鶴田一郎（1954年熊本県天草市生まれ）は、中学時代に田名網敬一、宇野亜喜良、横尾忠則らに憧れイラストレーターを志し、高校卒業後に多摩美術大学でグラフィックデザインを学びました。スーパーリアリズム全盛期にエアブラシを独学で習得し、1987年にはアートディレクター亀倉雄策に見いだされノエビア広告に起用されました。彼の「鶴田式美人画」はポスター、雑誌、テレビなど多くのメディアで展開され注目を集めました。後に俵屋宗達や酒井抱一ら琳派の影響を取り入れ、アールヌーボーやアールデコの要素を融合した独自のスタイルを確立し、現在は京都で制作を続けています。

鶴田一郎「優しい黒髪」アクリル画 2003年作 証明シール
鶴田一郎《優しい黒髪》（2003年）は、彼の代名詞ともいえる「鶴田式美人画」を体現する代表的な一作です。
画面に大きく描かれる女性像は、透き通るような白い肌と艶やかに流れる黒髪をもち、その黒髪はまさに作品タイトルの象徴となっています。切れ長の翠色の瞳と、柔らかな微笑を浮かべる紅い唇が、静謐でありながらも優しさに満ちた印象を観る者に与えます。背景の淡い紫は黒髪の美しさを際立たせると同時に、画面全体に気品と落ち着きを添えています。琳派の流麗さ、アール・ヌーヴォーやアール・デコの装飾性を取り入れた鶴田独自の様式が端正に表れ、シンプルな構図でありながら深い余韻を残す仕上がりです。

鶴田一郎（1954年熊本県天草市生まれ）は、多摩美術大学でグラフィックデザインを学び、1980年代以降、ノエビア化粧品の広告をきっかけに広く知られるようになりました。琳派や西洋美術の要素を融合させた独自の美人画様式は、「現代の美人画」として高く評価されています。本作は、女性の黒髪を「艶やかさ」と「優しさ」の象徴として描き出し、鶴田美人画の真髄である静謐さと気品を余すところなく伝える名品といえるでしょう。