F4107 ウリキリ!おじと妻との馴れ初めが… 氷清玉潔の十字架 天然ダイヤモンド0.50ct 最高級Pt900無垢TP 1.60G 15.85x12.57mm

F4107 ウリキリ!おじと妻との馴れ初めが… 氷清玉潔の十字架 天然ダイヤモンド0.50ct 最高級Pt900無垢TP 1.60G 15.85x12.57mm 收藏

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今回のターンで売り切ります〜

以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです~~

F4107 氷清玉潔の十字架 天然ダイヤモンド0.50ct Pt900無垢ペンダント 相反の輝きを宿す魂の器

序章:梅雨の客

鎌倉の谷戸(やと)の奥深く、苔むした石段を登りきったところに、その男の住処兼工房はある。表札などという野暮なものはない。ただ、煤けて歪んだ門柱の横に、これまた歪んだ信楽の壺が無造作に置かれ、季節の花が投げ入れられているだけだ。その壺こそが、陶芸家であり、美食家であり、そして何よりも稀代の偏屈家として知られる釜戸山魯山(かまどやま ろざん)の在処を示す唯一の印であった。
今日は朝から雨が降っていた。紫陽花の青や紫が、湿った空気の中で飽和した絵の具のように滲んでいる。魯山は、ろくろを回すでもなく、筆を執るでもなく、縁側でただ雨を眺めていた。安物の煎茶を、自作の、どこか満ち足りぬ顔をした井戸茶碗で啜る。茶碗の枇杷色の肌を、雨粒が伝っていく。
「ふん、つまらん雨だ。万物を腐らせるだけの、陰気な水滴よ」
独りごちたその時、門の方で微かな気配がした。続いて、ためらいがちな足音が石畳を濡らす。魯山は眉一つ動かさない。用のない客など、この世には存在しないのだから。
やがて、障子の向こうに人影が立った。
「……ごめんください。釜戸山先生でいらっしゃいますか」
若く、澄んだ、しかし芯に憂いを帯びた女の声だった。
「先生などという人間はここにはおらん。いるのは、土くれをこねて飯を食う、ただの爺いだ。何の用だ」
魯山は、視線を庭から動かさずに応じた。声には、梅雨の湿気を追い払うような、乾いた厳しさがあった。
「……あの、わたくし、白石沙織と申します。雑誌で先生の記事を拝見し、どうしてもお話を伺いたく……」
「記事だと? くだらん。記者が勝手に書き散らした妄言だろう。俺は忙しい。帰れ」
ぴしゃりと言い放つ。普通の人間ならば、これで引き下がる。しかし、女は動かなかった。沈黙が、雨音に混じって濃密になる。
「……どうしても、なんです。先生の器に盛られたお料理の写真を見て……その器が、あまりにも……あまりにも、ちぐはぐで、喧嘩をしているようで……それなのに、どうしようもなく惹きつけられたのです。私の、今の心のように……」
ちぐはぐ、喧嘩。その言葉に、魯山の眉がぴくりと動いた。
「……入れ」
短く、それだけを告げた。
障子が静かに開けられ、品の良いワンピースに身を包んだ若い女、沙織が姿を現した。年は二十代半ばだろうか。整った顔立ちには知性が窺えるが、その瞳は深く曇り、まるで出口のない迷路を彷徨っているかのようだった。
「そこに座れ」
魯山が顎で示したのは、使い込まれて黒光りする欅の一枚板の座卓の前だった。沙織は緊張した面持ちで正座する。魯山は新しい茶碗を取り出すと、無言で茶を淹れてやった。それは、意図的に口縁を欠き、金継ぎで補修した唐津の茶碗だった。完全なものよりも、傷を負い、それを乗り越えたものにこそ宿る美しさがそこにはあった。
「で、話とは何だ。ちぐはぐな器に己の心を重ねるような女が、いったい何の用で俺の時間を奪いに来た」
沙織は、差し出された茶碗を両手で包み込むように持つと、一度深く息を吸った。
「わたくし、来月、結婚いたします」
「ほう。めでたいことではないか。何を浮かぬ顔をしておる」
「相手は……誰もが、素晴らしい人だと言います。優しくて、知的で、誠実で……私との相性も、占いでも、友人たちの見立てでも、完璧だと」
「結構なことだ。ならば、さっさと祝言を挙げて、子でも産んで、平凡に暮らせばよかろう」
「……それが、怖いのです」
「怖い?」
「はい。完璧すぎて……あまりにも、相性が良すぎて……何もかもが順調で、一度も喧嘩をしたことがありません。価値観も、金銭感覚も、笑うところも、泣くところも、ほとんど同じなんです。それが……息苦しいのです。このまま、波一つ立たない水面のような人生を、彼と歩んでいくのかと思うと……まるで、生きたまま墓に入るような心地がして……」
沙織の瞳から、堪えていた涙が一筋、白い頬を伝った。
魯山は、ふん、と鼻を鳴らした。その顔には、嘲りとも、憐れみともつかない、複雑な表情が浮かんでいた。
「愚かな女だ。世の女どもが喉から手が出るほど欲しがるものを手にしながら、墓に入る心地だと? ……贅沢な悩みだな」
彼は立ち上がると、書斎として使っている奥の部屋へ向かった。そして、桐の小箱を一つ、無造作に持って戻ってきた。
「だが、お前の言うことも、分からんでもない」
魯山は座卓の上に小箱を置くと、ゆっくりと蓋を開けた。中には、紫色の縮緬の布に包まれた、小さな輝きがあった。彼はそれを指でつまみ上げると、欅の板の上に、ことり、と置いた。
それは、プラチナでできた、小さな十字架のペンダントだった。
F4107。それが、この小さな工芸品に与えられた無機質な管理番号だ。だが、魯山の眼には、そこに宇宙が見えた。
「これを見ろ」
沙織は涙を拭い、目の前の十字架に視線を落とした。縦に六石、横に四石、合わせて十粒の天然ダイヤモンドが、鈍い光を放つプラチナの台座に埋め込まれている。派手さはない。だが、静謐な輝きが、見る者の心を捉えて離さなかった。特に、そのダイヤモンドの質感が、完璧に澄み切っているわけではなく、どこか、冬の朝に見る氷砂糖の粒のような、微かな白濁りと内部の揺らぎを含んでいるように見えた。それがかえって、温かみと生命感を与えている。
「美しい……」
「美しい、か。そうだろうな。だが、お前は何も見えておらん」
「え……?」
「これはな、沙織とやら。この世で最も美しい『不協和音』の塊なのだよ」
魯山は、人差し指の先で、そっと十字架に触れた。
「そして、お前が今抱えている悩みの答えが、この小さな十字架の中に全て詰まっている」
雨は、まだ降り続いていた。

