B0520 龍妃の紅涙(りゅうひのこうるい)美しい大粒血赤珊瑚26.1×19.7mm 最高級18金無垢ペンダントトップ

B0520 龍妃の紅涙(りゅうひのこうるい)美しい大粒血赤珊瑚26.1×19.7mm 最高級18金無垢ペンダントトップ 收藏

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以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです~~

龍妃の紅涙(りゅうひのこうるい)

序章:令和の空虚

東京の空は、今日も無機質な灰色に塗り込められていた。高層ビルの窓からその景色を眺める手嶋あかりの心も、同じ色をしていた。ジュエリーデザイナーとして独立し、自身のブランドを立ち上げてから三年。仕事は順調で、雑誌に取り上げられることも増えた。だが、彼女の胸の奥には、いつも埋めようのない空虚感が漂っていた。デザインはできる。技術もある。しかし、何かが決定的に欠けている。魂が、そこにはなかった。
「また、おばあ様の夢…」
あかりは、昨夜見た夢の残滓を追いかけていた。古い木の匂い、香の香り、そして耳元で囁かれる、知らないはずの優しい声。この数ヶ月、繰り返し見る夢だった。夢の中の自分は、美しい刺繍が施された、重たい絹の衣を纏っている。その夢から覚めるたび、理由のわからない深い哀しみに胸が締め付けられるのだった。
そんなある日、母から一つの古い桐の箱が送られてきた。先日亡くなった祖母の遺品だという。蓋を開けると、樟脳の懐かしい香りと共に、色褪せた写真や手紙が姿を現した。その中で、ひときわ異彩を放つものがあった。黒いベルベットの小袋。そっと手に取ると、ずしりとした重みを感じる。
袋の口を開け、中身を手のひらに滑らせた瞬間、あかりは息を呑んだ。
現れたのは、燃えるような深紅の珊瑚。磨き上げられたその表面は、まるで命の血液そのものを封じ込めたかのようだ。大きさは親指の第一関節ほどもあり、滑らかな曲線を描いている。それを支えるのは、精巧な作りの18金のバチカン。まるで黄金の羽根が一枚、珊瑚を優しく抱きしめているかのようだった。
そのペンダントトップに触れた、まさにその時。
脳裏に、閃光のようにはっきりとした映像が流れ込んできた。暗い楼閣、燃え盛る松明の光、そして、自分のものではない、絶望的な叫び声。
『―――お待ちください!』
その声は、夢の中で聞いた優しい声と同じだった。あかりはペンダントを握りしめたまま、その場に崩れ落ちた。指先から伝わる微かな温もり。それはただの石ではない。何かを記憶し、何かを訴えかけている。この空虚感を埋める鍵が、この紅い石にある。あかりは、確信に近い予感を覚えていた。
この不思議な珊瑚の正体を知りたい。その一心で、あかりは調査を始めた。インターネットで検索し、古美術商を訪ね歩いた。しかし、誰もが口を揃えて「これほど見事な血赤珊瑚は見たことがない」と舌を巻くばかりで、その来歴は一切不明だった。
途方に暮れていたあかりの耳に、ある一人の歴史学者の名前が入ってきた。東都大学の若き准教授、相沢海斗。古代東アジアの装飾品研究の第一人者で、特に唐代の文物に精通しているという。藁にもすがる思いで、あかりは大学の研究室の扉を叩いた。
「これは…」
相沢海斗は、あかりが差し出した珊瑚のペンダントを見るなり、目を見張った。彼はルーペを手に取ると、食い入るようにその細部を観察し始めた。海斗は、歴史とは物証と文献に基づく科学だと信じている、実直な研究者だ。最初は、どこかの好事家が作らせた精巧なレプリカだろうと高を括っていた。しかし、その考えはすぐに覆されることになる。
「このバチカンのデザイン…羽根の形をしていますが、極めて様式化されている。そして、この付け根の部分…」
海斗が指し示したのは、肉眼ではほとんど見えないほどの、微細な刻印だった。それは、一本の鳳凰の羽根を意匠化したような、流麗な文様。
「『鳳羽(ほうう)』の印…まさか…」
海斗の声が震えていた。鳳羽の印は、唐代に存在したとされる伝説の宮廷職人のものだ。彼の名は歴史の表舞台には一切残されていない。しかし、彼が手がけた宝物は、時の皇帝や后妃にのみ献上され、そのあまりの美しさゆえに、後世の文献に「鬼神の技」と記されていた。現存するものは一つもない、というのが定説だった。
「この珊瑚、本物かもしれません。千三百年の時を超えて、今ここに…」
海斗は興奮を隠しきれない様子で言った。あかりの心臓が、大きく鼓動する。やはり、ただの石ではなかったのだ。
「先生、この珊瑚について、もっと詳しく知りたいんです。私、これに触れると、不思議なものが見えるんです…」
あかりの言葉に、海斗は一瞬、眉をひそめた。科学者として、非科学的な現象は受け入れがたい。しかし、目の前のあかりの真剣な瞳と、このあり得ないほどの秘宝を前にして、彼は無下にすることができなかった。
「…わかりました。この鳳羽の印を手がかりに、文献を洗い直してみましょう。何か、わかるかもしれません」
その日を境に、二人の奇妙な共同研究が始まった。一人は、古代の遺物に魂の繋がりを感じるデザイナー。もう一人は、歴史の物証を追い求めるリアリストの学者。二つの異なる世界が、一つの紅い珊瑚によって、千年の時を超えて交錯しようとしていた。

