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モーマス1997年発表のアルバムです。

もう10作近く出しているのに、ここではまた新たなサウンドへと軽やかに変化しています。前作までは、内省的でセンチメンタルなサウンドとアイロニカル溢れる歌詞が、全体のイメージを作っていましたが、このアルバムでは、突如あっけらかんとして、どこかとぼけたような明るいテクノポップに早変わりしています。

また日本に強く接近し始めたのも、このアルバムの特徴です。これまでも「1999年の夏休み」という金子修介監督の映画にインスパイアされて、制作された曲はありましたが、そこでのアプローチはあくまでも映画の世界観を音に映しだしたような作風で、日本そのものに言及した曲ではありませんでした。

しかし今作では、カヒミ・カリィとの仕事で日本に来る機会が増えたためなのか、日本の文化そのものに対する愛着とも皮肉ともとれる歌を歌っています。

それはM9の「アンセム・オブ・シブヤ」とM11「タマゴッチ・プレス・オフィサー」に顕著で、前者では渋谷という街のオシャレで独創的で奇妙な文化（チョベリグ・チョベリバなんて流行語も歌ってます、今となっては死語）を、

後者では、やはりこの当時、大流行だった玩具"たまごっち"について、たまごっち側の視点に立ち、忙しすぎると歌っています。

これまでのアルバムに比べて、圧倒的にあっけらかんとした軽さが出てきたこのアルバムですが、だからといって、作品の質は全く落ちていないと思います。明るく振舞ってはいるものの、ここには激しく倒錯した感覚があり、内にはダークなものが潜んでいます。ある種の開き直りというか、諦観というか、世界に対してシリアスに関わっていくよりも、せめて楽しみながらやっていこうとする発想の転換がこのアルバムからは感じられるのです。

試聴のみ。大変綺麗な状態です。

邦盤。歌詞、対訳、解説、帯付き。

サンプル。