第一章:相性という幻想

「不協和音、でございますか……?」
沙織は、魯山の言葉の意味を測りかねて、戸惑いの表情を浮かべた。目の前の十字架は、どこからどう見ても、調和の取れた美しい宝飾品にしか見えない。
「そうだ。不協和音だ。いいか、よく聞け。世間の馬鹿どもは、皆、勘違いしておる」
魯山は、自らの茶碗に残っていたぬるい茶をぐいと飲み干すと、威圧するような鋭い眼光で沙織を見据えた。
「結婚相手、つまり配偶者というものはな、自分と一番『相性』の良い人間を選ぶものだと思い込んでいる。笑わせるな。そんなものは、ただの怠慢であり、己の魂を磨くことから逃げているだけの臆病者の発想だ」
「……!」
沙織は息を呑んだ。魯山の言葉は、彼女がこれまで信じてきた価値観の根幹を、まるで巨大な槌で打ち砕くかのように響いた。
「道理を言えばな、人間というものは、自分と一番『相性の悪い』人間と添い遂げるべきなのだ。それこそが、この世に生まれてきた意味であり、課せられた修行なのだからな」
「相性の……悪い人と……? ですが、それでは毎日が喧嘩で、辛いだけではありませんか」
「当たり前だ。辛いに決まっている。腹立たしいことばかりだろう。価値観はことごとくすれ違い、一挙手一投足が癇に障る。相手の存在そのものが、やすりで魂を削り取られるような苦痛を伴うかもしれん。だがな、沙織とやら。それこそが『生きる』ということなのだ。それこそが、人間を成長させる唯一無二の砥石なのだ」
魯山は、再び十字架に目を落とした。
「この十字架を見ろ。素材は何だか分かるか」
「……プラチナと、ダイヤモンド、ですわね」
「そうだ。白金と金剛石。片や、粘り強く、融点は1768度にもなる貴金属。熱にも酸にも強く、決して錆びることはない。王水でしか溶かすことのできない、安定の象徴だ。片や、炭素原子が極めて硬く結合しただけの、ただの炭の同素体。地球上で最も硬い物質だが、燃えれば二酸化炭素となって消えてなくなる。美しく輝くが、その本質は儚い。性質が全く違う。水と油だ。相性など、あるわけがない」
彼は、指先でダイヤモンドの表面をなぞる。
「だが、どうだ。職人の手によって、この相性最悪の二つが組み合わされ、一つの形を成している。プラチナという『器』が、その粘り強さで、硬いが脆いダイヤモンドをしっかりと抱きしめている。ダイヤモンドは、その輝きによって、地味なプラチナに華やかさと意味を与えている。互いに全く違う性質を持つからこそ、補い合い、支え合い、一つの、揺るぎない美を創造しているのだ。これが『氷清玉潔(ひょうせいぎょっけつ)』の境地だ。氷のように清く、玉のように潔い。それは、元から同じ性質のものが集まって生まれるのではない。全く異なるものが、互いを認め、高め合うことでしか到達できん高みなのだ」
魯山の言葉は、もはや単なる宝飾品の説明ではなかった。それは、万物の成り立ち、人間関係の真理を説く、一種の説法のように沙織の心に染み込んでいった。
「お前と、その相性抜群の婚約者とやらは、いわばプラチナとプラチナ、ダイヤモンドとダイヤモンドの組み合わせだ。似た者同士、楽しかろう。居心地も良かろう。だがな、そこには何の化学変化も起きん。何の成長もない。ただ、時と共に摩耗し、輝きを失っていくだけだ。それは『共存』ではあっても、『共生』ではない。ただ傷を舐め合っているだけの、安易な馴れ合いに過ぎん」
「馴れ合い……」
沙織の唇から、か細い声が漏れた。その言葉は、彼女が心の奥底で感じていた不安の正体を、的確に言い当てていた。
「そうだ。相性の良さなどというものは、所詮、幻想だ。人間は皆、生まれも育ちも違う、全く別の個体だ。完璧に分かり合えることなど、金輪際ありえん。そのどうしようもない断絶を、埋めようともがき、苦しみ、時には憎しみ合い、それでもなお、相手から何かを学び取ろうとすることこそが、夫婦という名の『修行』なのだ。陶芸とて同じことだ。性質の違う土を練り合わせ、炎という試練にかけるからこそ、予期せぬ窯変(ようへん)が生まれ、唯一無二の景色を持つ器が生まれる。同じ土ばかりでは、面白くも何ともない、ただの量産品しかできん」
