絹谷幸二（1943年奈良県生まれ）は、幼少期から歴史的環境に親しみ、豊かな芸術的感性を養った。東京藝術大学油画科および大学院壁画科で学び、ヴェネツィア・アカデミアに留学。アフレスコ古典技法を修得し、現代的表現を追求して鮮烈なイメージ世界を確立。帰国後は独創的なスタイルと精力的な作品制作で数々の美術賞を受賞し、40年以上にわたり日本の美術界をリードしてきた。東京藝術大学や大阪芸術大学で後進を指導し、「絹谷幸二賞」を設立して若手芸術家を支援。文化庁主催「子供 夢・アート・アカデミー」でも次世代に創造の喜びを伝えている。日本藝術院会員。2014年文化功労者顕彰、2015年日本放送協会放送文化賞受賞、2021年文化勲章受章。

絹谷幸二「月下のフォスティーナ」アフレスコ画 8号
本作品は、絹谷幸二が得意とするアフレスコ技法を用いて描かれた、貴重なオリジナル作品です。絹谷はイタリア留学時に習得したアフレスコの古典技法を現代的な表現へと昇華させ、独自の鮮烈な色彩とダイナミックな筆致で新たな芸術領域を切り拓いてきました。本作に描かれた女性像「フォスティーナ」は、古代ローマの皇后ファウスティナを象徴し、知性、慈愛、そして力強さを内包した存在として表現されています。満月の下で静かにたたずむその姿は、生命のエネルギーと精神性を象徴し、観る者に深い内省を促します。

赤、黄、緑、青といった大胆な色彩が女性の身体を包み込み、背景の夜空とのコントラストが神秘的な雰囲気を醸し出しています。絹谷の筆致は細部に至るまで力強く、アフレスコ独特の質感が作品に一層の存在感を与えています。本作品は、絹谷幸二の芸術的探求の結晶であり、オリジナル作品として唯一無二の価値を持つ貴重な一作です。その鮮やかな色彩と精神性に満ちた表現は、絵画を超えた心象風景として、観る者に強く訴えかけます。