MILES DAVIS / CHRONUS : COMPLETE SATURDAY MILES - DEFINITIVE COLLECTION (2CD)
[The BOOTLEG SERIES Minus 2 / MD-CRNS] 100セット限定紙ジャケ
Recorded Live at Fillmore East, New York City, NY, June 20 (Saturday), 1970
MILES DAVIS - trumpet
STEVE GROSSMAN - tenor saxophone, soprano saxophone
CHICK COREA - Fender Rhodes (Right channel)
KEITH JARRETT - Fender Contempo Organ, tambourine (Left channel)
DAVE HOLLAND - electric bass
JACK DeJOHNETTE - drums
AIRTO MOREIRA - cuica, transverse flute, shistle, kazoo, shakers, bells, woodblock, tambourine
DISC 1 (Multitrack Master Version)
1. Bnad Warming Up - Introduction by BILL GRAHAM
2. DIRECTIONS
3. THE MASK
4. IT'S ABOUT THAT TIME
5. I FALL IN LOVE TOO EASILY
6. SANCTUARY
7. BITCHES BREW
8. WILLIE NELSON
6. THE THEME - Closing Sound Effect
DISC 2 (Alternate Version)
1. Bnad Warming Up - Introduction by BILL GRAHAM
2. DIRECTIONS
3. THE MASK
4. IT'S ABOUT THAT TIME
5. I FALL IN LOVE TOO EASILY
6. SANCTUARY
7. BITCHES BREW
8. WILLIE NELSON
6. THE THEME - Closing Sound Effect
マイルス・ファン垂涎狂喜乱舞即買い必至。何やらよくわからずポカンとする一般音楽ファンまでもとりあえず必携すべき最強のコレクション・アイテム登場です!その名も『土星神クロノス』コンプリート・サタデイ・マイルス決定盤!何やらよくわからない一般音楽ファンは第一章からお読みください。おおかた『コンプリート・サタデイ・マイルス』についてご存じの方は第二章をお読みください。
* 第一章 * 『コンプリート・サタデイ・マイルス』
1970年電気で武装したジャズの帝王マイルス・デイヴィスは満を持して“ロックの殿堂”フィルモア・イーストに降り立ちました。チック・コリアのフェンダー・ローズ、キース・ジャレットの電子オルガンを両脇に携え、デイヴ・ホランドのエレクトリック・ベースと、ジャック・デジョネットの手数の多いロック・ドラミングが後ろから睨みを効かせ、アイアートがパーカッションで小技を繰り出し、ロック・ミュージックに耳の肥えたフィルモアのファンを魅了したのです。幾度となく行われたコンサートの中から現在でも名盤として人気を博している『マイルス・アット・フィルモア・イースト』が生まれたわけですが、このアルバムは1970年の6月17日から20日にかけて(水曜日から土曜日にかけて)行われた4日間の演奏を、テオ・マセロがそれぞれ日にちごとに編集し曜日に因んでそれぞれ『Wednesday Miles』『Thursday Miles』『Friday Miles』『Saturday Miles』と銘打ち作り上げられたもの。つまりそれぞれの曜日ごとで演奏を切り貼り編集し一曲として練り上げられたトラックがそれです。今回登場のアイテムはこの中の四日目にあたる土曜日の演奏『Saturday Miles』を、テオ・マセロによるメスが入る前のライヴ音源、つまり当日行われたセットリスト通り全ての演奏を収録しているというわけです。「ほお、それはすごい!」と思うかもしれませんが、ここまでは「それほどすごくありません」。何故ならこういった趣旨のタイトルはコレクターズ・アイテムとして過去にも出回り、更にそれに終止符を打つべくオフィシャルで『ブートレグ・シリーズ』まで登場したからです。「え?じゃあ“そんなにすごくない”どころか無用の長物なのでは、、」となっていただき、ここまでで今回登場のアイテムを紹介する下地ができたわけです。
* 第二章 * 『土星神クロノス』
今回登場の決定盤『クロノス』は、独自に入手した正真正銘のマルチトラック・テープを使用したマイルスの名門“SO WHAT”レーベルのマスター(これがコレクターズ界では最高点)が土台となっています。そこから更に音圧調整とチャプター位置の修正が行われています。従ってコレクターズ・アイテムとして本タイトルが最終決定盤となるのです。では「オフィシャルの『ブートレグ・シリーズ』と戦って勝ち目があるのか?」となるわけですが、正直、勝ちます。『ブートレグ・シリーズ』の音質は、オフィシャルにありがちですがソフィスティケイトされすぎているきらいがあり、音像の広がりはややこぢんまり、音圧も奇麗すぎてバンドの迫力がイマイチ伝わってこないのです。更にステレオ音源として致命的なことにチック・コリアとキース・ジャレットの配置が逆です(『ブートレグ・シリーズ』を購入した一ファンとしてガッカリしました)。『クロノス』の音像はやや強調的にチックとキースを左右に広がり音圧も上がって迫力満点。当然両鍵盤奏者の配置も正しくなっています。更に『ブートレグ・シリーズ』には収録されていない演奏前のバンドによるウォーミング・アップや、終演後の会場SEまでも収録されており、このことからも独自入手のマスターである事が伺えます。また更にディスク2には、サウンド・エフェクト等行っていない生々しいオルタネイト・ヴァージョンを収録。こちらは鑑賞用と言うよりメンバーがどんな演奏をしていたのかが丸裸になる史料的価値が計り知れないお宝ディスクです。これが帯付きの見開き紙ジャケット仕様に収められ、もはや文句の付けようが無い最強コレクションとなっています。
以下余談ですが、「『クロノス』て何ぞや?ロープレか何かかね」と言う人のために。昔の人々は天に輝く太陽、月、そして惑星になぞらえる形で曜日名を決めました。日本では土星に因んで土曜日。古代ギリシャで土星に宛がわれたギリシャ神話の神がクロノスです。
さらなる予断を追加すると、土星は英語のサターンのイメージが強いかと思いますが、これは発見したガリレオ・ガリレイがローマ神話のサトゥルヌスから名をつけたことに由来しています。当時あまりクオリティの高くなかった天体望遠鏡を覗き、角度によって土星の輪が見え隠れする様を“衛星が消えた”と解釈したガリレオが、自身の子供を飲み込んだとされるサトゥルヌスを重ねたわけですね。後に衛星タイタンを発見したことで知られるクリスティアーン・ホイヘンスによって、消えたのは衛星ではなく輪であると見出されたのでした。大いに脱線しました。