魯山は立ち上がると、工房の片隅に置かれた、ひときわ大きな壺を指差した。
「あれは、俺が若い頃に焼いたものだ。信楽の土と、備前の土、そして唐津の土を無理矢理練り合わせて焼いた。当然、収縮率が違うから、焼いている途中でほとんどが割れて砕け散った。だが、奇跡的に生き残ったのが、あれだ。あちこちに亀裂が走り、歪んでいる。だが、どの土も、己の性質を主張しながら、隣り合う違う土とせめぎ合い、溶け合おうとしている。その緊張感こそが、あれに生命を与えているのだ。俺の最高傑作の一つだと自負しておる」
沙織は、その壺に目を奪われた。確かに、完璧な形ではない。しかし、そこには言いようのないエネルギーが渦巻いていた。まるで、激しい夫婦喧喧の果てに訪れた、束の間の静寂のような、凄みのある美しさがあった。
「相性の悪さとは、つまり、可能性なのだ。自分にはないものを持っているということの証なのだからな。それを恐れてどうする。むしろ、喜ぶべきことなのだ。ああ、この男(おんな)となら、一生退屈せずに済む。一生、学び続けられる。一生、飽きることのない喧嘩ができる、と」
魯山は、再び座卓に戻ると、十字架を手に取った。
「この十字架には、ダイヤモンドが縦に六つ、横に四つ、合わせて十粒ある。なぜだか分かるか?」
沙織は静かに首を振る。
「『十』という漢字を見ろ。十字そのものだ。一本の縦の線と、一本の横の線。本来なら交わることなく、それぞれの道をいくはずだった二つの運命が、一点で交差し、ぶつかり合っている姿だ。これこそが、夫婦というものの真の形だ。そして、『十』という数字は、『満ちる』『完全』を意味する。『十人十色』という言葉もある。人は皆違うのだ。違うからこそ、二人が交わることで、初めて世界は『十全十美』、つまり完璧なものへと近づくのだ。最初から完璧なのではない。二つの不完全なものが、ぶつかり合う痛みと熱によって、完全を目指す。その壮絶な道のりが、この十字架には込められている」
魯山は、十字架の裏側を沙織に見せた。そこには、くっきりと刻印が打たれている。
「Pt900。プラチナが90パーセント、残りの10パーセントは、強度を増すためのパラジウムなどの割り金だ。純粋なだけでは、この十粒の宝石を支えきれんのだ。異物を受け入れ、混じり合うことで、初めて強さを得る。そして、0.50ctというダイヤモンドの総カラット数。これを、0.5の人間と0.5の人間が寄り添って1になる、などという陳腐な解釈をするな。そうではない。1という完全な個人と、もう一人の1という完全な個人が、互いに己を半分削り、相手の領域を受け入れる覚悟を示す数字なのだ。己の半分を差し出す痛み。それこそが、愛の始まりなのだ」
沙織は、もはや言葉を発することができなかった。ただ、目の前の小さな十字架が、宇宙の真理を凝縮した巨大なモニュメントのように見えていた。
「どうだ。まだ、相性の良い男との、波一つない退屈な人生を選ぶか?」
魯山の問いに、沙織は答えることができない。彼女の心は、今、激しい嵐に見舞われていた。だが、それは絶望の嵐ではなかった。むしろ、新しい世界が開けていくような、目映いばかりの光を伴う、希望の嵐だった。
「……先生の、奥様は……どのような方だったのですか?」
沙織は、絞り出すように尋ねた。魯山が語るその壮絶な夫婦観は、机上の空論ではない。彼自身が、その道を歩んできた者の言葉の重みがあった。
魯山は、一瞬、遠い目をした。その瞳の奥に、誰かの面影が揺らめいたのを、沙織は見逃さなかった。
「……俺の、かみさんか」
彼は、ふっと息を吐くと、まるで遠い昔の物語を語るかのように、静かに口を開いた。
「あいつほど、俺と相性の悪い女は、この世のどこを探してもいなかっただろうな」

