代表的な画集には、『ひだまり』『こもれび』『はつ恋』『夢語り』などがあり、繊細なタッチと柔らかな色使いで観る者の心を惹きつけます。その他、CDジャケットやテレビドラマのタイトルバック画、広告イラストなど幅広い分野で活躍。個展では多くの観客を集め続けています。

太田慶文「別れの日」水彩 カラーインク 6号大 1996年作 1998横浜三越原画展出品作 証明書付
「別れの日」（1996年制作）は、北海道出身の画家・太田慶文が水彩の繊細な表現によって描き出した抒情的な一枚です。淡い桃色と橙色が溶け合う背景の中で、少女は静かに振り返り、その瞳には言葉にできない想いが込められています。涙を見せることはなくとも、視線の奥には別れの切なさや心の余韻が漂い、観る者に静かな感動を与えます。

背景の柔らかな色彩は、まるで夕暮れや朝焼けの空のように移ろいゆく時間を思わせ、別れの場面をただ悲しみとしてではなく、優しさや希望を含んだ詩情へと昇華しています。そこには、太田慶文が長年追い求めてきた「少女の無垢さと心の奥行き」を映し出すまなざしが込められています。太田は『ひだまり』『こもれび』『はつ恋』『夢語り』といった画集で知られ、サンリオ美術賞などを受賞した実績を持つ画家です。その代表的な作風である柔らかな筆致と透明感のある色使いが、この作品でも存分に発揮されており、観る者の心に懐かしい記憶や優しい感情を呼び覚まします。