第一章:唐代の残響

時は遡り、千三百年余り前の中国、唐代。世界史上最も華やかと謳われた都、長安。その壮麗な大明宮の奥深く、皇帝の寵愛を一身に受ける妃たちの住まう後宮があった。
後宮に仕える女官の一人、沈美瑛(シェン・メイイン)は、その抜きん出た美貌と、琴や詩文に秀でた才気で知られていた。しかし、彼女の心は常に晴れなかった。彼女の運命は、すでに定められていたからだ。相手は、朝廷で絶大な権力を誇る武将、魏国公(ぎこくこう)・魏延(ウェイ・イェン)。四十歳を過ぎた猛々しい男で、美瑛の美しさを聞きつけ、半ば強引に婚約を取り付けたのだ。それは美瑛の意思など介在しない、一族の繁栄のための政略結婚だった。
美瑛の唯一の心の慰めは、宮廷に仕える一人の若き職人との、密やかな交流だった。
彼の名は、林峯(リン・フォン)。貧しい家の生まれながら、その類稀なる手先の器用さと美的感覚を認められ、宮廷の宝飾品を制作する工房、『尚巧局(しょうこうきょく)』で働く青年だった。彼の作る簪や耳飾りは、まるで命を吹き込まれたかのように生き生きとしており、後宮の女性たちの間で評判となっていた。
二人の出会いは、偶然だった。美瑛が庭園で琴を奏でていると、その音色に惹かれて足を止めたのが林峯だった。彼の澄んだ瞳と、実直な人柄に、美瑛はすぐに惹かれた。林峯もまた、美瑛の憂いを帯びた美しさと、その琴の音に込められた深い感情に心を奪われた。
身分違いの恋。許されるはずもない。だが、二人は人目を忍んで会っては、詩を交わし、互いの夢を語り合った。林峯は、いつか皇帝に認められるほどの最高の職人になり、美瑛をこの籠の中から救い出すと誓った。美瑛は、その言葉だけを支えに、迫りくる魏将軍との婚礼の日を耐えていた。
そんなある日、魏将軍が尚巧局に、一つの巨大な珊瑚を持ち込んだ。南海の果て、龍が棲むという伝説の海で採れたという、世にも稀な「血赤珊瑚」。彼は、これを最高のペンダントに仕立て、婚儀の際に美瑛に贈るのだと命じた。
「これぞ龍の涙。この世で最も美しい女、美瑛にこそ相応しい」
魏将軍は、工房の職人たちを前に、そう豪語した。制作を任されたのは、若手の中で最も腕の立つ林峯だった。
林峯は、絶望の淵に立たされた。愛する女性のために、他の男からの贈り物を、己の手で作り上げなければならない。しかもそれは、彼女が永遠に自分のものではなくなることの証なのだ。
彼は何日も工房に篭り、血赤珊瑚と向き合った。その燃えるような赤色は、彼の心を苛む嫉妬の炎のようであり、美瑛への断ち切れぬ想いのようでもあった。
彼は決意した。これは、魏将軍からの贈り物ではない。自分から美瑛への、最後の、そして永遠の愛の証なのだ、と。
彼は持てる技術のすべてを注ぎ込んだ。珊瑚の最も美しい曲線を生かすように、丁寧に、時間をかけて磨き上げた。そして、バチカンには、彼と美瑛だけの秘密の意匠を施すことにした。鳳凰の羽根。それは、いつか美瑛が鳥籠から解き放たれ、自由に羽ばたいてほしいという、彼の切なる願いの象徴だった。そして、誰にも気づかれぬよう、その羽根の付け根に、彼の銘である『鳳羽』の印を刻み込んだ。
ペンダントが完成した夜、林峯は最後になるかもしれない覚悟で、美瑛を呼び出した。月明かりの下、彼は完成したばかりのペンダントを彼女の首にかけてやった。
ひんやりとした珊瑚が肌に触れた瞬間、美瑛は息を呑んだ。それは、ただ美しいだけの装飾品ではなかった。林峯の苦悩、情熱、そして自分への深い愛が、その紅い雫の中に凝縮されているのを感じた。
「美瑛…これがお前に贈る、私の心のすべてだ」
林峯は、美瑛の手を強く握りしめた。
「逃げよう。二人で、この都のずっと南へ。そこなら、将軍の手も届かない」
美瑛の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。その涙は、林峯が作り上げた紅い珊瑚の上で、きらりと光を弾いた。