第二章:椿と猛――相性最悪の出会い

魯山の回想は、四十年前の春に遡る。
当時の魯山は、まだ釜戸山魯山などという大層な名前を名乗ってはおらず、本名の釜戸猛(かまど たけし)として、京都の五条坂にある窯元に住み込みで働いていた。才能には自信があった。誰よりも土を知り、炎を読めるという自負があった。だが、その性格は今以上に狷介で、師匠や兄弟子と衝突してばかりいた。彼の作る器は、荒々しく、力強く、そして使い手のことを一切考えていなかった。
「こんな歪んだ茶碗で、客が満足に茶を飲めるか!」
「美の本質が分からん奴に、俺の器の価値は分からん!」
そんな日々だった。金はなく、あるのは有り余る時間と、満たされぬ創作意欲だけ。唯一の楽しみは、稼いだわずかな金で、京の市場の隅にあるような安食堂で、うまいもんを食らうことだった。
椿との出会いは、そんな食堂の一つだった。
椿は、その食堂の主人の一人娘だった。魯山が初めて店を訪れた日、彼女はカウンターの奥で、黙々と大根の桂剥きをしていた。その姿が、魯山の目に焼き付いた。無駄のない、流れるような手つき。薄く、向こうが透けて見えるほどに剥かれていく大根の皮は、まるで絹の反物のようだった。その所作の一つ一つに、研ぎ澄まされた美意識と、揺るぎない集中力が満ちていた。
だが、魯山が感心したのはそこまでだった。
「親父、この鯖の塩焼き、焼きすぎだ。身の脂が全部落ちて、パサパサじゃないか。もっとこう、皮はパリッと、身はふっくらと、中心はほんのり赤いぐらいが至高だろうが」
いつものように、魯山は文句をつけた。店主の親父は「へいへい、すいやせん」と頭を掻くばかり。そんな魯山を、カウンターの奥から冷たい視線が射抜いた。椿だった。
「お客さん。うちの焼き方は、これなんです。それがお気に召さないのなら、どうぞ、他のお店へ行ってください」
凛とした、しかし氷のように冷たい声だった。魯山は、カチンときた。
「何だと、小娘! 料理の道も知らんくせに、偉そうな口をきくな!」
「料理の道は存じません。ですが、父が心を込めて焼いた魚を、不味いと罵られるのは我慢なりません。あなたは、この魚がどんな海で育ち、どんな漁師さんの手で獲られ、どんな思いでこの店に運ばれてきたか、ご存知なのですか」
「知るか、そんなこと! 俺は客だ! うまいか、まずいか、それだけが問題だ!」
「ならば、あなたは一生、物の表面しか見られない、可哀想な方なのですね」
椿はそう言い放つと、再び桂剥きに集中した。魯山は、生まれて初めて、女にここまでこき下ろされ、言葉を失った。腹の底から怒りが煮えくり返るのと同時に、奇妙な感動が湧き上がってきた。この女、俺と同じだ、と。己の信じる美学、己の信じる正義のためなら、誰であろうと、たとえ客であろうと、一歩も引かない。その頑固さ、その潔さ。
その日から、魯山は毎日その食堂に通い詰めた。そして、毎日、椿と口論を繰り広げた。
「今日の糠漬けは塩が足りん!」
「あなたは味の濃いものばかりお好みだから、そう感じるだけです。素材の味を殺してどうするのですか」
「この盛り付けはなってない! 器の余白というものを知らんのか!」
「これは食べるためのお皿です。飾っておくための骨董品ではございません」
