メディア掲載レビューほか 全10曲は西山と安ヵ川のオリジナルが各4曲と、カバーが2曲。「White Cloud Mountain Minnow」は本作のために西山が書き下ろしたナンバーで、ピアノとベースが共鳴し、呼応するテーマから引き込まれる。同じく本作が初出の「Waiting For No One」は西山の持ち味であるメランコリックな旋律の引き出しを開けたバラード。主旋律がピチカートへと移って、再びピアノに移行するスムーズな流れに、息の合ったデュオの真髄を聴く。2008年に西山が山中湖を訪れた際、ピアノを使わずに書いたという「Lakeside」は、自然の豊かさと感謝の気持ちが伝わってくるような演奏だ。「Face Of Yesterday」は様々な楽器との共演で演奏してきた、ライブのレパートリー。ピアノとアルコ・ベースが幻想的な雰囲気を醸し出し、ピアノの主旋律がヨーロピアンな都市の風景をイメージさせる。安ヵ川の楽曲に関しては、弓弾きを受け継いで楽曲の世界を深めるピアノが見事なセルフ・カバーの「Kakeroma」、急遽選曲に加えられたピチカートの技巧が冴える「Dawn」、弓弾きの魅力がたっぷりと味わえる「Voyage」。東日本大震災後に作曲した「Pray For Japan」は、文字通り復興を祈る2人の魂が響き合いながら、感動的な瞬間を現出する。ルベーン・ゴンサーレス作曲の「Como Siento Yo」は、安ヵ川の旋律嗜好を示す好例。アルコの多用を本作のテーマとした安ヵ川は、最後の表題曲でも本領を発揮して締めくくる。それぞれにとっての新境地に到達した、初めてのピアノ&ベース・デュオ作である。 --2012.2 杉田宏樹氏 ライナーノーツより 抜粋