第二章:交差する記憶

令和の東京。あかりと海斗の研究は、遅々として進まなかった。『鳳羽』の印に関する記述は、あまりにも少なく、ほとんどが伝聞や伝説の域を出ないものだったからだ。
「やはり、幻の職人なのでしょうか…」
大学の図書館で、山積みの古書を前にあかりがため息をつくと、海斗は首を横に振った。
「いいえ。これほどの物を作る人間が、何の痕跡も残さないはずがない。歴史から意図的に消されたか、あるいは、我々が見当違いの場所を探しているか…」
海斗は、諦めていなかった。彼にとって、この珊瑚は単なる研究対象ではなくなっていた。あかりが時折見せる、遠い過去を懐かしむような、哀しげな表情を見るたびに、彼はこの謎を解き明かさずにはいられないという強い衝動に駆られるのだった。それは、歴史家としての知的好奇心だけではない、あかり自身に向けられた、特別な感情の芽生えだった。
一方、あかりはペンダントに触れるたび、より鮮明なビジョンを見るようになっていた。もはや断片的な映像ではない。それは、一人の女性の、五感を通した「体験」だった。
絹の衣が肌を擦る感触。馥郁たる香の匂い。琴の弦が指を弾く感触。そして、愛しい男性に見つめられる、胸のときめき…。彼女は、自分が「美瑛」という名の女性の人生を追体験しているのだと、はっきりと自覚していた。そして、その恋人が、このペNDAYントを作った職人「林峯」であることも。
ある夜、あかりはペンダントを握りしめたまま、眠りについた。夢の中で、彼女は月明かりの庭園にいた。目の前には、林峯がいる。彼は、完成したばかりの紅い珊瑚のペンダントを、彼女(美瑛)の首にかけてくれる。
『逃げよう。二人で…』
彼の言葉が、耳元で響く。その瞬間、あかりの目から涙が溢れ出た。それは、夢の中の美瑛の涙であり、同時に、令和を生きるあかり自身の涙でもあった。千三百年もの間、叶えられることのなかった約束。その哀しみが、時を超えて彼女の心を震わせたのだ。
「…将軍が、来る…!」
夢の中で、あかりは叫んでいた。遠くから響く、鎧の擦れる音と、複数の足音。密会が、見つかったのだ。
目を覚ましたあかりは、全身に冷や汗をかいていた。心臓が激しく波打っている。あれは、ただの夢ではない。過去に、実際に起きたことだ。
彼女は、震える手で海斗に電話をかけた。
「先生…わかりました。彼らは、逃げようとしていたんです。でも、見つかってしまった…」
電話口で、海斗は黙ってあかりの話を聞いていた。オカルトだ、と一蹴するのは簡単だった。しかし、彼の研究もまた、一つの可能性に行き着こうとしていた。