「お前のその着物の柄、悪趣味だぞ! 花と鳥が喧嘩しておるわ!」
「あなたに私の着物の良し悪しを言われる筋合いはございません。それより、その泥だらけの作業着で食事に来るのはおやめなさい。他のお客様のご迷惑です」
まさに、水と油。北極と南極。ありとあらゆる点で、二人の価値観は正反対だった。魯山は豪放磊落、美のためなら金に糸目をつけない浪費家。椿は質実剛健、一円たりとも無駄を許さない倹約家。魯山は時間にルーズで、気分が乗らなければ平気で約束をすっぽかす。椿は時間に厳格で、一分一秒の遅れも許さない。
周りは皆、呆れていた。「なんであんな男と」「なんであんな女と」と。だが、二人は喧嘩をすればするほど、互いの存在を無視できなくなっていった。相手の言葉は、常に自分の最も痛いところを突いてくる。それは不快で、腹立たしい。しかし、同時に、自分一人では決して気づくことのできなかった、己の欠点や盲点を、容赦なく白日の下に晒してくれる鏡でもあった。
魯山は、椿の「用の美」という哲学から、自分の作る器がいかに独りよがりであったかを学んだ。使い手のことを考え、生活に寄り添ってこそ、器は真の命を得るのだと。
椿は、魯山の「絶対的な美」への渇望から、日々の暮らしの中にこそ、妥協してはならない美意識が存在することを学んだ。ただ安い、ただ便利というだけではない、心を豊かにする選択があるのだと。
ある夜、またしても激しい口論の末、店を飛び出した魯山を、椿が追いかけてきた。
「待ちなさい!」
「うるさい! もうお前の顔も見たくない!」
「これを!」
椿が魯山の手に押し付けたのは、小さな布の包みだった。中には、完璧な塩加減で握られた、二つの塩むすびが入っていた。まだ、ほんのりと温かい。
「……なんだ、これは」
「あなたが一日、何も食べていないのを知っています。これを食べて、明日も元気に喧嘩しに来なさい」
そう言うと、椿はくるりと背を向けて店に戻っていった。その背中を見送りながら、魯山は、温かい塩むすびを頬張った。米の甘みと、絶妙な塩加減が、荒んだ心にじんわりと染み渡る。涙が、こぼれた。
こいつだ。俺が生涯をかけて喧嘩すべき相手は、こいつしかいない。
その足で窯元に戻った魯山は、徹夜で一つの茶碗を焼き上げた。それは、彼が初めて、特定の誰かのために作った器だった。不格好で、歪んでいる。しかし、その手触りは驚くほど優しく、椿の小さな手にしっくりと馴染むように作られていた。
翌日、魯山はその茶碗を持って、食堂へ向かった。そして、カウンターに立つ椿の前に、それを差し出した。
「……結婚してくれ」
「……」
椿は、無言で茶碗を受け取ると、じっと見つめた。そして、ふっと、初めて穏やかな笑みを浮かべた。
「ずいぶんと、不細工な茶碗ですこと」
「うるさい」
「でも……とても、温かい」
椿は、その茶碗にそっと自分の唇を寄せた。
「いいでしょう。あなたという、最も面倒で、最も扱いにくく、最も相性の悪い土を、生涯かけてこねて差し上げます。覚悟なさい」
こうして、釜戸猛と、後に椿と呼ばれることになる女の、壮絶な「修行」としての結婚生活が始まった。それは、世間が言うような甘い新婚生活とは、およそかけ離れたものだった。

