1962年 広島県出身、1987年 東京造形大学美術学科卒業、1988年 東京造形大学研究科修了、1991年 第67回白日会展にてU賞、1992年 第68回同展にてT賞受賞、1993年 第69回同展にて内閣総理大臣賞受賞、白日会会員選抜展「かけがえのない現象」展（日本橋三越）に出品（1994年も）、1998年 女展ー内なるものー（春風洞画廊）出品、現在：白日会会員　その時々の自分を身近な女性像に仮託して語り、遅々としながらも根強い独自な絵画性を持つ

照沼彌彦「裸像」油彩 6号 2001年作 共シール
照沼彌彦《裸像》は、背を向けた女性像を静謐に描き出した作品です。片腕を上げて髪を整える自然な仕草の中に、肩から背筋、腰へと続く肉体の曲線がなめらかに浮かび上がり、人体そのものの美しさが端正に表現されています。肌の質感は繊細な筆致によって生々しい温度や呼吸までも感じさせ、背景の粒子状の表現がその存在を際立たせることで、モデルと画家の間に流れる静かな時間を鑑賞者に伝えています。

照沼は「その時々の自分を身近な女性像に仮託して語る」とされる作家であり、本作においても特定の物語を付与するのではなく、普遍的な「裸像」としての姿に内面を重ね合わせています。余白を残した簡潔な題名は、画家の視線が物語性や装飾を超え、存在そのものの確かさを追い求めていることを示しているでしょう。写実的でありながらも静謐な精神性をたたえたこの作品は、照沼の根強い独自の絵画性を如実に伝える一枚となっています。