野口弥太郎（1899年10月1日東京市本郷区生～1976年3月23日没）は洋画家で日本芸術院会員、独立美術協会会員。川端画学校で油絵を学び、前田寛治に傾倒。1922年に二科展初入選後、1930年協会会員、1931年渡仏しグラン・ショミエールで学び、1936年にはパリのマルセル・ベルネイム画廊で個展開催。フランス政府に作品買上げの実績を持つ。日本大学芸術学部教授（1952～1970年）を務め、第5回毎日芸術賞（1964年）や芸術選奨文部大臣賞（1972年）を受賞、1975年には勲三等瑞宝章を受章、日本芸術院会員となった。作風はパリ留学で培ったフォーヴィズムの自在な筆致を日本の風景に適用し、日本的フォーヴィズムの完成度の高い作品を示したと評価された。

野口弥太郎「サンタ・マリア・デラ・サルーテ・ヴェネチヤ」油彩 6号 証明シール
鮮烈な色彩と大胆な筆致で描かれた本作「サンタ・マリア・デラ・サルーテ・ヴェネチヤ」は、野口弥太郎が愛したヴェネツィアの風景を描いた一枚です。画面中央には、ヴェネツィアの象徴ともいえるバロック建築の名作「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会」が堂々と描かれています。大運河の水面にはゴンドラが浮かび、街全体が夕陽に包まれる幻想的な情景が広がります。

橙、黄色、紫といった強い色彩がぶつかり合いながらも調和し、ヴェネツィア特有の柔らかな光と水の煌めきを見事に表現。フォーヴィスムの影響を受けた野口ならではの色彩感覚が光る作品です。野口弥太郎（1899-1976）は、フランス留学でフォーヴィスムを学び、日本的な感性と融合させた独自の画風を確立した洋画家。戦前から戦後にかけて数々の名作を残し、日本の洋画界に大きな足跡を残しました。

本作は、異国の風景を題材にしながらも、野口の視点を通してどこか温かみのある親しみやすい世界が広がる珠玉の一枚です。豊かな色彩が奏でる光と影のハーモニーが、観る者をヴェネツィアの夕景へと誘います。