第三章:切磋琢磨という名の闘争

魯山と椿の結婚生活は、案の定、戦場そのものだった。
新居として借りた小さな町家は、二人の価値観の衝突を象徴する空間となった。魯山が工房から持ち込んだ、歪だが美しい花器や皿が無造作に置かれる横で、椿はきっちりと揃えられた安価な量産品の食器を並べた。
「なんだ、この無味乾燥な器は! こんなもので飯を食ったら、味が半分になるわ!」
「何をおっしゃいます。食器は毎日使うもの。丈夫で、洗いやすく、数が揃っているのが一番です。あなたのような高価な骨董品、怖くて使えません」
「椿! なぜ俺のスケッチの上に、大根の葉を干しておくんだ!」
「紙がそこにあったからです。それに、大根の葉は栄養満点なんですよ。捨てるところなどありません」
「お前の作る味噌汁は、いつも味が薄い!」
「あなたの舌が、化学調味料に毒されているだけです。出汁の繊細なうまみが分からないなんて、可哀想な方」
朝から晩まで、こんな調子だ。金銭感覚の違いは、最も深刻な火種だった。魯山は、良い素材や美しい器を見つけると、後先考えずに有り金すべてをはたいてしまう。一方、椿は一銭単位で家計簿をつけ、徹底した節約を信条としていた。
魯山が、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、古美術商から高価な李朝の白磁を手に入れてきた日には、家が揺れるほどの大喧嘩が勃発した。
「あなたという人は! この壺一つで、私たちが何か月暮らせると思っているんですか! ただのガラクタに、こんな大金を!」
「ガラクタだと!? 馬鹿者! この肌の温かさ、この形の気高さが分からんのか! これは美の結晶だぞ! お前の百円の皿を千枚集めたところで、この壺の小指の先にも及ばんわ!」
「美だかなんだか知りませんが、美ではお腹は膨れません! 今すぐ叩き割って、その店に突き返してきなさい!」
「できるものならやってみろ! この壺に指一本でも触れたら、お前を叩き出す!」
二人は、白磁の壺を挟んで、何時間も睨み合った。結局、その日はどちらも一歩も引かず、口もきかずに背を向けて眠った。
しかし、翌朝。魯山が工房でうんうん唸っていると、椿が静にお茶を淹れて持ってきた。そのお茶が注がれていたのは、昨日、あれほど「ガラクタ」と罵った、李朝の白磁の壺から汲んだ水で淹れられたものだった。そして、その横には、椿が庭で摘んできた一輪の山吹が、魯山が作った小さな一輪挿しに生けられていた。
「……」
「……この壺、確かに美しいかもしれません。この壺に生けられた花は、いつもより嬉しそうに見えます」
「……お前の淹れた茶は、いつもより美味い気がする」
それが、二人の仲直りの儀式だった。言葉で謝ることはない。ただ、相手の価値観を、ほんの少しだけ受け入れ、自分の世界に取り入れてみる。魯山は、椿が大切にしている家計簿の隅に、覚えたての拙い字で「ありがとう」と書くようになった。椿は、魯山が買ってきた高価な器を、特別な日にだけ、大切に使うようになった。
それは、まさに「切磋琢磨」の日々だった。互いの鋭い角で、互いを削り合う。痛みと火花を散らしながら、それでも離れることはない。そうして、二人の魂は、少しずつ形を変えていった。魯山の器は、かつての荒々しさに加え、椿が教えた「用の美」という優しさを宿すようになった。椿の作る料理は、質素倹約の中にも、魯山が教えた「一期一会」の美意識が光る、心尽くしの一皿へと昇華していった。
魯山の名が、釜戸山魯山として、少しずつ世に知られるようになった頃、椿の身体に病が見つかった。すでに、手の施しようのない状態だった。
医者から余命を宣告された帰り道、二人は黙って川沿いの道を歩いた。どちらも、言葉を発しなかった。相変わらず、素直に悲しみを分かち合うことなどできない、不器用な二人だった。
家に帰り着くと、魯山は黙って工房に籠った。何日も、飲まず食わずで、土と向き合い続けた。椿は、そんな魯山の邪魔をせず、ただ、工房の前に、毎日、完璧な塩加減の塩むすびを置いておくだけだった。
数日後、工房から出てきた魯山の顔はげっそりと痩せこけていたが、その目は、尋常ではない光を宿していた。彼の手には、一つの小さな箱があった。
「なんだ、これは」
椿が尋ねると、魯山は黙って箱を開けた。中には、プラチナとダイヤモンドでできた、小さな十字架のペンダントが入っていた。F4107。魯山が、なけなしの金をはたいて材料を買い、懇意にしていた宝飾職人に頭を下げ、自らのデザインで特別に作らせたものだった。
「……十字架? 私たちは、キリシタンではございませんよ」
「知るか。これは、お前と俺のしるしだ」
「しるし?」
「そうだ。十粒のダイヤモンド。この『十』という形は、お前と俺だ。縦の俺と、横のお前。全く違う二人が、一点で交わってできている。俺はお前と出会って、喧嘩を重ねて、ようやく不完全な自分が『満ちる』ということを知った。この十字架は、俺たちの闘争の歴史であり、これから先も、お前という存在と交わり続けるという、俺の誓いだ。このプラチナの腕は、俺の腕だ。お前という、扱いにくいが何より美しい宝石を、永遠に抱きしめ続けるという、俺の覚悟だ」
椿は、黙って十字架を受け取った。その小さな輝きは、ずしりと重かった。これまでの、喧嘩と、涙と、そして、数えきれないほどの小さな和解の記憶が、その重みとなっていた。
「氷砂糖みたい……」
「何?」
「このダイヤモンド、なんだか、氷砂糖の粒みたいですわ。甘くて、でも、いつかは溶けてしまう……」
「……」
「でも、これは、溶けないのですね。ずっと、ここに在り続ける」
椿は、その十字架を、そっと自分の首にかけた。痩せた胸元で、小さな十字架が、静かに、しかし力強く輝いた。
「ありがとう、あなた」
それは、椿が魯山に言った、初めての、そして最後の、素直な感謝の言葉だった。
その数か月後、椿は、まるで眠るように、静かに息を引き取った。魯山の腕の中で、あの十字架を、固く握りしめながら。

