紹介…
桜任蔵って誰…?
ここまで検索してこられた方には言わずもがなではありますが、ご存知ない方のために。
水戸の志士(生まれは笠間で、水戸藩士の家系ではありません。小松崎茂の大叔父に当たるようです)。
藤田東湖に師事。
烈侯斉昭の復権に奔走。
しかし桜田門外の変の直前に急死した。
絶息の言葉は、
「心事未だ了せず、志を齎して地に入る。蓋し亦天命なり」。
吉田松陰は斎藤弥九郎、松浦武四郎とともに任蔵を「交り大益あり」天下の事に通すべき豪傑…と高く評価した。
しかし本書を読んでみてその人となりを知ると、ものすごく不器用な人と言うか、熱血が常に空回りしているかのような、人生ひとり相撲を取っていたような人物に思えます。
身内にこういう人がいたら大変だけど、端から見ている分には楽しい…そんな愛すべき人です。
笑い話のようなエピソードが豊富で、
①赤貧洗うがごとしの貧乏なのに、何の役にも立たないような大甕を衝動買いしてしまった任蔵。
いそいそ担いで持ち帰ったのはいいけれど、家の前でハッ。
「こんなものを買ってきてどうするつもり!?」と妻に言われたらどうしよう…。
そこで裏口に菰をかぶせて隠しておくことにした。
(後日、菰をどけてみて奥さんはビックリ)
②親切な按摩にお金をもらったりして、任蔵は自分も按摩をやってみようと考えた。
もちろん揉み治療なんて何も出来ない。
それなのに、こともあろうに妙齢のご婦人からお呼びがかかって…さて任蔵、どうする?
「天下の事に通ずる」という割にはあまりにも軽い、ショートコントのようなエピソードの数々が紹介されています。
井伊直弼打倒のために有馬新七と上方へ向かった旅も、まるで弥次さん喜多さんばりの珍道中。
悲憤慷慨するばかりが志士じゃない。
知られざる幕末志士伝です。