中堀慎治（なかぼり しんじ）は1956年東京都生まれ、多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業後、N.Yアート・ステューデント・リーグに在籍。創画展、川端龍子展、東京セントラル美術館日本画大賞展、菅楯彦大賞展など数々の展覧会に出品し、日本橋三越本店をはじめ国内外のギャラリー・百貨店で多数の個展・グループ展を開催。安楽寺（徳島県美馬市）の天井画・襖絵を約10年にわたり手掛ける。金銀箔を効果的に用いて一瞬の光や時空間を描き出し、性別を超えた思慮深い表情の女性像には、弥勒菩薩を思わせる微笑と、観る人の心を浄化するような力が備わっている。現在無所属。

中堀慎治「風は満ちゆく」日本画 10号 金箔仕様 共シール
金箔の輝きに包まれた静謐な世界の中、凛とした美しさを湛える女性が描かれた一枚。繊細な筆致で描かれた女性の表情は、どこかこの世のものとも思えぬ気高さと優美さをまとい、見る者の心を静かに捉えます。白磁のような肌、柔らかく結い上げられた髪、そして微かに浮かぶ微笑――その全てが、時空を超えた普遍的な美を物語ります。

手にする小さな赤い花は、移ろう季節や生命の儚さを象徴し、背景に広がる金箔の空間には、まるで目には見えぬ「風」が静かに満ちていく気配が漂います。金箔はただの装飾にとどまらず、光と空気を宿す舞台として、作品全体に神聖さと荘厳さを与えています。

『風は満ちゆく』そのタイトルが示す通り、この作品は風のように形のないもの、時の流れや心の変化を静かに描き出した作品です。中堀慎治氏ならではの、日本画の伝統美と現代的な感性が融合した一枚。観る者の心にそっと語りかけ、内なる静けさと癒しをもたらしてくれるでしょう。画伯の美しい美人画の名画です。