［九六式艦上戦闘機について]
日本海軍は1934年の次期艦上戦闘機の設計に際し、あえて艦上機としての性能を要求せず、九試単座戦闘機として近代的高速機を求めた。三菱では設計に際し高速と空戦時の運動性に重点が置かれ、空気力学的に洗練と重量軽減が追求された。その結果、海軍制式機としては最初の全金属製低翼単葉機とした。また 主脚は構造重量の増大や未舗装の飛行場での運用想定を勘案してできる限り小形とした固定脚とし、空気抵抗を抑えるため流線型のスパッツで覆った。また、表面の空気抵抗を減らすため沈頭鋲を採用した。これらの技術を盛り込んだ結果、当時の固定脚機の水準を超え、海軍の正式飛行試験において要求性能の最高速度352km/hをはるかに超え、450km/hの公認最高速度を発揮するに至った。運動性能も水平面、垂直面の旋回性能は非常に良好で、高速でかつ運動性能の良い戦闘機が完成した。九六式艦上戦闘機は陸上機として配備され、中国戦線の活躍で高性能を発揮し上海での初戦を皮切りに南京方面までの中国大陸で中国軍を駆逐する強さであった。またノモンハンの戦いでは陸軍の九七式戦闘機と共に、ソ連機を圧倒する強さを発揮する大活躍をした。しかし、重慶への渡洋爆撃が始まると本機の行動半径では擁護戦闘機とはしては対応が難しくなり、新規開発、採用された航続距離の長い零式艦上戦闘機に主力戦闘機の座を譲ることになるのでした。