そうした褐地作品の中でも本作は非常に珍しい作品です。江戸時代に欧米に輸出された伊万里焼の多くは高級調度品として、欧米現地で豪華なブロンズ装飾を施されて、王宮や貴族の館を飾りました。しかし、明治期の香蘭社作品にブロンズ装飾を施した作例はさほど多くはありません。その中でも、本作のように蓋付きのブロンズ装飾が施されたものは更に稀少です。底部には香蘭社の蘭マークと深川製の銘に並んで当時のフランスもしくはベルギーの輸入商のラベルが貼られています。”AUX PRODUITS DE L’EXTRME ORIENT - NICOLAS ANSALDI”とフランス語で書かれています。「極東製品のニコラス・アンサルディ商会」という程の意味です。寸法は、ブロンズ装飾部を含めて横幅が19cm、高さが12cmです。ブロンズ装飾との接触部に若干の擦れなどはありますが、ワレ、カケ、ヒビなどの瑕疵はありません。とても綺麗な保存状態です。