第四章:魂の器に宿る真理

魯山の回想は、そこで終わった。
縁側に座る彼の横顔は、彫刻のように静かで、その深い皺の一本一本に、椿との壮絶な日々の記憶が刻み込まれているように見えた。沙織は、いつの間にか、自分の頬が涙で濡れていることに気づいた。それは、悲しみの涙ではなかった。あまりにも気高く、あまりにも純粋な、二つの魂の軌跡に触れたことへの、感動の涙だった。
「……その、ペンダントは……奥様の……」
「そうだ。あいつの、形見だ」
魯山は、座卓の上の十字架を、慈しむように指でなぞった。
「あいつが死んでから、俺はこれを肌身離さず持っていた。だがな、ある時から、持つことをやめた。なぜだか分かるか?」
沙織は、首を横に振った。
「あいつは、死んで、いなくなったわけではなかった。俺の中に、完全に溶け込んでしまったのだ。俺が作る器の中に、俺が味わう料理の中に、俺が見る景色の中に、椿の価値観が、椿の魂が、生き続けている。俺は、椿という最も相性の悪い土と練り合わされ、あいつの死という名の炎で焼かれ、ようやく一つの器になったのだ。もはや、この形見に頼らずとも、あいつは常に俺と共にある。だから、もう、これは必要ない」
魯山は、十字架をそっとつまみ上げると、沙織の目の前に差し出した。
「お前に、これをやろう」
「えっ!? そ、そんな、滅相もございません! 奥様の、大切な形見を……!」
「形見としての役目は、もう終わったのだ。今は、ただの美しい工芸品だ。管理番号F4107。重さ1.60グラムのプラチナと、0.50カラットのダイヤモンドの塊に過ぎん。だがな、こいつには、俺と椿の『修行』の記憶が詰まっている。それは、お前にとって、何よりの道標となるだろう」
沙織は、恐る恐る、その十字架を手のひらに受け取った。ひんやりとしたプラチナの感触と、ダイヤモンドの硬質なきらめきが、彼女の肌に伝わる。1.60グラムという軽さ。しかし、その背後にある物語の重みが、ずしりと心に響いた。
「いいか、沙織。お前が結婚しようとしている男が、本当にお前と相性抜群だというのなら、それはそれで結構なことだ。だが、その安楽な関係に、決して安住するな。常に、相手の中に、自分とは違う『異物』を探せ。理解できない部分、許せない部分を、こそ、見つけ出せ。そして、それと真摯に向き合え。なぜ、この人はこう考えるのか。なぜ、自分はこれに腹が立つのか。その問いこそが、お前たち二人を、ただの恋人から、真の夫婦へと昇華させる唯一の道だ」
魯山は、自作の、あの金継ぎが施された唐津の茶碗を手に取った。
「人間も、器も、傷一つない完璧なものなど、つまらん。傷つき、割れ、それでもなお、こうして金で継がれ、前よりも強い景色を得て、生き永らえる。その過程こそが、美しいのだ。お前たちの結婚生活も、きっとそうだ。これから、数えきれないほどの喧嘩をし、互いを傷つけ合うだろう。だが、その傷跡こそが、お前たちの愛の歴史となり、二人だけの、誰にも真似できない美しい『景色』となるのだ。そのたびに、この十字架を見るがいい。この氷砂糖のようなダイヤモンドの、甘さと、永遠性を思い出すがいい。そして、この十字架が、お前たちの魂を受け止める『器』となることを祈れ」
沙織は、手のひらの十字架を固く握りしめた。その小さな輝きが、彼女の迷いを、不安を、全て吸い取っていくようだった。
「わかりました……。ありがとうございます、先生」
彼女の瞳は、もう曇ってはいなかった。そこには、これから始まるであろう「修行」への、静かで、しかし揺るぎない覚悟の光が宿っていた。
「彼と、たくさん喧嘩をしてきます。そして、たくさん、仲直りをします。彼の中にある、私とは違う部分を、愛せるように努力します。それが、私たちが共に生きていく意味なのですね」
「……ふん。ようやく、分かりおったか。まあ、せいぜい頑張るがいい」
魯山は、ぶっきらぼうにそう言うと、ぷいと横を向いた。その耳が、少しだけ赤くなっているのを、沙織は見逃さなかった。

