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◆ 春日楽器OEMによる、国内限定仕様のKEP-10T
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1960年代半ば、Teiscoは生産拡大に伴い、名古屋の春日楽器(Kasuga Gakki)に製造を委託していました。
本機はそのOEMラインで作られた、国内市場限定仕様のKEP-10T。
通常の輸出モデル(Del Reyブランド等)とは異なり、
ヘッドはナチュラル仕上げでロゴプレートを持たない無銘デザイン。
さらに外周には美しいセルバインディングが施され、
経年で深い飴色に変化したラッカーが、唯一無二の風格を放ちます。
工芸品のような質感と静かな存在感を持つ、極めて希少な個体です。
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◆ スペック概要
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モデル名:Teisco KEP-10T(春日楽器OEM・国内仕様)
製造年 :1965年前後
製造工場:春日楽器(Kasuga Gakki, Nagoya)
ボディ :ラミネート・メイプル(セミホロウ構造)
ネック :メイプル3ピース(センターライン入り)
指板 :ローズウッド(ドットインレイ)
ピックアップ:Teisco製 矩形スリットPU ×2
コントロール:Volume ×2、Tone ×1、3Wayセレクター
ブリッジ :メタルアジャスタブルタイプ
トレモロ :ビグスビー風スプリングユニット(オリジナル)
カラー :グリーンバースト(国内限定カラー)
ヘッド :ナチュラル(セルバインディング付・ロゴなし)
ペグ :Kasuga製スクエアカバーペグ(オリジナル)
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◆ 塗装と質感
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塗装は、当時の春日楽器が採用していたニトロセルロースまたは触媒硬化型ラッカー仕上げと推定されます。
現代のポリウレタンよりも薄く、木目を透かすような透明感があり、
自然な黄変によってバインディングとの境界が琥珀色に輝いています。
半世紀以上の経年を経てなお光沢を保ち、
人工的なアンバー塗装では得られない、柔らかい深みを帯びています。
この“呼吸するような艶”こそ、60年代国産ヴィンテージの醍醐味です。
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◆ サウンド
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センターブロックを持たないセミホロウ構造により、
軽やかで空気感のある中域、粒立ちの良い高域が得られます。
Teisco製のスリットPUは出力控えめながら、
ピッキングのニュアンスを繊細に拾い、ビンテージらしい枯れたトーンを奏でます。
クリーンでは温かく、軽いドライブではGS期の粘りある歪み。
アンプ直でもLo-Fiで味わい深く、録音にも適したトーンです。
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◆ コンディション
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・メタルパーツのくすみや小キズあり(雰囲気良好)
・ネックほぼストレート、トラスロッド余裕あり
・フレット残7割程度、演奏性良好
・電装系正常動作(ガリなし)
・オリジナルパーツ完備、改造・交換なし
全体的に保存状態が非常に良く、塗装・木部ともに健全。
60年代国産セミアコとしては稀に見るコンディションです。
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◆ 海外市場での評価と日本円換算
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同型のTeisco KEP-10T(輸出仕様)は、海外では 400〜600 USD(約6万〜9万円) で取引されていますが、本機のような春日OEMによる国内仕様(ナチュラルヘッド+バインディング付)は非常に稀少で、
近年の海外相場では 900〜1200 USD(約13.5万〜18万円) クラスの評価を受けています。
Teiscoブランドの中でも、「pre-Kawai期 × Kasuga製造 × 国内限定仕上げ」の組み合わせは希少中の希少。
日本国内でも、近年は10万円台中盤〜後半での取引が増えています。
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◆ コメント
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このギターは、単なるTeiscoの派生機ではなく、
60年代国産クラフトマンシップの精度と美意識を結晶化させた一本です。
ヘッドの飴色バインディング、薄いラッカーの艶、
そしてグリーンバーストの深みが一体となって、
まるで“時を閉じ込めた楽器”のような存在感を放っています。
演奏用にも、撮影・コレクション用にも価値あるヴィンテージ。
Teisco史における“最後の純粋期”を体現した一本です。
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◆ 発送
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破損を防ぐためにネックを外して、専用梱包材で十分な緩衝材を充填してヤマト、160サイズにてお届けします。
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◆ 注意事項
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ヴィンテージ品につき、経年変化や個体差にご理解のある方のみご入札をお願いいたします。
コンディションについては可能な限り正確に記載しておりますが、
製造から半世紀以上経過した楽器であることをご理解ください。
ノークレーム・ノーリターンでお願いいたします。
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◆ 総評
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春日楽器製造によるTeisco KEP-10T国内仕様。
ロゴを排したナチュラルヘッド、セルバインディング、飴色ラッカー――
すべてが60年代国産ギターの美学を体現しています。
海外市場では13〜18万円相当の評価を受ける、
「Teisco黄金期 × Kasuga製造」の希少な上位モデル。
国産ヴィンテージとしても非常に完成度の高い個体です。
この仕様、この状態の一本に出会えることは、ほぼありません。どうぞお見逃しなく。