【基本情報|Release Information】
レーベル:Deutsche Grammophon
品番:MG 2139
フォーマット:LP
国:Japan
リリース年:1971
タグ:Contemporary, Experimental, Japan, Studio Work, Ritualistic
【作品の解読|Decoding the Work】
黄のラベルに刻まれた「Miniatur - Art」は、耳ではなく空間に、時間ではなく密度に語りかける。これは武満徹による時間の彫刻であり、若杉弘によって導かれた儀式の記録である。演奏されるのは楽曲ではなく、出来事——もしくは、それが起こったという痕跡。
本作を貫くのは、音楽という制度を超えた音の布置。例えば〈Stanza I〉では、高橋悠治のピアノとチェレスタが細胞のように微細な音塊を編み、安倍圭子のヴィブラフォンが宙に断続的な揺らぎを投げかける。だが、これを「構成」と呼ぶのはおそらく誤りである。これは編集された偶然であり、予測可能な逸脱なのだ。
Discogsによる記録によれば、録音は1969年秋に断続的に行われており、曲ごとに異なる編成と楽器群が登場する。この断片化された構造は、武満が影響を受けたブルーノ・ムナーリのミニマリズム的思想とも響き合う。〈Ring〉ではギターとリュート、フルートが静かに旋回し、空間の中心を意図的に空白化することで、聴取者の内的な想像が引き出される。
この音響構造は、明確な主旋律や拍節の消失を通じて、聴取を知覚そのものへと引き戻す。音は装飾ではなく呼吸であり、楽譜は地図ではなく迷路である。高橋悠治のオルガンが登場する〈Valeria〉では、演奏と環境の境界が曖昧になり、録音はもはや物質的痕跡としての「音楽」ではなく、音響場の「証言」に変容する。
本作は、単なる日本現代音楽の一篇ではない。そこにはポリドール=ドイツ・グラモフォンという制度的な国際レーベルの配置、安倍圭子や高橋悠治らによる脱ジャンル的演奏活動、さらには1970年大阪万博を射程に入れた「文化外交」の影も忍び込む。
だがそれら文脈すらも、この作品の前では小さく感じられる。なぜなら、この録音は、音楽の始まる前と終わった後、その両端にこそ耳を澄ませるよう求めてくるからだ。そこには、過去ではなく「記憶されない現在」がある。
【状態詳細|Condition Overview】
メディア:NM(非常に良好、チリノイズほぼなし)
ジャケット:VG(汚れ、使用感あり)
【支払と配送|Payment & Shipping】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。