終章:雨上がりの景色

沙織は、魯山に深々と頭を下げると、彼の住処を後にした。
石段を下りていく彼女の背中は、来た時とは別人のように、力強く、晴れやかだった。彼女が門を出ると、まるで祝福するかのように、今まで降り続いていた雨が上がり、雲の切れ間から、柔らかな陽の光が差し込んできた。
谷戸の紫陽花は、雨に洗われて、一層鮮やかな色を放っている。沙織は、その一つ一つの花びらが、それぞれ違う形、違う色合いを持ちながら、寄り集まって一つの美しい花を形成していることに、今さらながら気づいた。
彼女は、胸元で輝く十字架に、そっと触れた。
F4107。15.85x12.57mmという、小さな宇宙。氷清玉潔の輝きを放つ、魂の器。
これは、ただのペンダントではない。これから始まる、愛する人との長きにわたる闘争――すなわち「切磋琢磨」への、お守りなのだ。
沙織は、婚約者の元へと、急いだ。伝えたいことが、たくさんあった。まず、今夜の夕食のメニューについて、徹底的に口論をしてみよう。そう、心に決めていた。
一方、谷戸の奥の家では。
魯山は、一人、縁側で茶を啜っていた。沙織が座っていた場所には、もう誰もいない。静寂が、家を支配している。
彼は、ふと、棚の奥から、一つの古い写真立てを取り出した。そこには、不機嫌そうな顔をした若き日の自分と、その隣で、ツンとすました顔をしながらも、どこか嬉しそうに寄り添う、椿の姿があった。
「……やかましい女だった」
魯山は、写真の中の椿に、独りごちた。
「お前がいなくなって、静かになったのはいいが……飯がまずくてかなわん。喧嘩相手がいないというのは、存外、退屈なものだな、椿」
その時、雨上がりの庭に、一匹の蝶が舞い込んだ。ひらひらと、魯山の周りを飛び、やがて、彼が作った、あの信楽と備前と唐津の土が混じり合った、不格好で力強い壺の縁に、ぴたりと止まった。
魯山は、その蝶を、じっと見つめていた。その瞳は、どこまでも優しく、穏やかだった。
空は、すっかり晴れ渡っていた。魯山が作った、歪だが美しい茶碗には、雨上がりの、澄み切った青空が映り込んでいた。それは、長く厳しい修行の果てにたどり着いた、魂の景色そのものだった。

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