本書は,著者が1990年から1997年まで滞在した,ロンドンのタビストック・クリニックでの子どもの精神分析的心理療法の訓練経験について書かれたものである。タビストックで行われている子どもの精神分析的心理療法の訓練は,ビックの考案した乳児観察を基盤としたユニークな訓練であり,本書では,その訓練の実際,そしてクライン派の子どもの精神分析的心理療法を懇切丁寧に解説する。また,スーパービジョンや個人分析の意義,さらにクライン,ビオンらの理論に対する著者の解釈も平易に記述されている。精神分析はしばしば「子どもの遊びの意味を解釈するやり方は,遊びを通じて展開される「イメージの流れ」を滞らせるか,中断させてしまう」という批判を受ける。著者はそれに対し,「「解釈」というものの役割に関する誤解に基づくものである」と述べ,本当の役割は,子どもの内的世界の表現を深化させていくことにある,と説く。さらにケース・スタディとして,自己愛的な少女,虐待を受けていた知的障害の青年期の少女,死に脅える少年,アスペルガー症候群の青年,性的虐待を受けた少女,という発達障害児や被虐待児を取り上げ,セラピストが子どもの行・・・

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