海斗は、正史ではなく、唐代の詩人たちが残した逸話集の中に、ある記述を発見していた。それは、時の権力者・魏国公にまつわる、不吉な噂話だった。
『魏公、新たに美姫を迎えんとす。されど姫には心に秘めたる職人あり。婚礼の前夜、二人、密かに都を脱せんと図るも、公の知るところとなる。職人は公の刃に斃れ、姫は高楼より身を投ず。その手には、龍の涙と謳われし紅き珠、固く握られていたり…』
詩の一節は、あかりが見たビジョンと、恐ろしいほどに一致していた。
「あかりさん、落ち着いて聞いてください。あなたの見ているものは、もしかしたら…本当に起きたことなのかもしれない」
海斗の声は、いつになく真剣だった。彼は、自身の仮説をあかりに伝えた。この珊瑚のペンダントは、単なる美しい装飾品ではない。持ち主の強い想い…特に、悲劇的な死を遂げた美瑛の無念の魂が、宿っているのではないか、と。そして、あかりはその魂と、深く共鳴しているのではないか、と。
「そんな…」あかりは絶句した。自分が、千年以上も前の悲恋のヒロインの生まれ変わりだなんて、にわかには信じがたい。しかし、胸の奥にある、あの言いようのない空虚感と、夢の中で感じる深い哀しみの理由が、それで説明できるような気もした。
「魏将軍は、その後どうなったんですか?」あかりは尋ねた。
「それが、奇妙なんです」と海斗は言った。「その事件の直後、魏国公は突如として失脚し、すべての官位を剥奪されています。理由は、朝廷の機密漏洩とされていますが、あまりに急な展開で、真相は謎に包まれている。そして、彼は一族郎党を連れて、海を渡り、日本へ亡命したという説があるんです」
日本へ…?
あかりの脳裏に、一つの可能性が閃いた。もし、その話が本当なら、魏将軍はあのペンダントを日本に持ち込んだのではないか。彼にとって、それは自らの嫉妬と独占欲が引き起こした悲劇の象徴。手放すこともできず、されど身につけることもできない、呪われた戦利品として…。
「先生、京都に行きましょう」あかりは、衝動的に言った。
「京都?なぜです?」
「おばあちゃんは、京都の出身なんです。そして、あの桐の箱は、おばあちゃんの実家の、古い蔵から出てきたものだって、母から聞きました」
点と点が、繋がり始めていた。祖母の家系は、もしかしたら、海を渡ってきた魏将軍の末裔なのではないか。そして、このペンダントは、千三百年もの間、その蔵の片隅で、静かに解放の時を待っていたのではないか。
二人は、一条の光を求めて、古都・京都へと向かうことを決めた。それは、悲劇の恋人たちの魂を鎮めるための、そして、令和の時代を生きる二人の未来を探すための、旅立ちだった。

