ボビー・クルースとリッチー・レイが音響的重力圏を突き破る、異色の1971年作。

レーベル：Musica Latina International LP-7743 / Tico Records LP-7743
フォーマット：LP, Album（ヴェネズエラ盤）
国：Venezuela
リリース年：1971年
タグ：Latin, Salsa, Descarga, Boogaloo, 1970s, Latin Soul

《In Orbit》という挑発的なタイトルに相応しく、Ricardo "Richie" RayとBobby Cruzが提示するのは、サルサ／ブーガルーを音響的軌道上に乗せたような超越的実験である。録音はNYのA&R Studios、エンジニア兼オルガン奏者にFred Weinbergを迎え、6曲26分というコンパクトな構成にぎっしりと詰め込まれたサウンドは、どこかラテン・ソウルのミニマリズムとポップの異化を併せ持つ。冒頭の「Ricardo Ray In Orbit」は、まさにこのアルバムの心臓部——宇宙船の打ち上げのようなパーカッションとキーボードの爆発が、ボビー・クルースのヴォーカルと共に軌道へと浮上する。「Last Train To Clarksville」や「El Pajaro Loco（キツツキのテーマ）」といった意外性に満ちたカバー／引用曲の扱いもまた、アメリカ文化圏に対するラテン側からの逆照射とも言える。サイドBの「Cactus Flower / Time For Love Is Anytime」「Ad Libs」では、即興性とメロドラマ的な抒情がねじれ合い、Fred Weinbergの深みあるオルガンが空間の湿度を変容させていく。この作品は決して単なるダンス・ミュージックではない。それはサルサがNYのラテン・コミュニティ内でどのように文化的地平を拡張していったか、その生々しい断面図としても読みうる記録物なのである。

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