「Live At The Junk」は、タイトル通り、銀座のクラブ Junkで1969年12月26日、27日に行われたライブの記録。当時36歳の渡辺貞夫がリラックスしたムードの中で、溌剌としたプレイを繰り広げています。1曲目「Cheryl」は、貞夫さんが敬愛してやまない天才アルトサックス奏者、Charles Parkerの曲。貞夫さんのカデンツァからスタートし、4ビートで軽快に演奏されます。ピアノではなく、ギターを招き入れたことにより、貞夫カルテット
はその自由度を増したのだと思います。増尾好秋のギター・テクニックは大したものだと思いますが、当時23歳の若者
を抜擢する貞夫さんの慧眼も凄い。ドラムスの渡辺文男の掛け声が演奏を引き締め、バンドは2曲目「If I Said The Sky
Was Fallin'」に突入。ドラムスの渡辺文男の掛け声が演奏を引き締め、バンドは2曲目「If I Said The Sky Was Fallin'」に突入
。この曲は、貞夫さんのオリジナル。当時、Herbie Mannなどが好んで演奏したジャズ・ロック風であり、エレクトリック・
ギターが更にその雰囲気を高めます。貞夫さんは、欧米の有名ミュージシャンを凌ぐほどのプレイを披露。ギター・ソロは
当然のごとくロック寄りで、鈴木良雄のベース・ラインもしかり。そして、重量感あふれるドラム・ソロも登場し、曲を
上げています。3曲目「Georgia On My Mind」は、Hoagy Carmichael作のスタンダード。一転して、しっとりと演奏さ
れます。しかし、テンションの高さは引き継がれており、曲は次第に粘っこいブルース調に。ライブの臨場感を引き出した
、見事な録音技術も、この曲を引き立てています。
この日の演奏はここで幕を閉じたのでしょうか?曲の最後にMiles Davis作の短い「The Theme」が演奏されます。
レコードではB面1曲目、CDでは4曲目の「This Guy's In Love With You」は、お馴染みBurt Bacharach作の大ヒット曲。
Herb Alpertを始めとして、数えきれないほどのミュージシャンに取り上げられています。
曲は、ミディアムテンポでジャジーに演奏されます。耳に馴染んだ曲を、観客はステップを踏みながら、聴き入ったことでしょう。
5曲目「No More Blues」は、ボサノヴァの帝王Antonio Carlos Jobimの曲。原題は「Chega de Saudade」で、初めて
録音されたボサノヴァ曲とも言われています。貞夫さんが好んで取り上げ、現在に至るまで演奏される名曲。
ここでは、割とアップテンポで演奏されており、ギター・ソロもボサノヴァというよりジャズ風。
6曲目「Here's That Rainy Day」は、Jimmy Van Heusen 作のスタンダード。しんみりとスタートしますが、
バックのリズムは、何故か、こちらの方がボサノヴァ風。聴かせる曲です。
ラスト7曲目「Granny's Samba」は、貞夫さんと親交の深いヴィブラフォン奏者Gary McFarlandの曲。
ストレートな曲調ですが、貞夫さんのサックスは表情豊か。観客は、リズミックなギターにも酔いしれたことで
しょう。そして、終盤は貞夫さんらしく、パーカッションによるサンバのリズムが曲を飾り立てます。
最後に、映画「黒いオルフェ」で使われたAntonio Carlos Jobimの「Felicidade」が登場し、アルバムはフェイド
アウトしていきます。自分の嗜好に合った曲を、観客に強いることもなく肩肘はらずに演奏する貞夫さん
の姿が目に浮かぶようなライブ・アルバム。昔、レコードで聴いた以来ですが、今なお新鮮に耳に届く傑作だと思います
| 1 シェリル
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| 2 空が落ちてきたらどうしよう
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| 3 ジョージア・オン・マイ・マインド~ザ・テーマ
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| 4 ジス・ガイズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー
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| 5 ノー・モア・ブルース
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| 6 ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
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| 7 グラニーズ・サンバ~フェリシダージ |