第三章:古都の啓示

京都の空気は、東京とは明らかに違っていた。長い歴史が染み込んだ、深く、静かな時間が流れている。あかりの祖母の実家は、嵐山の近くにある、古い禅寺だった。今は無住となって久しく、遠縁の親戚が管理しているだけだという。
苔むした石段を上り、軋む山門をくぐると、静寂が二人を迎えた。あかりは、この場所に来るのは初めてのはずなのに、不思議な懐かしさを感じていた。本堂の裏手にある、古びた蔵。母が言っていたのは、きっとここだ。
錠は錆びつき、固く閉ざされていた。海斗が力を込めてようやく開いた扉の向こうからは、黴と埃の匂いが立ち込めてきた。薄暗い蔵の中には、用途のわからない古い道具や、巻物の詰まった長持が、所狭しと並べられている。
「すごい…まるでタイムカプセルだ」海斗は、学者としての好奇心に目を輝かせた。
あかりは、ペンダントを強く握りしめた。ここに来てから、胸の鼓動がずっと速い。まるで、ペンダントが何かを訴えかけているようだ。彼女は、蔵の中を漂う気配に導かれるように、奥へと進んでいった。
一番奥の壁際に、ひときわ古びた、黒漆の唐櫃が置かれていた。表面には、細かな螺鈿細工で、龍の文様が描かれている。あかりは、吸い寄せられるようにその櫃に近づき、そっと蓋に手をかけた。
蓋は、意外なほど軽く開いた。
中には、絹の布に大切に包まれた、小さな木箱が一つだけ、ぽつんと納められていた。その木箱を開けた瞬間、あかりは息を呑んだ。
そこにあったのは、一本の、本物の鳳凰の羽根のように美しく輝く、鳥の羽根。そして、その横には、一枚の古びた紙が添えられていた。達筆な文字で、漢詩が綴られている。
海斗が、懐中電灯の光を頼りに、その詩を読み解き始めた。
「…これは、恋文だ。いや、遺書と言うべきか…」
詩は、美瑛が林峯に宛てて書いたものだった。婚礼の前夜、彼との駆け落ちを決意した彼女が、万が一のことを考えて書き残したものらしかった。
『君が為に捧ぐ紅涙(こうるい)は 我が心の証(あかし)
鳳の羽ばたき 永久(とわ)に君と共に
たとえ この身が塵芥(ちりあくた)に帰そうとも
千年の時を超え 必ずや君の許へ…』
詩を読み終えた海斗が顔を上げると、あかりの瞳から大粒の涙がとめどなく溢れ落ちていた。それは、もはやあかり自身の涙ではなかった。千三百年の孤独と悲しみを耐え抜いた、美瑛の魂の涙だった。
「…思い出した。全部…」
あかりの口から、か細い声が漏れた。
彼女の脳裏に、最後の光景が鮮やかに蘇っていた。
婚礼の日の前夜、林峯との密会を魏将軍に見つかってしまったこと。将軍の兵士たちに取り囲まれる中、林峯が自分を庇い、将軍の剣に胸を貫かれたこと。血に染まる彼の最期の顔。そして、絶望の中で、林峯から贈られた紅い珊瑚のペンダントを握りしめ、楼閣の最も高い場所から、身を投げたこと。
『林峯…!』
落下していく中で、彼女が最後に叫んだ名前。
「そうだったのね…私、ずっと待っていたんだわ。彼と、もう一度会える日を…」
あかりは、崩れ落ちるようにその場に泣き崩れた。海斗は、何も言わず、ただそっとその肩を抱きしめた。科学では説明できない、魂の記憶というものを、彼は今、目の当たりにしていた。そして、あかりの深い悲しみが、自分のことのように胸に突き刺さった。
その時だった。
あかりが握りしめていた珊瑚のペンダントが、ふいに、強い光を放ち始めた。それは、まるで燃え上がる炎のような、力強い深紅の光だった。蔵の薄闇が、その光に赤く染め上げられる。
光の中心で、あかりは見た。微笑む林峯の姿を。彼は、優しく頷くと、光の粒子となって、静かに消えていった。それと同時に、ペンダントの光も、すうっと収まっていった。
光が消えた後、あかりの心を満たしていた、あの長年の空虚感と、理由のわからない哀しみが、嘘のように消え去っていることに気づいた。まるで、心の重荷が、すっかり取り払われたようだった。
美瑛の魂は、あかりの涙によって浄化され、そして、林峯の魂との再会を果たしたのだ。千三百年にも及ぶ悲恋が、今、ようやく終わりを告げた瞬間だった。
あかりは、涙に濡れた顔を上げた。そして、自分を支えてくれている海斗の、優しい眼差しに気づいた。
「…ありがとう、先生。付き合ってくれて」
「海斗でいいよ」彼は、少し照れくさそうに言った。「それに、僕の方こそ、礼を言いたい。歴史の真実に立ち会わせてくれて、ありがとう」
二人の間に、穏やかで、温かい沈黙が流れた。
蔵から出ると、西の空が美しい茜色に染まっていた。それは、あかりが手にしている血赤珊瑚の色にも似ていた。
「このペンダント、どうしようか…」あかりが呟いた。
「それはもう、君のものだよ」海斗は言った。「呪いは解けたんだ。これからは、幸せの象徴になるはずだ」
あかりは、ペンダントを胸に当てた。もう、悲しみは感じない。代わりに、温かなエネルギーが、じんわりと心に広がっていくのを感じた。それは、美瑛と林峯が遺してくれた、純粋な愛の力なのかもしれない。

