1000部限定 希少本 幻の瀧 手塚雄二 画集 作品集 幻の滝 現代日本画 素描 黒部渓谷セレネ美術館
毛筆署名・落款印入り・通番入り 日本美術院同人 図録本
手塚雄二 著
黒部渓谷セレネ美術館 発行
1997年
88ページ
約28.5ｘ23ｘ3.5cm
布張り夫婦函入 本体布張り型押・金箔押し上製本
カラー・モノクロ
※限定1000部 通番入
※絶版
※巻末に毛筆署名・落款印入、貼り込み作家モノクロ写真付（幻の瀧スケッチの様子）
1986年から1996年の間に発表された、
セレネ美術館所蔵作品、ならびに日本美術院展受賞作品を中心に日本画14点・素描16点収録。
黒部渓谷の型押し布張り装丁の、1000部限定出版・作家直筆サイン入り・落款印入りの豪華愛蔵本。
【主な内容】
作家写真 アトリエにて
荘厳なる宇宙 セレネ美術館
（図版）作品1996-1986 日本画・素描
邂逅―黒部峡谷
画―手塚雄二 中村賢一
黒部取材記（写真）
憶―幻の瀧 手塚雄二
剱大滝直登記 高嶋石盛
高嶋石盛氏本人の撮影による幻の滝写真
未来への記憶 ―セレネ美術館― 濱田政利
手塚雄二略年譜
作品目録
（奥付に署名・落款印・通番入）
（貼りこみ写真）
【画―手塚雄二 中村賢一】 より
混沌の気に満ちているかのような画面の深淵。そこから立ちあらわれる世界の姿は、 おぼろげでありながらも荘厳な雰囲気に満ちて、見る人を圧倒する。
手塚雄二が描き出すのは、見慣れた風景の奥にひそむもう一つの世界であり、作家にのみ見えた一瞬の情景である。
この画集に収録されているのは、1986年制作の『泉』からである。以前は、画中に人物を配した作品が多かったのであるが、このころから作家は徐々に風景そのものを見つめはじめる。「洗」、「陽賞」、「耀」、「炫」と続く風景作品を院展に発表し、1989年には『潤」 によって、日本美術院賞を受賞している。
「耀」は、深い叢におおわれた小川が、仄かにきらめきながら静かに流れていく様を、 湿潤な空気と寂光のなかに描いた作品である。草の香りがたちのぼってくるかのように濃密な画面でありながら、どこかうつろいゆく時のはかなさを感じさせる。
これは奈良の飛鳥川に取材した作品なのであるが、作家の描き出した風景は、あたかも異世界のように不思議な魅力に満ちて、その場所を意識させない。
我々がおぼろげに、無意識のうちに認識しているものを作家ははっきりと凝視し、その風景の本質とでもいうべきものを描き出す。そのため、作品は確かな存在感を持ちつつも、場所そのものの具体性が薄まり、見る人それぞれの心にある風景と結び付くことになるのである。
「耀」や、鎌倉の切り通しを描いた「炫」といった作品を見ていると、その場所に行ったことがなくても、既視感をともなって、幼いころ遊んだ小川や野山の風景が懐かしく思い出される。
万里の長城を描いた「嶺」や、ロダンの群像彫刻に取材した「市民」は、ともに日本美術院賞を受賞しているが、これらの作品からも、これまで意識していなかったものが、 ある衝撃をもって、全く別の風景として眼に飛び込んできたときの、新鮮な驚きと共感を覚える。
1999年から、作家はセレネ美術館の招待により黒部峡谷の取材を開始する。精力的に総谷を取材し、多くのスケッチを行うとともに、いくつかの作品を完成させている。ここでも作家は、対象に肉迫した大胆な構図と、抑制された色彩の中から、人をひきつける荘厳さに満ちた作品を生み出している。
「幻の瀧」も黒部の秘境のひとつ、剱沢に位置する劔大滝を描いた作品である。その取材の様子は作家本人による文章に述べられているが、取材の全行程は危険に満ちたもので、作家にとってはまさに命懸けの取材であった。
間近に見た、怒濤の勢いでほとばしる真っ白な滝の水が画面の中央を占める。滝口を見上げる視線は不思議な高揚感を生み出し、大部分が岩と水のみで構成された空間の張り詰めた緊張感とあいまって、厳粛で崇高な雰囲気を漂わせる。
この寡黙な画面は、自然とひたすら真摯に向かい合う作家の姿を彷彿とさせる。その無言の交流のうちに、黒部峡谷の自然が悠然と描き上げられている。
これはまた、緻密で厳格な素描の積み重ねによる、正確な対象の把握の上にはじめて成り立つもので、表面からはうかがえない膨大な仕事が作品の根底を支え、堅固で不変な存在を描き出すのである。
静謐な空気のなかで、作家の追求は揺るぎない。一筆一筆に丹精をこめて描き出されるその世界は、空想を超えた現実味を帯び、写実を超えた造形に至る。
手塚雄二によって描き出された作品は、時に現実以上の力を秘めて我々に語りかけてくる。様々な思索が交錯する中で、作家の描き出した世界に自由に遊び、その驚きや歓びをともにする時、実は我々をとりまくこの世界こそが、限りない神秘に満ちて存在していたことに気づかされるのである。
(セレネ美術館学芸員)
【序文より】
荘厳なる宇宙
見えざるものを見、聞こえざるものを聞く。
芸術家の仕事は、それを伝えることと言えるかもしれない。
我々と全く同じものを見ながら、その手から生み出される世界は、神秘の力をあら
わし、森羅万象の真実を我々に語りかけてくる。
セレネ美術館が、画家に黒部峡谷を題材とする作品の創作を依頼しているのも、 作家の心の眼を通した、自然の真実の姿を未来へ伝えるためである。
日本画家、手塚雄二もこの活動に携わっている一人である。
『幻の瀧』をはじめとする黒部の秘境へ分け入り、巨大なダムを見あげ、
清冽な黒部の流れに触れながら、自らの体で確かめた自然を描き続けている。
その視線は、現実を離れ、漠として宏大なる手塚雄二の内宇宙へと対象を取り込む。
作家は確かに現世の事象を描きながらも、人と自然を讃えつつ、その奥にひそんでいるものに光をあてる。
その光は、世界に隠された宇宙の真実の韻律を求めて、
作家の情念が放つ思惟の光である。
かたちそれは、かそけき宇宙の調べを聞きとり、楽譜へと置き換える仕事にほかならない。
手塚雄二の絵筆がつむぎだす、荘厳なる宇宙の旋律に、 我々はただ耳をかたむけよう。
(セレネ美術館)
【作品 1996-1986について】
1986年から1996年の間に発表された、セレネ美術館所蔵作品、ならびに日本美術院展受賞作品を中心に収録した。
【作品目録】より一部紹介 寸法・制作年掲載
●日本画
飛龍峡
黒の壁
星宿出六峰
幻の瀧
終宴
土中居
市民
市民
嶺慕
炫
耀
洸
泉
●素描
飛龍峡
黒部ダム
雲切の滝
出六峰
幻の瀧
幻の瀧
幻の瀧
十字峡
出平
欅平
八達嶺
嶺
市民
飛鳥川
ジャイプール
兵馬俑
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