【日本の記念切手】「国際文通週間」記念切手 1959年/1964年/1965年/1968年 4種
日本の「国際文通週間」切手は、世界の人々が文通を通じて相互理解を深めることを目的に、毎年10月の「国際文通週間」に合わせて発行されているシリーズです。
日本では1958年(昭和33年)から発行が始まりました。特に海外への郵便に使われることを想定しているため、「日本を代表する美術品(主に浮世絵)」*を題材にしているのが最大の特徴です。このシリーズは海外の収集家からも非常に人気があります。
今回出品の4種の切手はすべて、当時の国際郵便(船便や航空便)の料金体系に合わせた額面設定になっており、日本の風景版画の傑作が選ばれています。
1. 1959年(昭和34年)発行:東海道五拾三次「桑名」
額面: 30円
原画: 歌川広重『東海道五拾三次之内 桑名 七里渡口』
解説: 現在の三重県桑名市にあたります。熱田(名古屋)から海路で桑名へ渡る「七里の渡し」の到着風景を描いています。 画面手前に大きく波打つ海と、風を受けて進む2艘の帆掛け船が印象的です。後方には桑名城が静かに佇んでいます。広重らしい、旅の情景と海の青さが美しい一枚です。これは国際文通週間シリーズの第2回目として発行されました。
2. 1964年(昭和39年)発行:冨嶽三十六景「保土ヶ谷」
額面: 40円
原画: 葛飾北斎『冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷』
解説: 現在の横浜市保土ケ谷区にあたります。東海道の松並木の間から富士山を望む構図です。 特徴的なのは、松の木の間を歩く旅人たちです。虚無僧(こむそう)や馬に乗った旅人が描かれており、当時の街道の賑わいが感じられます。松の木のリアリティと、遠くに見える富士山の対比が素晴らしい作品です。
3. 1965年(昭和40年)発行:冨嶽三十六景「三坂水面」
額面: 40円
原画: 葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州三坂水面』
解説: 現在の山梨県、河口湖の湖面に映る「逆さ富士」を描いた有名な作品です。 この絵には北斎の意図的な仕掛けがあります。実物の富士山(上部)は夏山のようにゴツゴツとした茶色い山肌で描かれているのに、湖面に映る逆さ富士(下部)は雪を頂いた冬の姿で描かれています。静寂さと幾何学的な美しさが際立つデザインです。
4. 1969年(昭和44年)発行:冨嶽三十六景「甲州三島越」
額面: 50円
原画: 葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州三島越』
解説: 現在の山梨県と静岡県の県境、籠坂峠(かごさかとうげ)付近と言われています。 画面中央に巨大な幹の巨木(スギの木と言われています)がドーンと描かれており、旅人たちが手を広げてその太さを測ろうとしているユーモラスな構図です。巨木越しに富士山が見え、自然の雄大さと人間の小ささを対比させています。
【シリーズのポイント】
大型サイズ: 浮世絵の美しさを表現するため、通常の切手よりも大きなサイズで印刷されています。
額面の変遷: 1959年の30円から、時代の経過とともに郵便料金が値上がりし、40円、50円と額面が変わっているのも歴史を感じさせるポイントです。
「広重」と「北斎」: 初期のシリーズ(1958年~1962年頃)は主に歌川広重の『東海道五拾三次』が採用され、その後(1963年以降)は葛飾北斎の『冨嶽三十六景』が多く採用されるようになりました。
この時代の切手は、印刷技術の向上とも相まって、浮世絵の色彩が非常に美しく再現されています。コレクションとしても非常に見栄えのする4枚です。