終章:令和のハッピーエンド

東京に戻ったあかりは、人が変わったようにエネルギッシュだった。彼女のデザインからは、迷いや空虚さが消え、代わりに、生命力と、物語性に満ちた輝きが溢れ出ていた。
彼女は、新作コレクションのテーマを「鳳羽(ほうう)」と名付けた。中心に据えられたのは、もちろん、あの血赤珊瑚のペンダントだった。しかし、それはもはや蔵で見つかったままの姿ではなかった。
あかりは、自身のデザイナーとしてのすべてを懸けて、ペンダントに新たな命を吹き込んだのだ。
彼女は、林峯が作ったオリジナルの黄金の羽根のバチカンを、大切に残しながらも、そこに寄り添うように、もう一本、プラチナで作った新しい羽根をデザインし、付け加えた。それは、しなやかで、力強く、未来へと羽ばたいていくようなフォルムをしていた。
古い金の羽根が「林峯」と「美瑛」の永遠の愛を象徴するならば、新しいプラチナの羽根は、「海斗」と「あかり」の、これから始まる愛を象徴していた。千年の時を超えて、二つの魂が一つに結ばれる。そんなデザインだった。
コレクションの発表会の日。会場には、多くの人々が詰めかけていた。スポットライトを浴びて、ショーケースの中央で輝くペンダント。それはもはや「龍の涙」ではなく、愛の成就と再生を祝福する「鳳凰の紅涙」とでも呼ぶべき、気高い輝きを放っていた。
あかりは、スピーチのためにマイクの前に立った。隣には、少し緊張した面持ちの海斗が立っている。
「今日、ここにご紹介するジュエリーには、ある物語が込められています。それは、千三百年も昔の、遠い国で生きた男女の、悲しい恋の物語です」
あかりは、美瑛と林峯の物語を、静かに語り始めた。そして、その魂の記憶が、巡り巡って、自分たちの元へ届いたことも。
「彼らの愛は、悲劇に終わりました。しかし、その想いは、この紅い珊瑚の中に、確かに生き続けていました。そして、私たちに、大切なことを教えてくれました。本当に強い想いは、時を超え、形を変えて、必ず誰かに受け継がれていくのだと」
あかりは、海斗のほうを向いて、微笑んだ。
「そして、私は、その想いを未来へと繋いでいきたい。過去を慈しみ、今を生きる喜びを、ジュエリーという形にして、表現していきたいと思っています」
会場は、温かい拍手に包まれた。
発表会が終わった後、二人は夜景の見えるテラスに出ていた。
「素敵だったよ、スピーチ」海斗が言った。
「海斗さんがいてくれたからだよ」あかりは、そっと彼の手に自分の手を重ねた。「あの蔵で、私のことを信じて、抱きしめてくれたから。私、前に進むことができた」
あかりは、胸元で輝く、新しく生まれ変わったペンダントに触れた。
「美瑛も、きっと喜んでくれてる。やっと、幸せになれたねって」
海斗は、あかりの手を優しく握り返した。
「あかり。僕も、君と出会えて、本当に良かった。君は、僕に、歴史の行間に埋もれた人々の『心』を見ることを教えてくれた」
彼は、ポケットから小さな箱を取り出した。
「僕には、林峯のような才能はないけれど…」
箱の中には、シンプルなプラチナの指輪が収められていた。その内側には、小さな鳳凰の羽根が、そっと刻まれている。
「僕と、未来を一緒に作ってくれませんか」
あかりの瞳に、再び涙が浮かんだ。しかし、それはもう、悲しみの涙ではなかった。喜びと、愛しさに満ちた、温かい涙だった。
「…はい」
彼女の返事を聞いて、海斗は安堵の息をつき、指輪を彼女の左手の薬指にはめた。サイズは、ぴったりだった。
二人は、どちらからともなく、そっと唇を重ねた。
東京の夜景が、まるで宝石箱のように、きらきらと輝いている。
千三百年前に流された、一滴の紅い涙。それは、嫉妬と悲劇の象徴から、時を超えた愛の証へと生まれ変わり、今、令和の空の下で、二人の未来を明るく照らし始めていた。あかりの胸にあった空虚感は、もうどこにもない。そこには、過去から受け継いだ愛と、未来へと続く希望が、温かく満ちていた。
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