ダルベール 歌劇 低地 tiefland 極美品 マルトン コロ ヴァイクル モル オルト 1982.6~7 83.2 ヤノフスキー バイエルン放送管 廃盤 アーツ盤 アカンタ原盤
ダルベールの低地です。日本ではほとんど知られていない作品だと考えられますが、本国ドイツではかなりの人気曲らしく、LP初期から現在まで 折々に録音が途絶えません。他の国では全くと言って良いほど知られていない作品が 本国だけではずっと上演され続けている例は少なからずあり、その辺りが民衆の心に深く根ざしてた “オペラ” ならではの特色だろうと考えられます。それを他の国の人間が嗤う事例が 時折見受けられますが、そんな事は 不粋とも不束とも不躾とも…まことに失礼極りないことだと言えましょう。
ダルベールはロンドンに生まれ のちにドイツに留学した作曲家で 名ピアニスト。父親がドイツ生まれのイタリア系フランス人 母親が英国人、さらにはダルベール自身も数多の恋愛を重ね 結婚も6~7度とか。ヨーロッパのコスモポリナニズをひとりで…しかもかなり濃密に体現していて、そのスケールの大きさは驚くばかり。作曲では この“低地”がダントツですが、ピアニストとしては かのリストの“弟子”で あのバックハウスの“師匠”なのだそうです。マルチな音楽的才能に恵まれた稀有な人物だった事が窺えます。
歌劇 “低地” は1903年の初演。羊飼いの純朴な青年が“ワル女”がらみの恋愛に巻き込まれて 遂には殺戮に及ぶ…というストーリー。“アルルの女” の世界に “ナバラの女” の趣向を持ち込んだような筋立てで、案の定 “ドイツのヴェリズモ” と呼ばれている作品なのだそうです。確かにそうには違いないですが、淫猥 背徳 狂気 殺戮 などなど “サロメ” や ツェムリンスキーの諸作にも通じる要素も満載で、丁度 “耽美主義” の後の時期である事を考え併せると こんな感じの劇が当時の流行だったのではなかろうか という推測も思い浮かびます。
マルトン コロ ヴァイクル モルを揃えた 顔ぶれの凄さに先ずは注目です。そのままあっさり “トリスタン”でも“エレクトラ”でも“影のない女”でも出来そうな豪華で強力なキャストで、それだけでもオペラファン垂涎だと考えます。当時は こんな顔触れでそんなレパートリーを録音することなど日常茶飯で、今から振り返ると“夢のような時代”だった事が 理解されます。スレンダーな美男美女が 軽やかな音楽を展開する現代もまたひとつの“豊穣”には違いないですが、この頃は “ヘビー級の大役”を易々と歌いこなせる大型歌手がゴロゴロと居た時代で、“時計の針を巻き戻す”訳にはいかないだけに… “得難い音楽体験だった” と感じ入るばかりです。
この作品のアリアを リザネック ヴィントガッセン ウーデが録音しているようです。S. T. Br. に名アリアがあること確実で 作品の人気の秘密が分かる気がしました。
私がこの題名を知ったのは1980年頃。 カラス没後に彼女の出演記録が出回り、アテネ時代の後期1944~45年頃に“サントゥッツァ”や“トスカ”と並んで これを歌っていた事を知った時でした。おそらくイタリア語訳詞だったのでしょうが 当時の世界的な流行ぶりが窺えます。
極美品です。アカンタ原盤のアーツ盤ですが、現在 これらの音源がどのように扱われているかは分かりません。各ショップのサイトを眺めても すんなりはヒットせず…或いは廃盤はもしれないと感じました。アカンタから出された一連の録音の様子 オケがBROである事などなど “バイエルン放送”がらみの録音には違いなく、音源の保存に遺漏がない事は確実なのですが…。
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