄舟大悟直後の45歳秋に揮毫された書です。
こちらには特別に新品の保存箱(タトー箱付き)をお付けいたします。
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勿論、悪意は無いのでしょうが、鉄舟さんの書の事を全く理解しておらず、巧妙につくられた印が一致していると勘違いして(それも良く見ればわかるのですが)、それだけを頼りにこれは本物だという勘違いでご出品なさっているのだと思います。
当方の出品物では贋作は100%ございませんので、安心してご入札なさってください。
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